| 2009年12月27日(日) |
すべて彼女の…、処刑山、海の金魚、やさしい嘘と贈り物、フローズンR、パーフェクトG、パラノーマルA、シェルター、サロゲート(追) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『すべて彼女のために』“Pour elle” 2007年2月紹介『チャーリーとパパの飛行機』の父親役など のヴァンサン・ランドンと、ドイツ出身の国際女優ダイアン ・クルガーの共演で描く究極の夫婦愛の物語。 無実(?)の罪で投獄された妻を救うために、一介の国語教 師が究極の手段に訴え出る。本作の成立の経緯は良く判らな いが、実話の映画化と称してもいいほどの迫真したドラマが 展開される。 主人公は、妻とまだ幼い1人息子の3人家族で暮らす高校の 国語教師。だがその平穏な家庭の暮らしが突然の警官の乱入 で一変する。出版社に勤めていた妻の上司が殺され、妻がそ の容疑者となったのだ。 妻は拘留され、裁判が続く中で夫は妻の無実を信じるが、目 撃者や物的証拠、それに犯罪の動機などで妻の不利は否めな い。やがて判決が下され、夫婦は絶望の淵に立たされる。そ して夫が取った行動は… 物語では、一応回想シーンで妻以外の犯人が示されるが、そ の描き方は微妙で、勘繰れば真犯人は妻であってもいいよう な展開にもなっている。だが仮にそうであったとしても、こ の夫の妻への愛情は揺るぎないものだったということになる だろう。 夫や妻が追い詰められて行く過程も丁寧且つ納得の行くよう に描かれているし、ノンフィクション、フィクションを問わ ず同様のテーマの作品はいろいろある内でも、本作は完成度 の高い作品と言えそうだ。 因に、本作はハリウッドでのリメイクが進められており、そ の監督と脚本は、2006年『クラッシュ』と2007年『硫黄島か らの手紙』で2年連続オスカー脚本賞を受賞したポール・ハ ギスが、自身では初のリメイク作品として手掛けることにな っているそうだ。 令状なしの身柄拘束や家宅捜索など、観ていて気になる点も ままある作品だが、フランス警察の横暴さを見せるというこ とでなら、これも有りかも知れない。でもまあそんな末節に 拘わる暇もないほどに緊迫した物語が展開されて行く。 1人息子の態度や妻の持病など、いろいろな要素が巧みに構 築され、最後まで全く目の離せない作品となっていた。
『処刑山』“Død snø” ナチスドイツの残党が冷凍のゾンビとなって若者たちを襲う ノルウェー産のホラー作品。 背景は現代。男女5人のグループが街道で車を降り、徒歩で 雪深い山間のロッジを目指している。そこはグループ内の男 のガールフレンドが所有するもので、ガールフレンド自身は 別途スキーによる山越えで現地を目指しているらしい。 そしてロッジに着いた若者たちは思い思いのやり方で雪山を 楽しみ始めるが、夜になり、離れて建つトイレに向かった1 人が異様な人影を目撃する…。その地には、戦時中ナチスの 基地が置かれ、敗戦後に暴虐の限りを尽くしたまま姿を消し たという歴史が有った。 今年11月紹介の『誰がため』や、『ミレニアム/ドラゴンタ トゥーの女』にもナチスの話は出て来たが、ヨーロッパ特に 北欧圏におけるナチスの影というのは、ナチスとの関係も複 雑だし、ミステリーからホラーまでいろいろな題材になるも のだ。 そんな中でホラーの本作は、基本的には娯楽作品となるもの だし、取り立ててナチスだからどうのという展開が有る訳で はないが、日本で言えば落ち武者に相当するのかな。でも、 近代兵器を持っている分、いろいろ面倒(?)になったりも する。 ただし本作は背景が雪山だから、ゾンビもジョージ・A・ロ メロばりにゆらゆらとという訳にも行かず、突然走り出した り…と言うのは、まあ本作に限っては仕方ない面も有りそう だ。実際、足元が覚束ない状態ではゆっくり歩く方が様には ならない感じだろう。 そんな訳で、物語の主題はゾンビ対若者の闘いとなるものだ が、ここでのゾンビの倒し方がいろいろ凝っていて、それは アメリカの若年向けテレビ局が選ぶ映画賞で、『スペル』や 『ソウ5』と並び、ホラー作品賞、切断賞、死闘賞などの候 補にもなったとのことだ。 因に、ノルウェー語の原題は英語では“Dead Snow”になる ものだが、製作者は当初“Red Snow”に相当するノルウェー 語の題名を付けたかったのだとか。しかしその題名は別の作 品で使われていたために変更したとのことだが、そのセンス も良い感じだ。 スタッフ・キャストには馴染みが無いが、脚本・監督のトミ ー・ウィルコラは、『キル・ビル』のパロディなどで頭角を 現した若手とのこと、共同脚本のスティッグ・フロード・ヘ ンリクセンの名前と共に注目しておきたい。
『海の金魚』 2008年2月に紹介した『チェスト!』の雑賀俊郎監督による 鹿児島3部作の第2弾。 鹿児島錦江湾で毎年行われる鹿児島カップ火山めぐりヨット レースを題材にした青春ドラマ。 主人公は、地元の高校に転校してきた少女と、漁港に係留さ れているヨットで1人暮らしている少女。転校生の少女は父 親の血を引く天才ヨット乗りらしいが、その孤高な態度は級 友を寄せ付けない。 一方、1人暮らしの少女には漁民たちから立ち退きの要求が 出ているが、意に解さない態度を取っている。そして授業の 進捗を伝えにくる級友や、漁民の嫌がらせを止めに入る若者 もいてくれる。 その内の授業内容を伝えに来ている級友が転校生の少女にも 声を掛け、4人のグループが作られて行く。さらにその周囲 には、水族館で獣医を務める女性ヨット乗りや転校生に反発 する男子生徒などもいて、物語が展開される。 そして、ヨットに1人暮らしなのに自分では操船できない少 女を中心に、転校生を仲間に入れようとする行動や、海に出 たまま行方不明になった父親が残した宝(?)の地図への思 いなど、いろいろな物語が所狭しと盛り込まれている。 『チェスト!』の時は主人公が小学生だったから苛めなどの 多少暗いエピソードもあったが、主人公が高校生となるとそ んな話題も発生せず、全体としてすっきりした物語に仕上が っている。漁民の嫌がらせにしても取り敢えずは大人同士の 話のものだ。 そんな中で、ヨットレースでの勝負をクライマックスに置い て、主人公たちの成長が適切な展開で描かれていた。その間 の葛藤もそれなりに上手く描かれていたように思える。 出演は、2008年6月紹介『愛流通センター』に出演していた 入来茉里と、モデル出身の田中あさみ。他に賀来賢人、白石 隼也、柄本時生。さらに今年9月に紹介した『白夜』の吉瀬 美智子、高嶋政宏、芳本美代子、小島よしお、4月紹介『海 の上の君は、いつも笑顔』の麻宮美果らが脇を固めている。
『やさしい嘘と贈り物』“Lovely, Still” 1994年『エド・ウッド』でオスカー受賞のマーティン・ラン ドーと、1974年『アリスの恋』で受賞エレン・バースティン の共演によるラヴストーリー。 主人公はかなり高齢の男性。近所のスーパーマーケットに勤 めてはいるようだが、仕事は座ってスケッチを描いているだ け、でも高齢者故か他の従業員も文句は言わないようだ。そ んな男性はクリスマスを控えた夜、自分宛のプレゼントに何 かを包んでいる。 その男性は、毎夜もやもやした得体の知れない悪夢に悩まさ れており、寝起きは芳しくないようだ。しかしそれでも毎日 通勤し、勤務先では若い経営者ともフランクに話し合えるな ど尊敬を持って迎えられている。 そんなある日、男性の家の近所に若い女性と2人暮らしの高 齢の女性が引っ越してくる。その女性との出会いは、最初は ちょっとぎくしゃくしたが、女性の積極的な態度もあってす ぐに打ち解けるようになる。しかも彼女からデートを申し込 まれて… こうして高齢者同士の交際が始まるが、これにはスーパーマ ーケットの経営者や他の従業員たちも協力して、いろいろな デートの心得が教え込まれる。さらに経営者は行き付けのレ ストランに予約までしてくれる。(以下はネタばれです) ネタばれといっても、ポスターには最初からそのことがコピ ーとして書かれているから隠しようもないのだが、僕自身は 幸い事前の情報を入れることなく観ることができた。その目 で観ていると、このネタばれが多少もったいなくも感じられ たところだ。 でもまあ最近の社会の状況でいうと、これは明かした方が観 客動員には繋がるのかもしれない。とは言うもののテーマ的 には2004年11月に紹介した『きみに読む物語』と被るところ が多いし、その辺は難しい部分でもある。 ただし本作では後半に1つ大きな展開が有って、そこでの周 囲の協力などを後で考えると、いろいろ心に染みてくる感じ がした。多分、最後のキーになる品物は、偶然そこにあった のではないのだろう。 なお、何も知らずに観ていても途中で結末は2つに1つだな あと考えていた。それくらいにいろいろとヒントは設けられ ている作品だ。因に、もう1つはもっとオカルト的なものも 考えたが、幸いそういう方向性ではなかったようだ。
『フローズン・リバー』“Frozen River” 雪が降り積もった厳冬のカナダ国境の河に面するアメリカ・ ニューヨーク州の最北部の町を舞台にした白人とネイティヴ 2人の女性が主人公の人間ドラマ。 白人の女性はギャンブル依存症の夫に苦しめられ、今も新居 の購入資金を持ち逃げされて残金を払わなければ手付け金も 取られるという瀬戸際に立たされていた。そして、夫の姿を 求めて立ち寄ったビンゴ会場で夫の乗用車を発見する。 その車に乗っていたのはモホーク族の女性。彼女は「車はバ ス停に捨ててあったから拾ったのだ」と主張する。しかし結 局は白人女性の言い分を認めるが、返す前に車で凍結した河 を渡って欲しいと頼み込む。それには充分な報酬も有るとい う。 国境の河を渡ることは違法行為だが、モホーク族の居留地は 河の両岸に跨がっており、彼らは自由に往来する権利を持っ ているという。そして車が河を渡った先には、アメリカに不 法入国しようとする東洋人が待っていた。 こうしてそれなりの現金を得た白人女性は、モホーク族の女 性とは理解しあえないまま、金のために違法な渡河を重ねて 行くが… 女性が主人公で雪の風景というと、1996年の『ファーゴ』や 2005年の『スタンドアップ』を思い出すが、物語の厳しさと いう点ではどの作品も同じであっても、本作には何処か他の 作品にはない暖かさが感じられた。 そこには人を信じるということの素晴らしさが見事に描き出 されており、特に最近は殺伐とした映画が多くなってきてい ると感じた矢先にこの作品を観られたことで、何かほっとし た気分にもさせてくれたものだ。 出演は、本作でオスカー候補になったメリッサ・レオと、実 際にネイティヴアメリカンのミスティ・アップハム。他に、 2004年『ヴィレッジ』などのチャーリー・マクダーモット、 『バットマン・ビギンズ』などのマーク・ブーン・ジュニア らが共演している。 脚本・監督は本作が長編デビューのコートニー・ハント。自 身の短編映画を基にしたものだそうだが、本作ではサンダン ス映画祭のグランプリを受賞の他、オスカー脚本賞にもノミ ネートされた。 なお本作は、アカデミー賞で2部門の候補になったにも拘ら ず日本公開の目処が立っていなかったものを、東京渋谷の映 画館シネマライズが直接権利を獲得し配給にも乗り出すこと にしたもので、その意気にも感じているものだ。
『パーフェクト・ゲッタウェイ』“A Perfect Getaway” 2000年『ピッチブラック』、2004年『リディック』、そして 現在その第3弾の製作開始も伝えられている監督・脚本家の デヴィッド・トゥーヒーによる最新作。 1993年『逃亡者』、1995年『ウォーターワールド』などの脚 本家としても知られるトゥーヒーだが、彼が監督も手掛ける とかなり捻った展開になることが多いようだ。本作もその例 に漏れない作品だ。 物語に登場するのは、ミラ・ジョヴォヴィッチと『サハラ』 などのスティーヴ・ザーン、TV『LOST』のキエレ・サ ンチェスと『ドリームキャッチャー』などのティモシー・オ リファント、『グラインドハウス』のマーリー・シェルトン と2009年『スター・トレック』に出演クリス・ヘムズワース の3組のカップル。 舞台はハワイのカウアイ島。ミラとスティーヴのカップルは 片道1日のトレッキングでしか辿り着けないという美しい浜 辺を目指している。その旅に他の2組のカップルが関ってく ることになるが… そこにオアフ島でカップルが殺された事件が報告され、その 犯人もカップルでカウアイ島に向かったことが伝えられる。 しかし電波状態が悪くそれ以上の情報は得られない。果たし て犯人はどのカップルなのか。 飛び切り美しい大自然の中で、極限状態のサヴァイバルが開 幕する。 この後の展開は、予想通りのかなり捻ったものになって行く が、そうかなあと予測して観ている目にもさほどの破綻はな いように思えた。凝った作りの作品であることは確かだ。た だまあこれを観ていて観客が楽しいかというと微妙なところ も有る訳で… アクション映画と割り切ればそれもいいのだろうが、それな りに感情移入して観てしまう観客としては、多少割り切れな い感じはしてしまう。ただし結末には、成程そうだったのか と思わせる巧みさはあった。 ストレートに描いたら唯のサヴァイバルでしかない物語を、 こんな風に料理してみせるという辺りがトゥーヒーの面白さ とも言えるのだろう。 因に、今回の日本公開は98分のヴァージョンで行われるが、 本作には108分のディレクターズカットも存在するようで、 チャンスが有ったらそれも観てみたいものだ。
『パラノーマル・アクティビティ』“Paranomal Activity” 製作されたのは2007年。その年のホラー映画祭で受賞を果た してドリームワークスがリメイク権を獲得するも、リメイク してもそれ以上の作品は望めないと判断されて、今年9月に アメリカで限定公開。当初は12館だった興行が話題を呼び、 5週目には全米2500館に拡大して累計1億ドル超の興行を達 成したという製作費15,000ドルの作品。 体裁は、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバ ーフィールド』など、この手の作品に有りがちな素人が家庭 用の機材で記録したと称するもので、その中に超常的な映像 が写されていた…という作品だ。 ただまあ、家庭用の撮影機材の進歩もすごいもので、本作で は価格3,000ドルのソニー製HDカメラが使用されて、実際 の映像の中でも鏡に映るシーンが有るから本当にそれで撮影 されていると思われるが、その映像はプロ用のカメラでも遜 色の無いものになっていた。 物語は、8歳の時から周囲で異常現象が起きているという女 性と、その謎を解き明かして彼女を守ろうとする男性を主人 公に、多少外部の人間の登場もあるがほとんどは2人だけの 演技で、超常現象に見舞われる顛末が描かれている。 その超常現象は手を替え品を替えのいろいろなものが登場す るが、、それなりに恐怖感も煽られるもので、ショッキング というよりも、久々にぞくぞくする感じが味わえるものにな っていた。 ただしお話の展開には多少無理な感じのするところも有り、 その辺がリメイクでも検討されたのだろうが、より良くはな らなかったのかな。因に本作の結末はスティーヴン・スピル バーグの意見で追加撮影されたものとなっているようだ。 脚本・監督は1971年生まれ、イスラエル出身の元ソフトウェ アデザイナーという肩書きの人で、ゲームソフトの開発を手 掛けた後に本作で監督デビュー。次回作には“Area 51”と いう作品がすでに撮影完了と発表されている。 なお本作の日本公開はアメリカ公開と同じく86分のヴァージ ョンとなるが、他に99分のエクステンデッド・ヴァージョン も有るようだ。
『シェルター』“Shelter” 2002年『めぐりあう時間たち』など4度のオスカー候補にな っているジュリアン・モーアと、2006年6月紹介『マッチ・ ポイント』や2005年のテレビラマ“Elvis”でゴールデン・ グローブ賞受賞のジョナサン・リス・メイヤーズ共演による 超常心理サスペンス。 モーアが扮するのは女性心理学者。多重人格など存在しない という立場でその病を装った犯罪者の実体を暴き成果を挙げ ている。そんな彼女に、多重人格の存在を認めているらしい 父親の心理学者から1人の患者が紹介される。 メイヤーズが扮するその患者は、最初は大人しく診察にも応 じていたが、父親が行ったあることを切っ掛けに態度を豹変 させ、多重人格の症状を見せる。しかもその人格の一方は、 患者が6歳の時に起きた殺人事件の被害者のものだった。 その事実に興味を持った主人公は過去の事件の背景を調べ始 めるが、それはやがて驚愕の真実を彼女の前に曝すことにな る。 多重人格の話は、最近ではダニエル・キースの著作などでも 話題になっているが、本作ではプロローグからそのことが否 定され、かなり小気味よい展開で話が進められて行く。しか も多重人格の症状自体が普通のものとは異なり、その辺の興 味でも引っ張られる。 そしてその結末は超常的なもので、その謎解きもなかなか巧 みに作られている作品だ。脚本は2003年『“アイデンティテ ィー”』などのマイクル・クーニー。前作も多重人格が物語 の背景に有ったが、本作では真正面からそれを描いている。 監督は、スウェーデン出身のマンス・マーリンドとビョルン ・ステイン。幼馴染みという2人の監督の経歴では、『ジェ ネシス』(原題Storm)という作品が過去にDVDで紹介さ れているようだが、本作でハリウッドに進出、日本でも本格 公開となるものだ。 共演は、2007年3月紹介『ハリウッドランド』に出演のジェ フリー・デマン、2007年6月紹介『ウィッカーマン』などの フランセス・コンロイ、今年9月紹介『君がぼくを見つけた 日』で主人公の幼少時代を演じていたブルックリン・プロウ ルクスなど。 基本は超常ドラマだが多重人格ものとしても面白く、特に、 メイヤーズの人格が変化する際の切り替えは見事だった。ま た、映画の中で明かされるタイトルの意味にも興味深いもの が有った。
『サロゲート』“Surrogates”(追記) 11月15日付で紹介した作品だが多少気になることが有ったの で試写を見直した。因に気になったのは、遠隔操縦のロボッ トを通じてそのオペレーターを殺せるかという点なのだが、 それに関しては安全装置を先に破壊する…などの説明は有っ ても、肝心の死因についてはやはり映画の中でも誤魔化され ていたようだ。 しかし、再観すると別の点にも目が行くもので、それでこの 作品が意外とSFになっていることに気付かされた。それは 端々の設定の細かさなどにも拠るものだが、中でも軍事目的 で兵器として開発された装置が、人を殺すという理由で軍が 手を引いたという下りには、やられたと思ってしまった。こ の発想は間違いなしのSFと言えるだろう。 お陰で、この作品の脚本家と監督のチームの評価も少し変え なければと思ったものだ。試写で観た時に「何だこりゃ」と 思ってそのままにした『T3』も、見直すと何か別のものが 観えてくるのかな。
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