井口健二のOn the Production
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2008年04月06日(日) フールズ・ゴールド、シューテム・アップ、サンシャイン・デイズ、百万円と苦虫女、あの日の指輪を待つ…、シークレット・サンシャイン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石』
                    “Fool's Gold”
『10日間で男を上手にフル方法』のマシュー・マコノヒーと
ケイト・ハドソンが再共演したロマンティック・コメディ・
アドヴェンチャー。
カリブ海を舞台に、1715年に沈んだとされるスペイン艦隊に
積まれたスペイン王から妃への贈り物(宝箱40個分の財宝)
を巡って、トレジャーハンターの男とその元妻が冒険を繰り
広げる。
主人公は、長年スペイン王の財宝を探していたがその資金も
尽き、地元のギャングから借りた金も返せないまま、頼りの
ボートが爆発沈没してしまう。ところがその沈没の副産物で
彼は探し求めていた財宝の手掛かりを掴む。
しかし、地元のギャングがそんな彼の話に耳を傾けるはずも
なく、彼は敢えなく海の藻屑に…。しかもそのギャングは、
彼の掴んだ手掛かりを主人公の師匠だったトレジャーハンタ
ーのベテランに持ち込んで財宝捜しを続行する。
一方、辛くも海底からの脱出に成功した主人公は、離婚調停
中の妻の待つ判事の許に急ぐが…。そこにクルーザーでやっ
てきた大金持ちの男性やその愛娘も加わって、財宝捜しの大
冒険が開幕する。
昨年末の『ナショナル・トレジャー2』に続いて、今年5月
には『インディ4』と、大掛かりなトレジャー・ハンター映
画が続く中で、本作はどちらかというと小振りな作品になっ
てしまいそうだ。
でも本作は、その分人間的な面白さを追求している面もある
作品で、その辺はマコノヒー+ハドソンのコンビに、ドナル
ド・サザーランド、レイ・ウィンストンらが脇を固めて盛り
上げている。また、サザーランドの娘役を演じたアレクシス
・ジーナという新人女優がちょっと光っているようにも感じ
られた。
原案脚本は、『アナコンダ2』などのジョン・クラフリンと
ダニエル・ゼルマン。監督は、2005年のウィル・スミス主演
作『最後の恋のはじめかた』などのアンディ・テナント。
もっと、パロディ的な要素があっても良かったか…とも思え
るが、まあ、堅実に楽しめるという感じの作品だ。

『シューテム・アップ』“Shoot'em Up”
上映時間86分。その間に25,000発の銃弾が発射される。しか
もその射撃戦はトリッキーというより荒唐無稽。正にBムー
ヴィの典型のような作品だが、そんな作品に、クライヴ・オ
ーウェン、モニカ・ベルッチ、ポール・ジアマティが共演し
ている。
しかも観ていると、この3人が出演したのも判るような気が
してくる。何しろアクションが無茶苦茶に面白い。その上、
そのアクションの裏で進んでいる政治的な大陰謀。その辺の
物語のうまさも出色と言える作品だ。
物語は、オーウェン扮する男が道端のベンチに座っていると
ころから始まる。そこに1人の妊婦が通り掛かる。そしてそ
の後を、拳銃を構えた男が追って行く。その様子に何かを感
じた主人公はその後を追うが…
主人公は最初は銃器は持っていない。ところがさすが銃の国
アメリカでは、瞬く間に銃器が手に入り、最初は女性をかば
いながら、次には産まれたばかりの赤ん坊を抱いて、主人公
の逃亡劇が始まる。
その逃亡劇に巻き込まれるのがベルッチで、さらに彼らを追
うボスがジアマッティ。このボスが、何しろ赤ん坊を目指し
て大量の兵隊を投入してくる。何でそこまでするのかは…話
が進むにしたがって徐々にその背景が明らかになって行く。
この物語の展開も抜群に巧いし、しかもその間に繰り広げら
れるガンファイトの面白さ。主人公は百発百中だし、対する
敵の銃弾はまず当らない。さらに、主人公は敵の繰り出す作
戦を尽く事前に見破って対処して行くのだ。
この辺は本当に荒唐無稽なのだが、そんなことはどうでも良
くなるようなスピード感と、いろいろな仕掛けが、思わずニ
ヤリとしてしまえるくらいのものになっている。しかもその
展開が、こちらの予想をかなり越えて進んで行くから本当に
面白いと言えるものだ。
脚本監督は、ジョン・マクティアナンやローランド・ジョフ
ィ監督作品でストーリーボードの製作に関わっていたという
マイクル・デイヴィス。その後に脚本家から監督に転進し、
初期の作品ではサンダンス映画祭の観客賞なども受賞してい
るそうだ。
本作を観る限りでは映画のことはちゃんと判っている監督の
ようで、今後の作品も楽しみになりそうだ。

『サンシャイン・デイズ』
1975年から78年まで神奈川県茅ヶ崎市に実在した「カフェ・
ブレッド&バター」をモティーフにした青春ドラマ。
ブレッド&バターは1969年にデビューし、現在も活躍中の兄
弟デュオの名前。その2人が、当時、茅ヶ崎市の岩倉家の別
宅で1人暮しをしていた岩倉具視の子孫の女性と知り合い、
その別宅に居候を始める。
そこには、さらにミュージシャン仲間などが集まって住むよ
うになり、やがてその邸内の一角にカフェをオープンする。
そしてそのカフェには、さらに多くのミュージシャンやモデ
ル、文化人などが集まり、コミュニティを形作って行くこと
になるが…
このカフェに関する実話は、ブレッド&バターのオフィシャ
ルサイト(http://www.bread-n-butter.net/)中の「わずか
9坪のユートピア」に詳しく紹介されているが、映画は脚色
はされているものの、大きな流れとしては、概ね事実に基づ
いて描かれているようだ。
実は僕自身、隣の平塚市に産まれ育った者だが、その当時に
ブレッド&バターという名前は記憶にあるが、このようなカ
フェがあったことは全く知らなかった。もっとも当時の僕は
すでに社会人だったし、この頃には東京でのSFの活動にも
忙しかったから、地元のことなどは、あまり気にもしていな
かったのかもしれない。
しかし今回、オフィシャルサイトの記事を読んでいて、活動
している場所や内容は違っても、同じようなコミュニティを
自分たちも作っていたということには気がついた。結局、当
時の若者文化というのは、こうしたコミュニティの中で形成
され、それが発信されて行ったということなのだろう。
そういった若者文化が現在はどのような状況にあるのか、こ
の記事を書きながら、ふとそんなことも考えてしまった。
とは言えこの映画は、当時の音楽や若者風俗も満載で、その
点ではノスタルジーに浸ることもできる作品になっている。
また、映画には岩崎家が経営に関った今は無き茅ヶ崎パシフ
ィックホテルの景観も再現され、それも知る人にはノスタル
ジーを掻き立てられるものにもなりそうだ。
出演は、西原亜希、斎藤慶太、三津谷葉子、松田悟志、浅利
陽介。他に、窪塚俊介、大杉漣、黒田福美、峰岸徹、キャシ
ー中島らが共演している。
なおこの作品は、先にtvkで全12回の連続ドラマとして放
送された番組をまとめて編集したもののようだ。

『百万円と苦虫女』
蒼井優主演で、ひょんな事から刑事罰を受けてしまった女性
が、周囲の無理解を避けて流浪の旅をするロードムーヴィ。
主人公の女性はある事情で他人の男性とルームシェアをする
ことになるが、その同居人の態度に腹を立てその荷物を捨て
てしまったことから、器物損壊の罪で刑事告訴を受けてしま
う。そして警察もいろいろ方策は考えてくれたのだが、結局
罰金刑に処せられる。
こうして実家に戻った主人公だったが、親や彼女を前科者と
呼ぶ周囲の住民たちの無理解に耐え切れず、100万円を貯め
たら町を出て行くと宣言。その宣言通り、100万円を貯めた
彼女は町を出て流浪の生活を開始する。
彼女の考えは、まず100万円を貯めること。それがあれば新
しい町で部屋を借り暮らしを始めることができる。そして、
それに掛かった費用の引かれた通帳の残高が再び100万円に
達したら、また旅に出るという計画だ。
こうして最初に辿り着いたのは海辺の町。そこで部屋を借り
た彼女は海の家でアルバイトを開始する。そこには彼女に気
を掛ける若者の男性客などもいて、それなりの暮らしが始ま
るが…
次に彼女が現れたのは、山間の桃農園が並ぶ過疎の村。そこ
で彼女は桃農家に住み込みで収穫を手伝うことになる。とこ
ろが、老人ばかりの村で彼女は外部へのPRのための桃娘に
なることを頼まれる。
3番目に彼女がやって来たのは地方都市。そこで彼女は部屋
を借り、ホームセンターの種苗売り場のアルバイトを見つけ
る。そこには同い年の男の先輩アルバイターがいて、住まい
の近かった2人はやがて互いの部屋を行き来し始める。
ところがその職場に新人の女性アルバイターが配属され、男
は主人公に金を無心するようになって…。これに主人公の弟
との手紙の遣り取りや、その弟が学校でいじめに遭っている
エピソードなどが挿入されて、物語が進んで行く。
作品は、最初に蒼井優の主演で映画を作るという企画があっ
て、それから物語が作られたようだ。従って、主人公の女性
は蒼井のイメージにピッタリと填っている。その点は蒼井の
ファンにもアピールしそうな作品だ。
それに物語は、意外と細部にも拘わっていて、例えば最初の
前科者にされてしまうエピソードでは、警察側の説明にも納
得できて面白かったものだ。
蒼井以外の出演者は、森山未来、ピエール瀧、竹財輝之介、
齊藤隆成。他に、笹野高史、嶋田久作、モロ師岡、佐々木す
みえらが共演している。
脚本監督は、昨年の映画『さくらん』の脚本を手掛けたタナ
ダユキ。女性監督が、女性らしい感性で作り上げられた作品
でもある。

『あの日の指輪を待つきみへ』“Closing the Ring”
シャーリー・マクレーン主演、リチャード・アッテンボロー
監督で、戦争に翻弄された男女を描いた作品。
物語の背景は、50年の歳月を挟む1941年と1991年。41年はい
うまでもなく太平洋戦争勃発の直前であり、91年は北アイル
ランドがまだ紛争の真っ只中という頃のことだ。
その1991年、北アイルランドの首府ベルファストを望む山の
山腹を1人の男性が発掘している。そこには第2次大戦中に
アメリカ軍の爆撃機が墜落したのだという。そして、そこで
発見された1個の指輪に彫られた刻印から、1人のアメリカ
女性の所在が判明する。
一方、1941年のアメリカでは、3人の男性と1人の女性が交
際していたが、彼女の心はその内の1人に定まっているよう
だった。
そして1991年のアメリカで、その女性は夫の葬儀に出席して
いる。しかし、あまり悲しそうなそぶりを見せない女性の態
度に実の娘が苛立ちを隠せないでいる。そしてそこには、昔
の仲間の1人だった男性の姿もあった。
こうして50年の歳月を挟んだ壮大なドラマが展開される。そ
こには戦争によって翻弄される男女の姿があり、また紛争に
よって追いつめられた若者の姿もあった。
日本人としては、日米の開戦が報じられるシーンには感慨を
持つが、直接それがテーマとなる物語ではない。しかしその
戦争によって人々の心が踏みにじられて行く。それは、闘い
の場所がどこであっても関係ないことだ。
映画はこれらの物語を、実に巧みな構成で描き出して行く。
しかも、そこにはいろいろな謎が存在し、その謎が徐々に解
き明かされて行く。その謎は、過去や現在のいろいろな事象
に関るものであり、その謎解きの答えにも心にしみるものが
あった。
また航空機ファンには、山腹から発掘される品々にも興味を
曳かれるかも知れない。とにかくいろいろな要素が盛り込ま
れた作品だ。
因に、北アイルランド紛争は2005年に終結宣言が出されてい
るが、一部強行派は今でも闘争を続けているようだ。しかし
現状は、この映画に描かれたようなものではないようで、物
語はあくまでも1991年の話となっているものだ。
マクレーン以外の出演者は、クリストファー・プラマーと、
テレビシリーズ“The O.C.”が評判のミーシャ・バートン。
他に、ネーヴ・キャンベル、イギリスのピート・ポスルスウ
ェイト、ブレンダ・フリッカーらが共演している。

『シークレット・サンシャイン』“밀양=密陽”
夫と死別し、幼い息子と共に夫の故郷に引っ越してきた女性
の物語。そこで女性はピアノ教室を開き、夫の遺産で不動産
投資を始めようとしているようだったが…やがて彼女を悲劇
が襲う。
その悲劇で苛まれた心を癒すために彼女はキリスト教に帰依
し、悲劇の基となった犯罪者を許せるようにまでなる。とこ
ろがそれは、彼女に更なる苦渋を与えることになる。
韓国は、いろいろな意味で宗教の強い国だと感じているが、
その韓国映画でのこの宗教の扱いは、無神論者の自分として
はちょっと小気味よくも感じられたところだ。それくらいに
宗教に対して厳しく描いた作品でもある。
もっともこの作品は1980年代に発表された原作小説に基づく
もので、その背景には光州事件にからむ事実があるそうだ。
その辺のことは僕にはよく判らないが、いずれにしても宗教
のいい加減さみたいなものは明白に感じられる作品だった。
ただし物語は、それにもめげずに生き抜いて行く女性と、そ
れを見守る男性を描いている。そしてそこには、「大切なも
のは身近にある」というメッセージが込められていると言う
ことだが…。監督は必ずしもそうとは捉えていないようだ。
つまりこの物語は、メロドラマのようで実はそうではない。
その辺の微妙なところが、見事なドラマを作り上げている作
品だ。そしてそれは、人が人生を生き抜く上での人間の本質
にも迫るものになっている。
従って登場する男女は、必ずしもラヴストーリーを演じるも
のではなく、それぞれの生き方を代表しているものだ。
監督は、2002年『オアシス』が鮮烈な印象を残すイ・チャン
ドン。実は監督は、その後にノ・ムヒョン政権下で文化観光
部長官の要職にあったりして、映画作品はそれ以来の5年ぶ
りとなっている。
主演は、『ユア・マイ・サンシャイン』などのチョン・ドヨ
ン。本作ではカンヌの主演女優賞を受賞している。共演は、
『殺人者の追憶』『グエムル』などのソン・ガンホ。その他
の共演者には、地元の劇団の俳優や素人の人たちが起用され
ているそうだ。
そしてその地元は、実在する「密陽」という韓国南部の地方
都市。実は、原作小説の「虫の物語」には場所は特定されて
いないそうで、映画化に当ってその地名のイメージでこの場
所が選ばれたそうだが、その地方都市の雰囲気が地元の俳優
たちによって見事に再現されている。


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井口健二