| 2011年05月22日(日) |
犬飼さんちの犬、風吹く良き日、おじいさんと草原の小学校、赤い靴、グッド・ハーブ、ハウスメイド、沈黙の宿命、水曜日のエミリア |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『犬飼さんちの犬』 2008年『ネコナデ』、2009年5月紹介『幼獣マメシバ』、昨 年2月紹介『ねこタクシー』に続く「おっさん」とペットの 関係を描いたシリーズの最新作。 シリーズの最初は2005年11月紹介『イヌゴエ』だそうだが、 それはちょっと毛色が違っていたから、実質的に年1本のシ リーズと言えそうだ。で、2008年の作品は試写は観たのだが 僕の好みに合わなかったもの。しかしその後はそれなりの作 品になっている感じだ。 その今回の主人公は、単身赴任で離島のスーパーマーケット に勤務している犬飼保・48歳。名前とは裏腹に犬が嫌いで、 その嫌いようは、犬の鳴き声には多少遠くても警戒するし、 小犬のそばにも寄れないほどだった。 そんな主人公の勤務する島には特別な草があり、その草から 作った「島石鹸」は全国の店舗で売られる人気商品になって いる。ところが品薄となり、その製造も任されていた創業者 の息子の店長が草を水増、結果、粗悪品が発生して本社に苦 情が殺到し始める。 一方、家族想いの主人公は、毎日の食事もネット中継で顔を 合わせるようにするなど家族奉仕にも努めていたが、石鹸の 苦情処理のため店長と共に本社に呼び出された主人公が久し ぶりに帰宅すると、そこには1頭の犬が家族と共に暮らして いた。 しかも、父親のいない間に家族の生活状況はいろいろに変化 して、塾や習い事で家人は留守がち、いきおい犬の世話は主 人公に任せられることになってしまうのだが… 自分が犬の飼い主であると、犬嫌いの人の気持ちなどはなか なか判り難いが、犬と散歩に行った公園で集まっている犬の 方に行けない人の姿のなどを見ると、飼い主としてそういう 人にも配慮すべきだと自戒することもある。 このシリーズの特徴は、そんな他人への気配りのようにも感 じる。実際に本作の中でも、ペットのしつけや横暴な飼い主 など、綺麗事だけでない面も描かれているし、何より作品の コンセプトは、ペットに演技させないことと可愛く撮らない ことだそうだ。 出演は、主人公に小日向文世。他に2008年3月紹介『パーク ・アンド・ラブホテル』などのちはる、昨年5月紹介『君が 踊る、夏』に出演の木南晴夏。さらに池田鉄洋、徳永えり、 でんでん、佐藤二朗、清水章吾らが脇を固めている。 そしてペットとして登場する犬種はサモエド。日本では飼育 例が少ないとのことだが、映画では、仔犬2匹、成犬2匹、 それにプロローグで登場する赤ん坊の5頭で演じられている そうだ。 脚本はシリーズ全作の原案と製作も手掛ける永森裕二。監督 は『マメシバ』以降のシリーズを支える亀井亨。なお脚本家 は、『ねこタクシー』を書き上げたときに「もう書くものは ない」と思ったそうだが…、シリーズは今後も続けて欲しい ものだ。
『風吹く良き日』“바람 불어 좋은 날” 韓国の国民的俳優とも呼ばれる2008年3月紹介『光州5・1 8』などのアン・ソンギ主演による1980年代韓国映画ニュー ウェーブの嚆矢なったと言われる作品。 本国では、2007年10月紹介『ユゴ』にも描かれた1979年10月 に起きた大統領暗殺事件の翌年に公開された作品だが、監督 のイ・ジャンホはその大統領の政権時代に起きた風紀取締り 事件に連座して監督業を禁じられ、本作がその復帰第1作で もあったそうだ。 という相当に政治色もありそうな作品だが、内容的には、正 にその1980年の時代背景で、高度成長期の歪みから生じたや るせない若者たちの群像が描かれる。そこには地方から首都 ソウルに出てきたものの、就ける仕事は半端なものばかり、 その一方で金に踊っている男女もいて、その社会の歪みが容 赦なく若者たちにのしかかる。 高度成長の歪みというのは、多分今の日本も同じようなもの だと思われるが、今の日本の若者たちに、この映画の主人公 たちのような悲壮感がないのは何故なのだろう。それは目先 のファッションや演出されたブームを、さも若者文化のよう に見せ掛けて本来の若者の活力を消耗させている日本社会の あり方のせいなのかも知れない。 しかし、僕自身がこの作品を観ている間は、描かれる青春群 像に違和感を感じていたのだから、それは僕自身も同類と言 われて仕方がない。だからこの映画を観終えて、もう一度昔 の自分に戻りたいとも思ったものだ。 でも観ている間は違和感が拭えなかったことは事実で、その 感覚がやはりこの作品は歴史的価値で観るべきものなのかと 感じてしまう。ただその後の韓流ブームの前にこのような作 品の時代があったことは、知っておくべきものなのだろう。 特にアン・ソンギのその後の活躍を知る人には、彼の若き日 の姿が観られることでも貴重な作品と言えるものだ。 共演は、監督の実弟のイ・ヨンホ、本作で新人賞なども受賞 したキム・ソンチャン。さらに現在もテレビドラマで活躍し ているユ・ジイン、2005年2月紹介『オオカミの誘惑』など のキム・ボヨンらが脇を固めている。 兵役など日本とは異なる部分もあるが、全体的には今の日本 の若者にも通じるところの多い作品。しかし日本の若者に共 通した問題意識を持って貰えるか、共感して貰えるかが重要 な作品と言えそうだ。
『おじいさんと草原の小学校』“The First Grader” ギネスで史上最高齢の小学生と認定されているケニア人男性 の姿を描いた作品。 2003年、ケニア政府は小学校教育の完全無料化を宣言し、国 民全てに教育の機会が与えられると発表した。ただしここで の「国民全て」とは政治家の使う言葉の綾。しかしその言葉 を真に受けた1人の老人が小学校で勉強をしたいと訪れる。 その老人は、元はケニヤ独立の戦士だったが、戦いに明け暮 れた日々の中で教育を受ける機会を失い、読み書きも全く出 来なかった。そんな老人の希望は、政府から届いた1通の手 紙を自分で読みたいということだった。 しかし、生徒200人に机は50台というくらいに生徒が溢れる 小学校側も、そう簡単に老人を受け入れる訳には行かない。 そのため大人は対象外だと拒み続ける学校に対して、老人は 毎日校門の前に立ち続けた。 そんな日が何日も続き、遂にその熱意に折れた学校側は老人 の入学を認めるのだが、それは周囲にいろいろな波紋を広げ て行くことになる…。という老人が学校に通い始めるまでの 顛末とその後の出来事、さらに老人が辿ってきた苦難の生涯 などが描かれて行く。 ケニアも多部族からなる国家で、政府は「国民は全てケニア 人」として平等を宣言しているが、独立闘争で宗主国側に付 いた部族や反旗を翻した部族などが共存する政府はなかなか 確執も多いようだ。 そのような恐らくは今も抱えているのであろうケニアの国内 事情や、独立時のイギリスとの関係などが、旧宗主国であっ たイギリス人のスタッフによって描かれている。それはかな り勇気の要ることのようにも思えるが、それに果敢に挑んだ 作品でもある。 監督は、2008年6月紹介『ブーリン家の姉妹』のジャスティ ン・チャドウィック。前作で長編デビューを飾ったばかりの 監督の第2作だが、撮影環境の整った南アフリカではなくケ ニア現地での撮影に拘わるなど、なかなか骨のある監督のよ うだ。 脚本は、2006年2月紹介の『ナルニア国物語・第1章』や、 2008年8月紹介『最後の初恋』などのアン・ピーコック。そ の他の作品ではジョン・ブアマン監督で南アフリカを舞台に した作品があるなど、アフリカの事情もよく判った脚本家の ようだ。 主演は、ケニアのテレビ番組で長年人気キャスターを務め、 1984年の『シーナ』にも出演していたというオリヴァ・リト ンド。他に、2006年7月紹介『パイレーツ・オブ・カリビア ン/デッマンズ・チェスト』などのナオミ・ハリス、2005年 11月紹介『ホテル・ルワンダ』などのトニー・ギゴロギらが 共演している。
『赤い靴』“The Red Shoes” ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話をモティーフに してバレエ界の内側を描いた1948年の名作がディジタル・リ マスターにより復活。一昨年のカンヌ映画祭で話題を呼んだ 作品が日本でも公開されることになった。 登場するのは国際的に活動するバレエ団。多少ワンマンな団 長に率いられたそのバレエ団は果敢に新作に挑み高い評価を 得ていた。そして今回も新作『火の心』が大成功を納める。 しかし次の公演でのプリマドンナの引退も発表される。 一方、団長はその公演に絡んで2人の新人と契約していた。 1人は『火の心』の音楽は自分の作品の盗作と主張する作曲 家と、もう1人は成功を祝うパーティを開催した社交界の令 嬢でもあるダンサー。その2人の才能は、厳しい団長も認め るものだったのだ。 そして団長は、作曲家に童話『赤い靴』を基にしたバレエの 作曲を指示し、令嬢をそのプリマドンナに抜擢する。その物 語は、舞踏会に憧れる少女が魔法の赤い靴を履き踊りは上達 するが、やがて靴に支配され踊りを止められなくなる…とい うものだった。 映画は、そのバレエ化された『赤い靴』の舞台シーンを中心 に置いて、童話の物語を巧みに反映したストーリーが展開さ れて行く。それはバレエに魅せられてしまった人々が織りな す哀しみに満ちた物語だ。 作品はずっと以前に観た記憶はあったが、子供ではなかなか 理解し難い物語だったかも知れない。でも今観ると典型的な メロドラマといった感じのストーリー展開で、それ自体は今 となっては特別とも言えないものだ。 しかし間に挿入されるバレエシーンでは大胆に合成が行われ るなど、その映像表現には注目すべき点のある作品だった。 まあその合成も今の水準ではないが、この時代にこのような 表現を試みたこと自体が評価されるべきもの。正に歴史的な 作品と言える。 監督は、1946年『天国への階段』でも知られるマイイクル・ パウエルとエメリック・プレスバーガー。因にパウエルは後 に『血を吸うカメラ』(1960年)と言った作品も監督し、プ レスバーガーは1964年映画化された『日曜日には鼠を殺せ』 の原作者としても知られる。 ただし本作で注目すべきは撮影監督のジャック・カーディフ と美術監督を務めた画家のハイン・ヘックロス。『天国への 階段』の撮影も担当し、後には1973年『悪魔の植物人間』と いった作品の監督も手掛けるカーディフが、ヘックロスのス ケッチを基に数々の映像表現を生み出しているものだ。
『グッド・ハーブ』“Las buenas hierbas” アルツハイマー型認知症を題材にしたメキシコの女性監督に よる作品。 主人公はシングルマザーの女性。彼女の母親はアステカ時代 の薬草を研究している民族植物学者だったが、ある日のこと 訪ねてきた娘に家の鍵が無くなったと訴え、窓から変な男が 覗いていたとも言い出す。 しかし鍵はすぐに見つかり、母親の発言も勘違いと思われた が、自らの症状を疑問に感じた母親は医師の診断を受け、認 知症と診断されてしまう。そして母親は「誰かの世話になる のは嫌だと」と娘に宣言するのだが… 映画には、アステカの薬草を記録した1552年に編纂されたと いう古書の写本が登場し、さらにその薬草を描いた挿絵がア ニメーションになるなど素敵なシーンも挿入されている。そ んな細やかな演出も施されている作品だ。 脚本と監督のマリア・ノバロは1951年生まれ、1989年に発表 した第1作がニューヨーク批評家協会賞を受賞、その後も多 数を受賞するが、2000年以降は後進の育成に務めていた。本 作はそんな女性監督が10年ぶりに手掛けた作品となる。 出演は、娘役に本来は舞台女優で本作の演技により主演女優 賞を受賞しているウルスラ・プルネダ、母親役には1984年製 作のメキシコ映画『フリーダ・カーロ』に主演のオフェリア ・メディーナ。 他に、1991年のキューバ映画『愛しのトム・ミックス』など に出演のアナ・オフェリア・ムルギア。また、映画に登場す る呪術師マリア・サビーナの映像は別のドキュメンタリーか ら取られた実物だそうだ。 自分の母親が認知症で苦しんでいたころを考えると、本作の 母親のように、本人が自覚したときが一番辛かったように思 う。会話は普通でも時折「思い出せないんだよ」と訴えてく る。それを聞いているときが切なく辛かったものだ。 本作でも一瞬前のことが思い出せずに苦しむシーンがあった が、そんな切なさが見事に描かれている作品だ。
『ハウスメイド』“하녀” 韓国映画史上で最高の傑作と言われる1960年キム・ギヨン監 督による『下女』を、2007年10月紹介『ユゴ|大統領有故』 などのイム・サンス監督がリメイクした作品。 主人公は、上流階級の邸宅で働き始めたメイド。その邸宅に は長く勤める先輩のメイドもいて、その先輩の厳格な指導の 下、主人公は双子を妊娠中の妻と6歳になる一人娘の世話を 中心に仕事をすることになる。 そして生来が子供好きの主人公は一人娘とはすぐに仲良しに なり、その様子を観て最初は横柄だった妻も彼女を信頼する ようになって行く。それは理想的な職場のように思えた。 そんなある日、一家の供で別荘に出かけた主人公の部屋に、 深夜一家の主人が忍び込んでくる。それは以前から主人の視 線を感じていた主人公には意外なことではなく、彼女は主人 の身体を受け入れてしまう。 そしてその後は何ともなかったように日々が過ぎて行くが、 やがて先輩のメイドが本人より先に主人公の身体の変化に気 づく。さらに巧みな会話でその相手が一家の主人と確信した 先輩メイドは… 1960年のオリジナルは観る機会を得ていないが、物語はこの ような環境でなら起こるかも知れないと思える、ある意味で 自然な展開と言えるもの。その中から見事に人間の本性が炙 り出されてくる。 それは、娘を除く大人の登場人物全員が悪人となる作品では あるが、その一方でその行為は観客にも納得できる。その描 き方の巧みさが傑作と評価される所以なのだろう。 しかも本作の雰囲気は、僕のような人間にとっては正しくホ ラー映画を感じさせるものになっており、この雰囲気がオリ ジナルと同じかどうかは判らないが、これは僕には堪らない 作品だった。 主演は、今年2月紹介『素晴らしい一日』などのチョン・ド ヨン。他に、2004年10月紹介『オーバー・ザ・レインボー』 などのイ・ジョンジェ、人気新人女優のソウ、キム・ギヨン 監督の1971年作『火女』に主演したユン・ジョヨンらが脇を 固めている。
『沈黙の宿命』“True Justice: Deadly Crossing” スティーヴン・セガール主演の『沈黙』シリーズの最新作。 と言っても1992年『沈黙の戦艦』に始まるこの‘シリーズ’ は、1995年『暴走特急』だけが同じ主人公による正式な続編 で、それ以外は日本だけのプロモーション用に仕立てられた ものだ。 しかし本作は、カナダで今年1月放送されたテレビシリーズ の1篇で、本作の劇場公開に続けてDVDリリースされる本 作を含めた6作は正しく『沈黙』シリーズとなっている。 物語は、シアトル警察に創設された特別捜査隊(SIU)の 活躍を描くもので、セガールが演じるのはそのチームのリー ダー。精鋭たちが集まるそのチームは潜入捜査やおとり捜査 を駆使して危険な犯罪組織の壊滅に邁進している。 そして本作に描かれるのは、郊外のスーパーマーケットで起 きた殺人事件が発端。そこは戦時中に日本人の強制収容所で あったキャンプ・ハーモニー地区に程近く、主人公のルーツ にもつながる場所だった。 そんな歴史も絡めた地区でさらに捜査を進めた主人公は、や がて事件の背後に潜む犯罪組織に肉迫して行くが… セガールのアクションは合気道が基本だが、警官に扮した本 作では銃撃戦などもふんだんに登場する。しかもそこから合 気道へと繋がるが、それもあまり無理で無く繋げられていた ように思えた。 ただし本作では、テレビ画面を意識したのかアクションシー ンでもアップが多用されており、そのため技の連携が見え難 いのは多少残念に感じられたところだ。でもまあ、最近のセ ガールのアクションは大体こんなものだから、そのファンに は充分なところだろう。 共演は、アレックス・マラリJr.、J・アンソニー・ペナ、 ウィリアム・スチュアート。さらにミーガン・オリー、ウォ ーレン・クリスティ、2007年12月紹介『ジェシー・ジェーム ズの暗殺』に出ていたというサラ・リンド。 監督は2010年『沈黙の鉄拳』などのキオニ・ワックスマン、 脚本はセガールと2007年『沈黙の奪還』などのジョー・ハル ピン、製作は『沈黙の鉄拳』などのデボラ・カブラー、さら に製作総指揮にはセガールと共に2010年2月紹介『ハート・ ロッカー』などを手掛けたニコラス・シャルティエが参加し ている。 因に本作は、テレビ放送では第1回と第2回を飾る2話連続 のもので、お話は繋がったものになっている。またデータベ ースによると、第3回と第4回も“Street Wars”と題され た2話連続の作品だが、その劇場公開はされないようだ。 さらに今回のDVDリリースは6枚12回分とされているもの だが、データベースによると本シリーズは第1シーズン13回 とその後に1回分が追加されて全14回分あるようだ。
『水曜日のエミリア』 “Love and Other Impossible Pursuits” 今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞したナタリー・ポート マンの製作総指揮・主演による2009年の作品。 主人公のエミリアは水曜日に義理の息子を学校に迎えに行く のが決まり。そこで周囲から略奪婚と囁かれても気にしない 彼女だったが、割り切っているように見える息子の悪気はな いのかも知れない発言は一々気になるものだった。 そんな彼女は、勤務先の法律事務所で先輩の弁護士が好きに なり、一人息子が産まれた後は妻との仲が疎遠になっていた 弁護士もそれを受け入れた。やがて彼女は妊娠、妻の座を勝 ち得たのだが、産まれた赤ん坊は最早この世にいない。 そして家の中には、使われなかったベビーベッドなどの育児 用品が処分できないまま残され、息子はそれらをeBayで売ろ うと発言していたのだが…。さらに前妻との教育方針での対 立も彼女を悩ませていた。 こんな状況の中でも幸せを願う主人公を描く作品は、物語の 始まりから見事に高い緊張感で演出され、その緊張が最後ま で途切れない。それは人生の中でも経験する緊張感をリアル に描き尽くしたものだ。 共演は、2008年6月紹介『P.S.アイラブユー』などのリサ ・クロドー、1996年に松田聖子が主演した『サロゲート・マ ザー』に出演のスコット・コーエン、それに2007年12月紹介 『アイ・アム・レジェンド』に出ていたというチャーリー・ ターハン。 作品は、『スパイダーマン2』の脚本でも知られる作家マイ クル・シェイボンの夫人で、元は官選弁護人だったというア イアレット・ウォルドマンの原作に基づくもの。その原作か ら2000年『偶然の恋人』などのドン・ルースが脚色・監督し た。因に原作者は映画化について、「私の望んでいたすべて が形になっていた」と絶賛しているそうだ。 インディペンデント色の濃い作品だし、このままでは日本公 開は難しかったかも知れないが、ポートマンの受賞のお陰で 可能になったというところかな。今後もこのような作品が何 本かありそうだ。
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