※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずはアカデミー賞の結果報告ということで、その結果で は、もと夫婦対決が話題となった『ハート・ロッカー』は作 品賞、監督賞を含む6部門、『アバター』が視覚効果賞など 3部門ということになった。僕自身、両作品を観比べた上で この結果は順当だとは思うが、『アバター』がSF/ファン タシーというよりは、初の実写3D作品での受賞を逃したの は残念と言いたいところだ。 ただまあ、選前のもと夫婦対決という盛り上がりで、一気 に『ハート・ロッカー』の評価が高まったのも否めないとこ ろで、本来このシチュエーションが無かったら候補に挙がっ たかどうかも判らない規模の作品が、作品賞まで駆け登った のだから、これはラッキーとしか言いようがない。結果的に これをお膳立てしてくれたジェームズ・キャメロン監督には 敬意を表したいくらいだ。 そしてこれが、プレゼンターのバーブラ・ストライサンド に「時代が動いた」と言わせたキャサリン・ビグローの監督 賞受賞にも繋がった訳だが…。それにしても、ストライサン ドも女性としては小柄ではないはずだが、そのミュージカル 女優がさらに見上げるほどのビグローの身長にも驚かされた もので、その後の作品賞の受賞で壇上に来た男性スタッフた ちよりも頭一つ分大きいのだから、これなら戦場アクション を大局から観て描けると、妙な納得もしてしまった。 それにしても、直前には今まで問題にもされなかった事前 運動の暴露という、恐らくは大手配給会社の差し金と思われ る妨害工作があったにも拘らずの受賞だから、これは見事。 まあ妨害工作が裏目に出たということも考えられるが… その他の結果は、SF/ファンタシー映画関連を中心に報 告するが、主な賞を逃した『アバター』は、視覚効果賞の他 に撮影賞と美術賞を受賞。美術賞の発表前にはプロダクショ ンアートと実際の画面の比較がされたが、CGIとは言え、 そのイメージがそのまま映像化されているのには感激した。 一方、作品賞にもノミネートされた『第9地区』は無冠に 終ったが、これについては昨日書いた通りだ。 また『スター・トレック』がメイクアップ賞を受賞。この 賞では、ここ数年『エディット・ピアフ』『ベンジャミン・ バトン』といった年齢の変化を観せる作品が多く受賞してい たが、今回は基本的なエイリアンのメイクで、これも嬉しい 受賞だった。なおこのプレゼンターを担当したベン・スティ ラーが受賞式で見せた『アバター』のメイクは皮肉のつもり なのかな。本当はサシャ・バロン・コーエンとの共演でもっ と過激なギャグもあったという噂だが。 この他では、作品賞にもノミネートされた『カールじいさ んの空飛ぶ家』はアニメーション作品賞と作曲賞を受賞。こ の辺も順当という感じだろう。 それからもう1本、長編ドキュメンタリー賞を、昨年10月 20日付で紹介した『ザ・コーヴ』が受賞したが、この作品に ついての僕の評価はその時に書いた通りのものだ。でも今回 も受賞してしまったのは、やはりアメリカ国内の世論の強さ だろう。個人的に候補作の中では前回3月7日付で紹介した 『ビルマVJ』の方が面白かったが、どちらも恣意的な作品 であることに変わりはない。 ただ今回の長編ドキュメンタリー賞では、『THIS IS IT』 や『キャピタリズム』が最初から漏れているのが全体として は不満には感じられたところだ。因に、『ザ・コーヴ』は、 昨年11月8日付で紹介したように1986年『ショート・サーキ ット』などに出演のフィッシャー・スティーヴンスが製作を 担当していたもので、彼にオスカー像の手渡されるところが テレビにも写っていた。 * * ということで、ここからはテレビ中継について少し述べて おきたいものだが、放送中にゲストが作品賞受賞作を観てい ないことを暴露する司会者は論外としても、アメリカの3大 ネットワーク(死語?)で番組を持っていると言いながら、 質問する度にWhat you say?と聞き返されるレポータも何様 という感じだった。 それに、何故か現地アメリカ人の記者ではない外国人記者 クラブの人間ばかりをゲストに呼んでおいて、しかも彼らが 先に選出したゴールデングローブ(GG)賞については殆ど 言及しないというのもおかしな話だった。 実際、今回のアカデミー賞作品賞では、以前の候補作紹介 の時にも書いたように、GG賞のコメディ/ミュージカル部 門の候補がすべて無視されてしまった訳で、これに言及して いれば、コメディ主演女優賞のメリル・ストリープの受賞は 無いと断言出来たはずなのに、その辺の分析もできないで、 よく記者と言えたものだという感じもした。 もっとも、自分たちが賞を贈った『アバター』より、贈ら なかった『ハート・ロッカー』の方を平然と持ち上げるとこ ろは、さすがに機を観るのは敏という感じもしたが、GG賞 の結果からストリープとサンドラ・ブロックの対決という図 式を出して、さらにドラマ主演女優賞ブロックの受賞も予言 すれば、GG賞の権威も多少は保てたと思えたところだが… いずれにしても、毎年観ている生中継には例年苛々させら れてきたが、今年は特にそれが顕著に出てきた感じもした。 現地にスタジオを設けるより、日本のスタジオでもっと正確 な分析のできるゲストを呼んで番組を作る方が良かったので はないだろうか。 * * 続いては記者会見の報告で、ちょっと遅れたが3月6日に 公開された『プリンセスと魔法のキス』のプロモーションで 製作者と2人の監督が来日し会見が行われた。そこで僕は、 作品の中でちょっと気になっていた魔法にブードゥー教を選 んだ理由について訊いてみた。 その答えは、「元々のアイデアでは舞台は特定されていな かった。しかし企画をディズニーアニメーションの責任者に なったジョン・ラセターに説明したとき、ラセターがニュー オーリンズを舞台にすることを提案。元々ウォルト・ディズ ニーがその街が好きで、ディズニーランドにも人気スポット のフレンチ・クォーターを設けていることを思い出して決定 した。そしてニューオーリンズに取材に行ってみると、そこ では今でも一般の生活の中にブードゥー教が根差していて、 それを選ぶのは自然の成りゆきだった」とのことだ。僕の質 問はもっと単純なつもりだったが、答えは製作の経緯までも 含めた思いの外に大きなものになって満足した。 またその製作の経緯では、ディズニーは5年前にCGIへ 全面転換を発表してセルアニメーションの機材はすべて廃棄 していたものだが、今回のセルへの回帰を目指したところ、 実は廃棄されたはずの機材がこっそり倉庫の隅に保管されて いて、その機材がほとんど利用できたとのこと。その機材を 廃棄せずに保管していた担当者は、一躍英雄扱いされたそう だ。さらに、今回はアニメーターに美術大学を出たばかりの 新人を数多く雇い入れたが、監督たちは最初にウォルトと一 緒に仕事をしていた初代のアニメーターから直接指導を受け た世代で、さらにその教えを後世に伝えることが出来て嬉し かったとのことだ。 そしてディズニーでは、次のセルアニメーションの作品も 計画中であることも紹介された。それは未だ決定ではないよ うだが、画面を直接観ながらアニメーションを製作できるセ ルの良さをこれから追求して行くとのことだった。 * * もう一つ記者会見の報告は、『ウルフマン』で製作主演を 務めたベニチオ・デル・トロの来日会見も行われた。 そこでは僕は質問できなかったが、他の記者の質問でリッ ク・ベイカーのスペシャルメイクを採用したことを訊かれ、 デル・トロは以下のように答えていた。 「それはまずこの作品が1941年の作品のリメイクであり、 その作品に主演したロン・チャニーJr.とメイクアップアー チストのジャック・P・ピアースにオマージュを捧げたいと 考えていた。そのためCGIによる変身は最初から考えてお らず、当初はリックに参加してもらえるかどうかも判らなか ったが、オファーをしたところ快く引き受けてくれた」との ことだ。 そしてそのリックとの作業は、「毎日がLove & Hateの繰 り返しで、毎朝4時間掛けてメイクをして徐々に狼男になっ て行くとき時には嬉しさで一杯だったが、1日の撮影を終え て2時間掛けてメイクを剥がす時は憎しみが湧いてきた」と のこと。本当にこの作品を愛して止まないデル・トロという 感じの回答だった。 また、撮影開始の直前になって監督が交替したことに関し ては、「当初の監督の狙いも素晴らしいものだったが、主人 公が変身する以前からかなり凶暴で変身の意味が…。それに 比べてジョー・ジョンストンの狙いは直線的で判りやすいも のに作品を仕上げてくれた」とのこと。作品を観た感じは、 そつ無く撮っているという風にも取れたが、監督自身の狙い がそこにあったということらしい。そしてデル・トロは本作 の製作者でもある訳で、その製作者がジョンストンの狙いを 理解した上での交替劇だったようだ。 * * ここからは製作関連のニュースを紹介しよう。 先週報告したデイヴィッド・S・ゴイヤーが“Superman” に参加するという情報に関連して、監督のクリストファー・ ノーランがロサンゼルス・タイムズ紙に語ったという記事が 紹介された。 それによると、ノーランとゴイヤーが“Batman”の第3作 の検討中にゴイヤーから突然、「“Superman”をやるならこ んなアプローチではどうか?」というアイデアが出されたと のことだ。そしてノーランはそのアイデアに感激、直ちに妻 で製作者のエマ・トーマスに報告して、ワーナーにもそのア イデアが紹介されたということだ。 従って、前回ワーナーがゴイヤーにコンタクトしたという のは、このゴイヤーのアイデアにワーナーが反応したという ことになる訳で、これは実現の可能性が極めて高いと言えそ うだ。勿論そのアイデアの内容に関してはノーランは明らか にしていないし、ノーランが監督するかどうかも明確にはし ていないものだが、ノーラン自身がそのアイデアには非常に 興奮したと発言しており、このまま行けば“Batman”の2作 に続くコラボレーションは実現しそうだ。 ただし“Superman”の次回作は、前回も紹介したようにそ の製作のタイムリミットが切られていて、それに従うと公開 は遅くとも2013年に予定される。一方、『ダーク・ナイト』 に続く“Batman”の新作の公開もその頃が予定されており、 このままではノーランはどちらかを選ばなければならない情 勢となる。 さらに、ゴイヤーはこれから脚本の執筆に取り掛かるが、 “Batman”の新作の脚本にはすでに監督の兄弟のジョッシュ ・ノーランが取り掛かっているとの情報もあって、このまま では“Batman”の新作が先行して製作されることになりそう だ。さてこの状況で、ノーラン監督はどのようにして2本の 映画製作を進めるのか、これは本当に楽しみなことになりそ うだ。 * * 次は、2008年11月15日付第171回で紹介の“The Wonderful Wizard of Oz”の計画が、日本では4月に公開予定の『アリ ス・イン・ワンダーランド』の大ヒットのお陰で再燃してい るようだ。 この計画では、当初はジョン・ブアマン監督が1939年版の MGM作品“The Wizardof Oz”(オズの魔法使い)をリメ イクするというものだったが、現在はいろいろな方向性で検 討が行われているようだ。そしてその中では、“Shrek”の 第4作を手掛けたダーレン・レムケがミステリー調の物語を 構築しているものや、1997年『スポーン』を手掛けたトッド ・マクファーレンのアイデアから2005年『ヒストリー・オブ ・バイオレンス』のジョッシュ・オルスンが脚本を執筆して いる“Oz”と題された作品も進められているとのことだ。 しかし今回の計画では、その後にL・フランク・バウムの 原作に基づくシリーズ化も考慮されているとのことで、勢い その第1作には慎重にならざるを得ないという側面がある。 従って一体どちらの計画がゴーサインとなるか、状況はなか なか難しい局面のようだ。 その一方で『オズ』関連の作品では、日本でも上演された ミュージカル版の“Wicked”を映画化する計画もユニヴァー サルで進められているし、さらにPCゲーム版の“American McGee's Oz”の映画化権もジェリー・ブラッカイマーが持っ ているはずで、これらのタイミングが揃ったらなかなか面白 い展開にもなりそうだ。 * * 最後に、昨年11月8日付で紹介した“Men in Black 3”の 計画に関して、『トロピック・サンダー』などのイーサン・ コーエンが進めている脚本のお話が少しだけ聞こえてきた。 それによると、第3作の物語は、ウィル・スミスが扮した エージェントJが時間を遡って、トミー・リー・ジョーンズ が扮したエージェントKの若い頃とチームを組むという展開 になっているようだ。そしてその若い頃の配役には、『ノー ・カントリー』などのジョッシュ・ブローリンが立候補して いるという情報も報告されている。 さらに新登場のキャラクターの配役として『スウィニー・ トッド』などのサシャ・バロン・コーエンと、“The Flight of the Conchords”というテレビシリーズで、製作、脚本、 主演から音楽まで担当したジェマイン・クレメントの出演が 期待されているという情報もあり、その一方でヤズという役 柄に出演者(不詳)が契約したという情報もあるようだ。 つまり、製作準備は着々と進んでいる感じだが、果たして ウィル・スミスは再登場するのか、またトミー・リー・ジョ ーンズのカメオ出演はあるのか、さらにコーエンとクレメン トは本当に出演するのか、そして肝心の監督は誰になるのか など、今は公式の製作発表が待たれるところだ。
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