※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは記者会見の報告から。 3月3日に『魔法にかけられて』のジャパン・プレミアに 伴う記者会見が行われ、ケヴィン・リマ監督、作曲アラン・ メンケン、そして弁護士役で出演パトリック・デンプシーの 話を聞くことができた。正直に言ってこの顔触れでは、自分 の専門分野としてはあまり聞くことはなかったのだが、質問 が途切れそうになったので手を挙げた。その質問内容は、大 ベテラン作曲家のメンケンを前にして、リマ監督がどのよう なコラボレーションをしたのかというものだったが… その答えでは、意外なことに監督が参加した時点ではまだ 物語のコンセプトがあるだけで、音楽は作られていなかった のだそうだ。そこから監督と作曲家の話し合いによって音楽 も作られて行ったとのこと。しかもメンケンからは、「監督 は最初の話し合いの時にすでに楽曲の題名も考えていて、こ んな熱心な監督は珍しいと思った」という発言も出てきた。 さらに今回歌の無かったデンプシーからも、続編には自分用 の歌も作って欲しいという要望も飛び出すなど、かなり熱心 に答えてもらえた。 というのが僕の質問に対する反応だったが、監督の参加時 点で音楽がなかったというのは意外だったし、また、ここで 続編の話題が聞けたことは、このページの主旨としても嬉し かった。その続編が実現するかどうかはまだ不明だが、メン ケンの様子は満更でもない感じで、海外での興行成績も順調 のようでもあるし、これは期待して待ちたいところだ。 以下は、いつもの製作ニュースを紹介しよう。 * * まずは、海外では昨年後期に公開された“Youth Without Youth”で、公式には1997年の『レインメーカー』以来10年 ぶりの監督に復帰したフランシス・フォード・コッポラが、 オスカー助演賞を受賞したハヴィエル・バルデムを主演に迎 えて、“Tetro”という新作の撮影を3月31日に開始する。 内容は、ブエノスアイレスを舞台にした「悲劇と裏切りで 損われた家族の物語」とされており、コッポラの自伝的な要 素も含まれているとのことだ。ただし、完全な自伝ではない としている。 コッポラ家の悲劇というと、家族の死などいろいろ想像で きるものもあるが、裏切りの部分は…、いろいろ話題になり そうだ。共演は、ヴィンセント・ギャロ、それに『パンズ・ ラビリンス』などのマリベル・ヴェルドゥ。バルデムがコッ ポラを演じるとして、ギャロは息子かニコラス・ケイジ? ヴェルドゥは夫人か、それともソフィアなのだろうか。 なお、ギャロの起用に関しては、「意外と感じる人もいる と思うが、そういう人たちを驚かせるようなものをお見せす る」と、コッポラは語っている。 因に、コッポラの監督復帰を「公式には」と書いたのは、 2000年のSF映画『スーパーノヴァ』があるためだが、この 作品ではウォルター・ヒルの降板の後、コッポラは編集のみ 担当したというのが定説のようだ。 また、前作の“Youth Without Youth”は、ティム・ロス 主演で、第2次世界大戦前のヨーロッパを舞台にした生命の 神秘に関わる物語とのこと。10月20日に開催されたローマ国 際映画祭でワールドプレミアされている。難解という評価が 多いが、かなり幻想的なシーンも登場する作品のようだ。 * * お次は、『レミーのおいしいレストラン』でオスカー長編 アニメーション賞を受賞したブラッド・バード監督が、次回 作では、ピクサー/ディズニーとワーナーの共同製作による 実写作品に挑戦する計画を発表した。 作品は“1906”と題されたもので、内容は、現代の大学生 の主人公が自分の父親が殺された事件の捜査を続ける内に、 1906年のサンフランシスコ大地震に関る謎に突き当たるとい うもの。ジョン・ローガンのオリジナル脚本から、バード監 督がリライト中とされているが、『スウィーニー・トッド』 や『ラスト・サムライ』の脚本家の作品には興味を引かれる ところだ。 なお、ピクサー社の実写映画進出は以前から噂があったも のだが、ディズニーとの合併でその計画は消えたと思われて いたようだ。しかし今回の計画でそれが実現することになる もので、今後の進展も注目されている。また、今回の製作に 共同で参加しているワーナーの存在も気になるものだ。 * * 一方、ディズニー製作で進められるマペット・ムーヴィの 新作には、4月18日に全米公開される“Forgetting Sarah Marshall”というコメディ作品が話題の俳優兼脚本家ジェイ スン・シーゲルと、脚本家兼監督ニック・ストーラーのコン ビの起用が発表された。 この2人は、2月3日付の『燃えよ!ピンポン』の紹介に 登場した昨年の全米ヒット作“Knocked Up”などのジャド・ アプトウ監督門下生ということだが、新作“Forgetting…” では、別れた恋人が人気女優になって未練たらたらの売れな い脚本家を主人公にしており、実はその主人公が映画の中で 執筆中とされる脚本が、人形劇で演じられる“Dracula”の ミュージカル版という設定なのだそうだ。 ところが、その人形劇シーンを映画ではジム・ヘンスンの マペッツに演じて貰ったところ、そのアイデアを気に入った マペッツ側が反応し、シーゲルにそれを現実の脚本にするこ とが依頼されたというものだ。そしてシーゲルからはストー ルの協力を要望して企画が実現されることになった。吸血鬼 物と言っても、そこからの物語がどんな捻りになるかは判ら ないが、取り敢えずはシーゲルとストールによる脚本の執筆 が進められることになるようだ。 なお2人のコンビでは、次回作“Five-Year Engagement” も含めて、今までの作品は常にシーゲル主演とストール監督 で行われてきたようだが、今回はさすがに主演はマペッツで シーゲルは脚本のみ、ただしストールは監督も担当すること になっている。因に“Forgetting…”はユニヴァーサル作品 で、そこからディズニー作品が誕生するというのも面白いと ころだ。 * * 続いて、前回“Black Hole”という計画を紹介したデイヴ ィッド・フィンチャー監督の新たな計画として、パラマウン トで進められているアニメーション作品“Heavy Metal”の 製作に参加することが発表された。 作品は、1981年と2000年に製作された作品と同様、1977年 に創刊された同名の雑誌のコンセプトに沿った複数の短編の オムニバスになるもので、フィンチャーにはその内の1本の 監督が予定されている。 他には、『TMNTニンジャ・タートルズ』のオリジナル のクリエーターで、現在はHeavy Metalの出版社のオーナー でもあるケヴィン・イーストマンと、さらにアニメーション の製作を担当するブルー・スタジオ主宰のティム・ミラーが 参加、フィンチャーを含めた3人は製作も務める。 短編は全部で8〜9本が予定され、その他の監督は近日中 に発表の予定だそうだ。フィンチャーは前回紹介の実写作品 と並行しての監督になるかもしれない。 なお、Heavy Metalの関連では、2003年8月1日付第44回 に脚本家フランク・ダラボンの関る企画を紹介しているが、 今回の計画はそれとは別のものようだ。 * * 一方、フィンチャーの関連で、2005年7月15日付第91回な どで紹介してきたアーサー・C・クラーク原作“Rendezvous with Rama”(宇宙のランデブー)について、突然動きが出 てきているようだ。 これは今回、上記の記事に関連してフィンチャーの情報を 検索をしていて気がついたものだが、信頼を置いている映画 データベースのIMDbに、2月23日付の更新で製作情報が掲載 になっている。 その情報によると、監督フィンチャー、主演モーガン・フ リーマンと、製作会社のパラマウントは以前の情報と変わら ず、製作状況は原作を脚色中というものだ。またその脚本家 には、2001年のテレビ・ミニシリーズ『バンド・オブ・ブラ ザース』などのブルース・C・マッケナ、2002年12月に紹介 した『ケミカル51』などのステル・パヴローの他、アンド リュー・カーン、スコット・ブリックという名前が挙がって おり、ブリックが現在の脚色を進めているようだ。 またこの企画は、元々フリーマンが権利を獲得して、長年 映画化を目指しているものだが、そのフリーマンが主宰する プロダクションRevelations Entertainmentのオフィシャル サイトでも、トップページに1番大きなイラストが掲載され るようになっており、これはかなり確度が高そうだ。 物語の舞台は、2130年の未来。人類はもはや宇宙唯一の知 的生命かと思われていた時代。そんな人類の住む太陽系に、 突然直径20km、長さ50kmという巨大なシリンダー状の人工物 が進入してくる。そしてその調査に向かった主人公たちは… 原作は、1973年に出版されてヒューゴー/ネビュラの2大 SF賞を同時受賞した名作として知られるが、1973年という と、映画『2001年宇宙の旅』の公開から5年後のことで あり、クラークが必ずしも思い通りに行かなかったとも言わ れる『2001年』の物語を、自分なりに再話した作品とも 言えそうなものだ。因に、『2001年』の続編の“2010: Odyssey Two”はさらに9年後の1982年に発表される。 そしてこの作品の映画化に関しては、かなり以前から期待 されていたものだが、実は、今年1月発行のある映画雑誌に 掲載された「実現しない映画企画ベスト10」の1本としても 紹介されていたもので、その時には、製作費が1億ドル以上 になるのが問題とされていたようだった。しかしその記事で も、今のVFX技術ならそこまではかからないはずとの指摘 もされており、その記事が今回の動きを後押しした可能性は ありそうだ。 ただし、IMDbの記事では2009年公開予定となっているが、 上記の企画と併せると、フィンチャーが今すぐに取り掛かる のはちょっと難しそうだ。しかしここまで勢いが出てきたの なら、このまま実現に向かうことを期待したい。また原作に は、第4部までの続編も発表されているものだ。 * * 『ポセイドン』などのウォルフガング・ペーターゼン監督 が、コロムビア製作のSFスリラー“Uprising”の監督を契 約したことが発表された。 作品は、強力なエイリアンに占領された地球を舞台に、レ ジスタンスを繰り広げる地球人たちの姿を描くというもの。 脚本は、2001年『光の旅人』や一昨年の『ブラッド・ダイア モンド』などを手掛けたチャールス・リーヴィットが執筆し ており、2001年作品の感じからするとSFへの理解度も高そ うで、楽しみな作品になりそうだ。 一方、ペーターゼンは、『トロイ』『パーフェクト・スト ーム』など最近ではワーナーでの仕事が多かったが、元々の 『Uボート』や『ザ・シークレット・サービス』の頃はコロ ムビアだったもので、ハリウッド進出を果たした当時の古巣 に戻ったことになる。 そして、そのコロムビアの首脳からは、「本作は、アクシ ョンとサスペンス、それにドラマがミックスされた作品で、 正にペーターゼンのための作品だ」との期待が表明されてい た。製作は、『グラディエーター』などのルーシー・フィッ シャーが担当する。 * * 『アンダーワールド』シリーズなどを手掛けるレン・ワイ ズマン監督が、コロムビア製作で“Shell Game”と題された SFスリラーを監督することを発表した。 作品の内容は、不老不死を扱う危険なブラックマーケット の捜査を進めていた刑事が、モラル上のディレンマに陥ると いうもの。それ以上の詳しい情報はないが、ジャスティ・ボ ンディとアンドリュー・ルディントンによるオリジナル脚本 から、ワイズマンと2004年の『セルラー』などを手掛けたク リス・モーガンがリライトを行ったとのことだ。 実はワイズマンは、この企画を5年も前から温めてきた。 しかし製作規模が大きく、製作費も多額になると予想される 作品の製作にはなかなか乗り出せないでいた。ところが昨年 『ダイ・ハード4.0』を手掛け、同シリーズで最高の興行成 績を達成した監督に、漸くその規模の作品を製作できる状況 が整ったとのことで、ついに実現に向かって動き出したもの だ。 発表された内容を読むと、『ブレード・ランナー』にも似 た作品の印象を受けるが、そこに相当額の製作費が注ぎ込ま れるというのは期待したい。因にワイズマンは、『メン・イ ン・ブラック』や『Godzilla』なども手掛けた視覚効果用の 美術スタッフ出身で、『アンダーワールド』でもその美学は 表現されているが、今回はその究極の映像が観られそうだ。 具体的な製作時期は未定だが、発表はワイズマンの次回作 として行われている。 * * 未来アクションスリラーと称されている“Doomsday”が、 3月14日にフォーカス映画社のジャンル部門ローグから全米 公開されたニール・マーシャル監督の次回作として、同じく ローグの製作で昔の西部を舞台にした“Sacrilege”という ホラー映画の計画が発表されている。 物語は、西部劇としても華やかなゴールドラッシュ時代を 背景にしたものだが、この時代は、その一方でDonner Party 事件など悲惨な出来事にも象徴される暗黒の時代でもあった とのこと。本作はその暗黒面を描いた「歴史ホラー映画」に なるそうだ。 因にイギリス出身のマーシャル監督は、幼少時からホラー 映画もその他の映画も同等に観て育ってきたとのことで、そ れらのジャンルを融合した作品を作ることが夢だったとして いる。そして本作に関しては、アメリカの怪奇作家H・P・ ラヴクラフトが描く『許されざる者』とも称しており、さら に監督は、「私は火種となるものを常にいくつか内に持って いるが、この作品はその中でも最も長く自分の心を虜にして きた」として、映画化に意欲を燃やしているものだ。 製作時期は未定だが、マーシャルはただちに撮影台本の執 筆に取り掛かるとのことだ。 * * またまたコミックスの映画化で、ヴァリアントコミックス というところから出版された“Harbinger”というシリーズ の権利をパラマウントが獲得し、ブレット・ラトナー監督で 実写映画化を進める計画が発表された。 内容は、特殊な能力の発現した「先駆者」と呼ばれる若者 たちを主人公にしたもの。その能力は、「オメガ」と呼ばれ る者たちによって発現させられるが、そこには悪人も存在し ている。そしてその悪人は、特殊能力を使って巨大企業を作 り上げたりもしている…という展開になるようだ。 因に、1992年にクリエーターのジム・シューターによって スタートされたシリーズは、2005年に選出された「1990年代 に誕生した最も重要なコミック10作」の中でNo.1にも選ばれ た作品とのことで、かなりの期待作になりそうだ。また作品 には、若者を主人公にした『ブレード・ランナー』という呼 び方もされていた。 その映画化がラトナーに任される訳だが、ラトナーは言う までもなく『X-men3』の監督も手掛けた人であり、彼自身 がそれに続くスーパーヒーロー物のシリーズ作品を探してい たところに、今回の企画が提案されたということのようだ。 とは言え、前作と同じような超能力者集団を描く作品に、ラ トナーがどのような手腕を見せるかにも注目が集まる。 ただしラトナー自身には、以前に紹介した“Playboy”な どの企画も目白押しになっているものだが、今回の計画では それらの作品を進めている間に、脚本家が脚本を完成させる ことなっている。従って実現までには多少時間が掛かりそう だが、いずれにしても面白い作品を期待したい。 それにしても、最近のテレビや映画でも超能力者の集団の 登場する作品が目立つ感じだが、これは一体どうした訳なの だろう。因に本作で、悪人の「オメガ」は日本人という設定 のようだ。 * * もう1本、こちらはグラフィック・ノヴェルの映画化で、 アメリカで活躍する日本人作家・イラストレーターのカズ・ キブイシ原作による“Amulet”というシリーズの権利をワー ナーが獲得し、アキヴァ・ゴールズマン主宰ウィードロード と、ウィル・スミス主宰オーヴァブルックの製作で映画化す ると発表した。 物語は、父親を亡くした兄妹が、曽祖父の遺産の家に引っ 越すが、そこで母親が地下世界から現れた獣に連れ去られ、 母親を救出するための冒険を始めなくてはならなくなるとい うもの。そしてこの映画化では、『幸せのちから』に出演し たジェイダン・スミスと、『アイ・アム・レジェンド』に出 演のウィロー・スミスの兄妹が主演するとのことだ。 この2人は言うまでもなくウィル・スミスの子供たちで、 共に父親との共演で映画デビューは果たしているものだが、 ジェイダンはその後にフォックス製作“The Day the Earth Stood Still”に出演。またウィローも、ピクチャーハウス 製作で6月公開される“Kit Kittredge: An American Girl Mystery”という作品に出演しているとのことだ。そして今 回はその兄妹の共演となるものだが、このままでは、映画の 内容よりそちらの方が話題になってしまいそうだ。 しかし我々としては、原作者が日本人であることにも注目 したいところで、紹介されているイラストを見ると、かなり 日本のマンガ的な作風でもあるようだが、それがどのように 実写映画化されていくかにも興味が湧くところだ。なお原作 は、全5巻が予定されているもので、その第1巻が今年1月 に出版され、第2巻も今年中に刊行予定。第1作の映画化が どこまでを描くかは不明だが、シリーズ化は間違いなく行わ れるものだ。 * * 最後は、続報をまとめて紹介しておおこう。 まずは、今年11月に公開予定の『ハリー・ポッターと謎の プリンス』に続くシリーズの最終巻“Harry Potter and the Deathly Hallows”は、当初2010年11月公開が予定されてい たものだが、さらにこの最終巻を2部作で製作し、その本当 の最後の映画は、2011年5月に公開する計画が発表された。 元々このシリーズの原作本はいずれもかなりのヴォリューム で、今までの映画化でも割愛されたエピソードは数多いが、 最終巻では多少緩和されることになりそうだ。なお監督は、 『不死鳥の騎士団』以降はデイヴィッド・イェーツが最終話 まで担当する。 続いて、当初は今年8月15日に予定されていた鳥山明原作 “Dragonball”の公開が、2009年4月3日に延期されること になった。その理由は明らかにされていないが、今年の夏に はワーナーが『マッハGo!Go!Go!』の公開も行うことから、 同じ日本アニメからの映画化作品の重なることを避けた可能 性はありそうだ。いずれにしても、4月上旬というのも興行 的に悪い時期ではないし、封切りに迫られて拙速な作品が作 られるよりは、たっぷり時間を掛けて納得の行く作品を作り 上げて欲しいものだ。 最後の最後に、アーサー・C・クラークの訃報が届いてし まった。今回は記事を書いていたところであり、個人的にも 多少関りがあったのでショックが大きいが、今はご冥福を祈 りたい。(3月20日追記)
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