井口健二のOn the Production
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2011年01月30日(日) 市民ポリス69、神々と男たち、ブルーバレンタイン、トゥルー・グリット、悲しみのミルク、アトムの足音が聞こえる+ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『市民ポリス69』
2008年11月紹介『特命係長・只野仁』などの柳沢みきお原作
マンガからの映画化。元つかこうへい劇団のベテラン脇役・
酒井敏也が映画初主演を飾っている作品。
東京の犯罪発生率が現在の数倍になった時代。その対策に苦
慮した東京都は、主に軽犯罪を取り締まる目的で善良な都民
100人を強制的に選び、彼らに一カ月の限定で警察官の権限
を与える「市民ポリス」制度を発足させた。
ただし、貸与されるのは身分証明兼身元を隠し用のナンバー
の付いたマスクと麻酔銃のみ。しかも緊縮財政のおりからか
報酬は微々たるもので、負傷しても治療費も出ない。そして
30日間を無事に満了すると精巧なスカイツリーの模型が貰え
る仕組みだ。
そんな市民ポリスに選ばれた気弱な宅配便の運転手が、最初
はただ30日間を無事に過ごすために犯罪を目撃しても見て見
ぬ振りをしていたが、やがて権力行使の快感を知り、徐々に
重大犯罪に手を染めて行くようになる…というお話。
アイデアは「裁判員制度」の流れなのかな、正にお上の思い
付きが市民に迷惑を与える…そんな典型のような話だ。しか
も一般人が犯罪に触れることで、その心理に多大な影響を与
えて行く、そんな恐ろしさも描かれている。
とは言うものの本作は、主演者の配役からも判るようにコメ
ディタッチの作品で、いろいろなギャグを取り混ぜながら物
語は進んで行く。そしてそこには「市民ポリス」制度に反対
する市民運動家なども登場する。

共演は、プロデューサーも兼ねる桐生コウジ、他に女性アイ
ドルグループ「ももいろクローバー」の早見あかり。そして
清水章吾、津田寛治、原紗央莉。さらに佐藤二郎、錦野旦、
山本浩司、つぶやきシローらが脇を固めている。
監督は、2008年『GSワンダーランド』などの本田隆一。監
督が脚本と編集も兼ねた前作はテレビで鑑賞して感心した作
品の1本だった。そんな感覚から本作にも期待を持って観に
行ったものだ。
でもその期待とはちょっと違ったかな。それは簡単に言えば
テンポがいま一つで、これは恐らくは主演者のテンポに合わ
せてしまったところもあるのだろうが、そこに何か一工夫が
欲しかったところだ。
脚本にテンポ付けるのも監督の仕事だと思うし、前作にはそ
れなりのテンポがあったと思うので、監督にはその辺のとこ
ろを期待したいものだ。


『神々と男たち』“Des hommes et des dieux”
昨年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、東京国際映画祭
WORLD CINEMA部門で上映された作品が一般公開されることに
なり、改めて試写が行われた。
1996年アルジェリアで起きた事件に基づく。以前はフランス
国内の扱いだった時もあるアルジェリアには多くのキリスト
教修道院が存在し、彼らは農業や医療などの普及にも務め、
それぞれが周囲に暮すアラブ人住民の支えになっていた。
そこにはイスラム教徒も多く存在したが、修道僧たちもコー
ランを研究し、互いの存在を認めあっての暮しが長く成立し
ていたものだった。ところがそこにイスラム原理主義が台頭
してくる。
そして武装イスラム集団がテロ活動を開始し、爆破テロなど
でアルジェリア国内の世情が混乱し始めても、修道僧たちは
周囲の住民たちと共に生きることを「御主」の意志として、
フランス政府の帰国命令も無視して生活を続けていた。
そんな状況下で、武装イスラム集団の中には修道僧たちの考
えを理解し、その立場を尊重するグループもあったが…
事件は現実のものだからその結末なども変わるところはない
が、その事件の推移自体は謎が多く残っているそうだ。その
部分は別として、物語はその事件に立ち向かった修道僧たち
の宗教への思いを強く謳い上げたものになっている。
それは、繰り替えし登場する敬虔なチャントのシーンなどが
見事に描き出しており、その男声チャントを聞くだけでも価
値のある作品とも言える。もちろんそこは宗教の頑迷さにも
繋がるが、それは言っても仕方のないこと、ストーリーは実
話に基づくものだ。

出演は、2003年紹介『マトリックス』2作や2003年12月紹介
『タイムライン』などにも出演のランベール・ウィルスン、
1979年『007/ムーンレイカー』で悪役を演じたマイクル
・ロンズデール、昨年11月紹介『君を想って海をゆく』に出
演のオリヴィエ・ラブダン他。
脚本と監督は、俳優としてジャック・ドワイヨン監督1996年
『ポネット』で主人公のお父さんを演じていたグザヴィエ・
ボーヴォワ。監督としては5作目の作品になっている。

『ブルーバレンタイン』“Blue Valentine”
ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズの2人が、
揃ってゴールデン・グローブ賞ドラマ部門の主演賞にノミネ
ートされた作品。
2人が演じるのは、関係がちょっとぎくしゃくしている感じ
の若い夫婦。郊外に建つ一軒家に幼子と住む夫婦の妻は看護
師として少し離れた病院で働いているが、夫は家の壁の塗り
替えなどに余念がなく、職に就いている様子がない。
そんな一家にちょっとした事件が起き、夫婦は子供を妻の実
家に預けて2人だけの時間を過ごすことになる。そしてその
2人だけの時間に並行して、2人の出会いの時の様子が描か
れて行く。
それは、大学で医学を学んでいた女性と、高校も中退で引っ
越し業者の手伝いをしていた男性の物語。そんな2人がどの
ようにして出会い結婚したか。そして今の2人の関係は…そ
んな切ない物語が展開されて行く。
僕自身が結婚して30年以上も過ぎてみると、こんな事ってあ
ったよな〜、そんな感じの物語が展開される。実際に映画の
中には正に僕の実体験そのままのようなエピソードも描かれ
ていた。
でもそれを克服して結婚生活を続けられたか否か、その境目
は僕自身が何処にあったのかも判らない。ちょっとした言葉
の違いが事を大きくしたり、収束させたり、そんな人生の機
微のようなものが描かれていた。
映画を観ていて、僕には男性の方に非が多いようにも感じた
が、観る人に拠っては違う意見もあることだろう。そんな結
論の出ない…出せない物語。若い人にはこれからの人生の参
考に、年寄りには人生の回顧の切っ掛けとして観るとよい作
品だ。

共演は、共に2006年の4月紹介『迷い婚』と5月紹介『ポセ
イドン』、それに2008年『クローバーフィールド』などに出
演のマイク・ヴォーゲル。また、夫妻の1人娘を演じたフェ
イス・ウラディカは2004年生まれ、アメリカではCM界の人
気者だそうだ。
脚本と監督はデレク・シアンフランス。1997年23歳の時に発
表した作品が6つの国際映画祭で受賞するなどしたものの、
その後はドキュメンタリーに進んでいた監督が、11年間温め
てきた作品とのことだ。
それから、劇中に「未来」があることも監督の拘わりだった
ことにエンドクレジットを観ていて気付いた。その「未来」
が何を示しているかは、観る者の感性に委ねられているもの
だが、僕は明るい未来を信じたくなった。


『トゥルー・グリット』“True Grit”
前回も『シリアスマン』を紹介したイーサン&ジョエル・コ
ーエン兄弟監督の最新作で、先日発表されたアカデミー賞の
ノミネーションでは、作品、監督、主演男優、助演女優を含
む10部門に選ばれている。
1968年に発表されたチャールズ・ポーティス原作の西部劇小
説に基づく。同じ原作からは1969年にもヘンリー・ハサウェ
イ監督、ジョン・ウェイン、キム・ダービーの主演で映画化
(邦題:勇気ある追跡)があり、同作はウェインに初のオス
カーを齎している。
14歳の少女が殺された父親の仇を撃つため、インディアン居
留地に逃げ込んだならず者を追跡しようとする。しかし彼女
だけではどうにもならず、やむなく「真の勇気」を持つと見
込んだ1人のシェリフに同行を求めるが…
その旅には同じならず者を追うテキサスレンジャーの男も加
わって、3人は危険に満ちた荒野の中をそれぞれの目的に向
かって進んで行く。そこには信頼や友情も生まれるが、その
一方で意見の違いも存在することになる。

1969年の映画化は当時西部劇が斜陽の中での作品で、僕自身
も公開当時に観てはいるが、あまりピンと来なかったと記憶
している。それでもウェインが受賞したのは功労賞的な意味
があると当時も言われたものだ。
その作品のリメイクとなるが、コーエン兄弟はこれはリメイ
クではなく原作の再映画化と称しており、実際に兄弟は幼い
頃から原作小説を読み耽って、何時かは自分たちで映画化し
たいと思っていたのだそうだ。
従って本作は、1969年版以上に原作に忠実なものになってお
り、登場人物の台詞の多くも原作のままのものが採用されて
いるとのことだ。そしてその作品は、登場キャラクターたち
の人間関係を豊かに描いた作品にもなっていた。
さらに本作は、コーエン兄弟初の本格西部劇ということにも
なっている。因に2年前のオスカー受賞作も西部を舞台にし
ていたが、あれは現代劇だったとのこと。本作ではコーエン
兄弟が新たな道に歩み出した作品とも言われている。
出演は、シェリフ役に昨年12月紹介『トロン/レガシー』の
ジェフ・ブリッジス、テキサスレンジャー役に2009年12月紹
介『インビクタス』のマット・デイモン、そして語り手でも
ある少女役に全米規模のオーディションで選ばれたヘイリー
・スタインフェルド。
なおオスカー助演賞候補にも挙がっているスタインフェルド
は、撮影時に実際に14歳だったようだ。
他に2008年3月紹介『ノー・カントリー』でもコーエン兄弟
と組んでいるジョッシュ・ブローリン、2005年12月紹介『メ
ルキアデス・エスラーダの3度の埋葬』などに出演のバリー
・ペッパーらが脇を固めている。

『悲しみのミルク』“La teta asustada”
2009年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞と国際批評家
連盟賞をW受賞し、昨年のアカデミー賞外国語映画部門にも
ノミネートされた2008年製作のペルー映画。
1980年代のペルーを混乱と恐怖に陥れた武装集団「センデロ
・ルミノソ」。その武力闘争の中で行われた集団レイプなど
の悪魔的な行為によって精神的に深く傷つけられた人々。そ
んな暗い歴史の影を背負って生きる女性の物語。
ベッドの中で衰弱した女性が歌っている。それは目の前で夫
を殺され、レイプされた自身の経験を即興で歌っているもの
だった。その歌に女性の娘である主人公も加わり、2人の心
が通じあったところで母親は事切れる。
ペルーの首都リマの郊外の高台に位置するスラム地区。そこ
で主人公と母親は、叔父の家に身を寄せて暮していた。そし
て母親が亡くなった今、主人公はその遺体を故郷の村に埋葬
したかったが、我が子の結婚を控える叔父にはその費用を出
す余裕がなかった。
そこで主人公は自らの手でその費用を捻出しようとするのだ
が、主人公には母親が恐怖の中で授乳したことによる「恐乳
病」と呼ばれる病があり、それにより引き継いだ母親の恐怖
から逃れることが出来なかった。それは医者からは病気では
ないと言われていたが…
「南米のポル・ポト」とも呼ばれた赤色集団。その恐怖の時
代を生きた人々の心の傷は余りにも深い。それはアンデス系
先住民「ケチュア」の人々には特に深いもので、彼らは即興
の歌の中にその悲しみを表わし続けている。
その一方でこの作品は、彼らの明るく踊り歌う婚礼の儀式の
様子なども描くが、さらに彼らを搾取する、扉1枚を隔てた
豪邸に住む富裕な白人の存在なども描き出している。

脚本と監督は、1974年にリマで生まれ、1990年代後半にスペ
インのマドリッドに移住し、現地の映画学校で脚本を学んだ
後、ニューヨーク大学の映画科で監督術の勉強をしたという
クラウディア・リョサ。
叔父には映画監督ルイス・リョサや、1990年の大統領選挙を
フジモリと争った政治家であり、2010年ノーベル文学賞に輝
いた南米を代表する反骨の文学者マリオ・バルガス・リョサ
もいるという一族の才媛が、その第2作とした作品だ。
出演は、監督の第1作にエキストラとして出演し見出された
というマガリ・ソリエル。映画はミュージカルかと思うよう
な歌唱の連続で始まるが、それら歌のほとんどはソリエルが
実際に即興で歌っているものだそうだ。
そんな歌を愛する人々が悲しみの縁に沈んでいる。ここにも
僕らの知らない世界が存在しているようだ。

『アトムの足音が聞こえる』
2007年9月に『コンナオトナノオンナノコ』を紹介している
富永昌敬監督が、サウンド・クリエーター大野松雄氏の姿を
追ったドキュメンタリー。
大野氏は1930年東京の神田生まれ。文学座の研究生としてこ
の世界に入るが、それは役者を目指したからではなく、単に
「大学生が勉強を嫌になったから」とのこと、そして舞台美
術などの裏方をするが、やがてNHK効果団に入局する。
そこで当時ドイツで生まれたばかりの電子音楽に巡り会い、
1年ぐらいでNHKを退局、フリーの音響技師として何本か
の実験映画に関った後、1963年に始まった『鉄腕アトム』の
音響効果を手掛けることになる。
その後は東京の青山にスタジオを構え、そこは若手芸術家の
溜まり場ともなって行くが、ある日突然姿を消したという。
それは資産を騙し取られて借金取りに追われていたなどの話
も語られるが、本作ではその理由は追求していない。
そんな大野氏はその後は関西にいて、実はそれ以前から関っ
ていたある活動の継続に尽力していた。それは滋賀県に在る
知的障害者施設の発表会での音響の提供だった。
そして本作では、2009年東京国際アニメフェアでの功労賞受
賞の報告や、同年草月ホールで行われたライヴ公演の様子な
どが記録されている。

試写の後で宣伝の人から監督の名前で観に来たのですかと聞
かれて、「いえいえアトムの足音です」と答えてしまった。
それほどにあの足音は印象に残っていたものだし、実際に大
野氏の名前も、多分SFサウンドに詳しい友人の情報などか
ら記憶に在ったものだ。
でもその大野氏の実際の姿は全く知らなかったし、氏が現在
も行っている素晴らしい活動のことなどは全く考え及びもし
なかった。本作は、そんな素晴らしい人物の業績を知るだけ
でも満足できる作品と言えるものだ。
また本作では、大野氏が若いサウンド・クリエーターたちと
交歓する姿なども描かれており、その中で実演される「アト
ムの足音」の誕生の原理などは、僕自身が多少は音響技術を
噛ったものとして興味深く観ることが出来た。
因に富永監督の上記の作品では、劇中に挿入されたドキュメ
ンタリー的なシーンに感心したことを紹介文でも述べていた
が、本作でその資質は充分に活かされていたようだ。
        *         *
 今回のニュースは、25日発表されたアメリカアカデミー賞
のノミネーションで、まず10本の作品賞には、『ブラック・
スワン』“The Fighter”『インセプション』『キッズ・オ
ールライト』『英国王のスピーチ』“127 Hours”『ソーシ
ャル・ネットワーク』『トイ・ストーリー3』『トゥルー・
グリット』『ウィンターズ・ボーン』が選ばれた。
 一方、気になるVFX賞候補は、『アリス・イン・ワンダ
ーランド』『ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1』『ヒアア
フター』『インセプション』『アイアンマン2』の5本で、
9日付で報告した予備候補からは“Scott Pilgrim vs. The
World”と『トロン/レガシー』が落選となった。でもまあ
これは、前回に紹介したVES賞の候補と見比べるとこんな
ものかな…という感じだ。
 以下は、このページで取り上げた作品別に紹介すると、
 1月2日紹介『英国王のスピーチ』が作品、監督、脚本、
主演男優、助演男優、助演女優、美術、撮影、衣裳、編集、
音楽、録音の12部門で最多候補。
 今回紹介『トゥルー・グリット』が作品、監督、脚色、主
演男優、助演女優、美術、撮影、衣裳、録音、音響編集の10
部門。
 7月11日紹介『インセプション』が作品、脚本、美術、撮
影、音楽、録音、音響編集、VFXの8部門。
 10月17日紹介『ソーシャル・ネットワーク』も、作品、監
督、脚色、主演男優、撮影、編集、音楽、録音の8部門。
 前回紹介『ブラック・スワン』が作品、監督、主演女優、
撮影、編集の5部門。
 6月27日紹介『トイ・ストーリー3』も、作品、長編アニ
メーション、脚色、歌曲、音響編集の5部門。
 次回紹介予定『キッズ・オールライト』が作品、脚本、主
演女優、助演男優の4部門。
 11月2日付「東京国際映画祭<コンペティション以外>」
で紹介の『ウィンターズ・ボーン』も、作品、脚色、主演女
優、助演男優の4部門。
 3月21日紹介『アリス・イン・ワンダーランド』が美術、
衣裳、VFXの3部門。
 11月14日紹介『ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1』が美
術、VFXの2部門。
 さらに、今回紹介『ブルー・バレンタイン』が主演女優、
『トイ・ストーリー3』に併映『デイ&ナイト』が短編アニ
メーション、11月21日紹介『ヒアアフター』がVFX、7月
25日紹介『ソルト』が録音、1月16日紹介『塔の上のラプン
ツェル』が歌曲、11月7日紹介『ザ・タウン』が助演男優、
12月12日紹介『トロン/レガシー』が音響編集、2月21日紹
介『ウルフマン』がメイクアップの各部門の候補になってい
る。
 このページで取り上げた作品では、候補になった部門がそ
こそこ散けているようだが、特に今年はどれも気に入ってい
るので、出来るだけ多くの作品に受賞して貰いたいものだ。
 因に、『トイ・ストーリー3』のアニメーション作品によ
る作品賞候補は、1991年の『美女と野獣』、昨年の『カール
じいさんの空飛ぶ家』に続くもので、昨年から作品賞候補が
10本に拡大されて2年連続となっている。
 その『トイ・ストーリー3』が、脚本賞ではなく脚色賞の
候補というのはちょっと意外だったが、紹介を観るとジョン
・ラセターらのストーリーに基づくとされているもので、こ
れだとオリジナルシリーズの続編は脚色ということになるの
かな。
 それから、日本では映画祭でのみ上映された『ウィンター
ズ・ボーン』は、実はアメリカでも映画祭の他は限定上映の
みという作品で、このような作品が4部門での候補というの
も見事なものだ。この4部門は強敵が多いが、昨年の東京国
際映画祭では一番気に入った作品でもあったので、これを機
会に日本での一般公開も期待したい。
        *         *
 最後に製作ニュースをちょっとだけ。
 2012年7月20日公開予定の“The Dark Knight Rises”に
新登場するキャットウーマンの配役に、アン・ハサウェイの
出演が発表された。この役柄は以前の映画化ではミシェル・
ファイファーやハリー・ベリーなども演じたものだが、今回
はどんな魅力でバットマンを誘惑してくれるのだろうか。
 一方、ディズニーからは当初2012年6月8日と発表されて
いた“John Carter of Mars”の全米公開期日が、3月9日
に繰り上げになった。この期日は過去には2007年『300』
などアクション物の成功を生み出した期間とされており、本
作にもそのような期待が持たれているようだ。
 それから2012年12月公開予定の“The Hobbit”に関して、
ピーター・ジャクスン監督が緊急手術を受けたとのこと。病
名は胃穿孔で手術は問題なく成功したが、撮影開始は公開に
影響ない程度で少し遅れるようだ。


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井口健二