井口健二のOn the Production
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2008年02月10日(日) バンテージ・ポイント、カフェ代官山、愛おしき隣人、告発のとき、ラフマニノフ、ねこのひげ、恋の罠、チェスト!

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『バンテージ・ポイント』“Vantage Point”
アメリカ大統領暗殺をメインテーマにしたパズル的な要素も
あるアクション作品。
物語の舞台は、スペインの古都サラマンカ。ここで、アラブ
諸国と西欧の首脳が一同に会する歴史的な外交会議が開催さ
れようとしていた。その会議に先立ち、市の中心の建物に囲
まれた広場では、アメリカ大統領が市民への挨拶を行うこと
になっていた。
その模様を生中継で追うテレビ中継車。その中では、女性の
ディレクターがてきぱきと指示を出し、大統領の到着やデモ
隊の様子、市長の歓迎の挨拶などが順調に放送される。そし
て大統領が演壇に立ったとき、1発の銃声が鳴り響き大統領
が倒れる。
シークレットサーヴィスのバーンズは、以前の任務で大統領
への銃撃を身を挺して阻止し重傷を負い、その日が任務への
復帰の日だった。そして大統領が演壇に立つ直前、彼は一つ
の窓に不審な動きを見るが…
地元警察の刑事エンリケは、市長の警護のためにその広場を
訪れた。しかし彼がその広場を訪れたのには別の理由もあっ
た。そして彼の目の前で大統領が銃撃され、市長に駆け寄ろ
うとしたエンリケはバーンズに取り押さえられる。
このような全部で8つの視点からの物語が順番に展開されて
行く。しかもそれぞれの物語は11時59分を起点に、一々その
時点に戻って物語が繰り返して提示されて行くことになる。
このように複数の視点から物語を描いて行く手法は最近の流
行のようでもあるが、トリッキーな展開は、時に観客の理解
力などが試されることにもなる。しかし本作ではそのような
心配もなくストレートに物語を楽しめる。その作り方が特に
巧みに感じられた。
それに本作では、後半には見事なカーチェイスを含む大アク
ションも展開されるのだが、前半のトリッキーな展開からそ
こに持って行く過程の描き方も見事。また居合わせた旅行者
や地元の少女など、偶然の関係者を描く臨場感にも素晴らし
いものがあった。
出演は、テレビディレクターにシガーニー・ウィーヴァー、
バーンズにデニス・クウェイド、エンリケに2003年4月に紹
介した『ノボ/NOVO』のエドゥアルド・ノリエガ、大統
領にウィリアム・ハート、居合わせる旅行者にフォレスト・
ウィティカーなど。
製作は、『ワイルド・スピード』『トリプルX』から『アイ
・アム・レジェンド』まで手掛けるアクション専科のニール
・H・モリッツ。
なお、脚本のバリー・レヴィと、監督のピート・トラヴィス
は共に映画界では新人のようだが、編集を、2006年『カジノ
・ロワイヤル』などのステュアート・ベアードが手掛けてお
り、本作のキーポイントはこの辺にもありそうだ。

『カフェ代官山』
昨年3月に紹介した『きみにしか聞こえない』などの金杉弘
子脚本によるイケメン映画。
同じ脚本家の作品では、『スキトモ』と『そして春風にささ
やいて』も紹介しているが、最近のこの手の日本映画の中で
はそれなりに信頼できる作家だと注目している。特に『きみ
にしか…』の脚本は、SFとしての出来も良く僕は高く評価
しているものだ。
その金杉脚本による本作の物語は、亡き父親の跡を継ぐため
パティシエを志す青年が、父の盟友だったパティシエのいる
代官山のカフェを訪ね、修業を始めようとするというもの。
ところが、そのカフェは3人の若者が仕切っていて、肝心の
マスターは旅行に出たまま店にはいない。
そこで、「マスターがいないなら」と帰ろうとした青年は、
何故か店に引き留められる。そして何かと意味の無いターン
をするリーダーと、サーディンというミドルネームを持つパ
ティシエと、琴で占いをするウェイターと共に、その店で働
くことになる。
しかし青年には、彼ら3人の店での行動が理解できない。一
方、その店は日々常連客で賑わっているが、その客たちにも
それぞれ人生がある。そんな客たちや3人の仲間との交流の
中で、青年は成長して行く。
出演は、『スキトモ』『そして…』にも出ていた相葉弘樹、
それに大河元気、桐山漣、馬場徹という舞台版『テニスの王
子様』のメムバーたち。と言うことは、まあそれが目当ての
ファン層にはそれで充分というところなのかな。
物語も、『スキトモ』と同様、少女マンガ的な要素満載で、
50代後半のおじさんには理解し難い部分も多いが、少女コミ
ック〜レディスコミックのファン層には、これで充分と言え
るものなのかもしれない。
でも1本の映画としてみると如何せん話が甘すぎる。それに
今回は監督の演出力が弱い感じもして、全体的に何か中途半
端にも感じられた。本来ならもう少し締まりのある話になる
のだろうが、その辺が物足りなくも感じられたところだ。
それぞれのエピソードを細切れではなく、もう少し掘り下げ
て描いて欲しかった。そうすればもう少し何かが見えてきた
ような気がする。

とは言え、上に書いた条件の許ではこれでも充分なのかな。
その辺は僕には判断できないものだ。

『愛おしき隣人』“Du levande”
2003年2月2日付で紹介している『散歩する惑星』のロイ・
アンダースン監督によるそれ以来の新作。
前作同様、いろいろな出来事が脈絡無く提示されているよう
に見える作品。しかし、何人かの特定できる人物が繰り返し
登場するし、音楽が物語を繋いでいたりもする。その全体像
は俄には把握しにくいが、全体として何か微笑ましい物語が
展開しているものだ。
特に音楽は重要な意味を持たされているようで、最初のクラ
シカルな伴奏音楽から、ブラスバンド風、ロック調、あるい
はカントリー風などさまざまな音楽が、現実音であったり伴
奏であったり…さらには激しい雷雨の音響なども登場して、
いろいろな雰囲気を造り出す。
物語も現実と夢が交錯して、特にロックミュージシャンとそ
のファンのエピソードでは、かなり奇想天外な情景も描き出
される。そして最後は、これは正確に提示される訳ではない
が、見方によってはかなり衝撃的な画面で結ばれるものだ。
前作『散歩する惑星』もSF的な要素を含む作品だったが、
本作にもその傾向は見られる。その意味ではSFとしての評
価を下したいところだが、話がかなり巧妙に描かれていて即
断がし難い。
正直には、もう1度見直して自分の頭の中の整理もしたいと
ころだが、監督自身は本作を「人間の置かれた状況に関する
茶番劇」と称しているようで、脈絡の無い物語にはあまりそ
の意味の追求はできないようだ。
描かれるエピソードでは、テーブルクロスを引き抜こうとす
る男の話の中で、引き抜かれたテーブルクロスの下から現れ
るものに衝撃を受けた。この隠された現実?これが監督の描
きたかったテーマの一つであるのかも知れない。
結末を踏まえて敢えてSF的に解釈すれば、この物語の全体
はその全てが登場人物たちの一瞬の夢のようでもある。しか
し、それも僕の勝手な解釈なのだろう。

映画の全体はユーモアに溢れ、観ている間は何か心地よい雰
囲気を感じられる。そして、その感覚は観終えてからも持続
する。この感覚はすばらしいものだ。本作は昨年のカンヌ映
画祭「ある視点部門」で正式上映された。それがピッタリの
感じのする作品だ。

『告発のとき』“In the Valley of Elah”
『ミリオンダラー・ベイビー』『クラッシュ』が2年連続の
アカデミー賞作品賞に輝いた脚本家ポール・ハギスの新作。
ハギスは『クラッシュ』に続いて監督も手掛けている。
『硫黄島からの手紙』『父親たちの星条旗』『007/カジ
ノロヤイヤル』の脚本も手掛けるハギスは、ハリウッドでは
引く手あまたの人材と言える。そのハギスが敢えて次回作に
選んだのは、泥沼化するイラク戦争の現実を厳しく追求する
物語だった。
反戦思想の色も濃いその計画は、当初は政治姿勢を気にする
大手のスタジオからは敬遠されたようだ。しかし、クリント
・イーストウッドが支援を表明し、それによってようやく実
現に漕ぎ着けたとされる。
物語の主人公は、元military policeの退役軍人。その主人
公の許に、イラクの戦場から帰国した彼の息子が一時休暇で
町に出たまま基地に戻ってこないとの連絡が届く。息子の帰
国も知らされていなかった主人公は、不安に駆られその基地
のある町に向かう。
ところが基地での説明は要領を得ず、主人公は地元の警察に
も照会を求める。もちろん地元警察が軍の事件に関ることが
できないのは承知の上だ。そして無惨に焼かれた若者の遺体
が発見され、その犯行現場を巡って軍の警察隊と地元警察の
綱引きが始まる。
そんな中で、主人公は昔とった捜査の勘を発揮して、地元警
察の女性刑事に協力していくことになるが…それはやがて、
恐ろしい現実を彼に突きつけることになる。
現場を見ただけで状況を正確に把握する昔ながらの捜査官で
ある主人公の姿や、その一方で息子の携帯電話に残されてい
た画像データが徐々に復元されていく様子など、新旧の要素
が巧みに組み合わされて真実が明らかにされて行く。
『クラッシュ』は、複数の登場人物によるアンサンブルドラ
マだったが、今回はトミー・リー・ジョーンズの演じる退役
軍人が話の中心。そしてその物語に、シャーリズ・セロン扮
する女性刑事が絶妙に入ってくるもので、その展開のうまさ
にも唸らされた。
ジョーンズ、セロンの他に、スーザン・サランドンが共演。
また、ジェームズ・フランコ、ジェイソン・パトリック、ジ
ョシュ・ブローリンらも登場する。
アメリカ軍が進駐する中東イラクで今何が起きているのか、
エピローグで挙げられる星条旗の意味が深く心に突き刺さる
作品だった。

『ラフマニノフ〜ある愛の調べ〜』“Lilacs”
巻頭でライラックの咲き乱れる小路が描写され、ロシア革命
でアメリカに亡命した天才ピアニストにして作曲家=セルゲ
イ・ラフマニノフの苦悩を描くロシア映画。
1917年にアメリカに亡命したラフマニノフは、ピアノ制作者
のスタンウェイの支援のもと全米を巡る演奏ツアーを行って
大成功を納める。しかし、それによって作曲の時間を奪われ
たラフマニノフは、故国ロシアへの望郷の念と共に精神を乱
して行くことになる。
そんなとき、彼の許に匿名の贈り主からのライラックの花束
が届けられる。それは彼が子供の頃を過ごした家にも咲いて
いたものであり、彼を巡る3人の女性たちとの思い出にも繋
がるものだった。
ラフマニノフの子供時代は、父親が事業に失敗して破産、両
親の離婚など不遇なものだったようだ。しかし彼はピアノの
才能を認められ、音楽で生活していけるようになる。ところ
がそんな彼に1人の年上の女性が近づき、彼の人生は狂わさ
れる。
その年上の女性とはやがて別れるが、次に近づいてきたのは
マルクス主義を信奉する革命闘士の女性。だが、革命を認め
ないラフマニノフは彼女を認めることもできない。そんな彼
を、幼い頃から見詰める女性は別にいたのだが…
正に激動の時代を生きた天才の苦悩を描いた物語。特に始め
に描かれるカーネギーホールでの演奏会のエピソードは、こ
れから描かれる波乱の物語を予感させる。このつかみはうま
くできている感じがした。
その後もアメリカ各地での演奏会の様子は、移動シーンに当
時の鉄道やその他の記録映像を挟むなどして興味を引くよう
に描かれている。また演奏会そのもののシーンもそれなりに
丁寧に再現されていたようだ。
そして物語は、脚色された部分もあるが、大凡のエピソード
は事実に則したものとされており、それはドラマティックな
物語が展開するものだ。
ただ、アメリカのシーンでも台詞がすべてロシア語というの
は我慢するとしても、上映時間が97分と短いためか、劇中の
演奏のシーンがちょっと短いのは残念な気がした。他の作品
でもいろいろ聞かれるラフマニノフ作品とのことだが、失敗
作のシーンは別にしても、もう少し音楽を聞きたかった。

因にラフマニノフは、ドから1オクターブ上のソまで届く巨
大な手の持ち主で、ラフマニノフの和音と呼ばれる特別な奏
法も編み出したそうだ。それを聞いて、昔に観たアメリカの
テレビシリーズにそんなエピソードのあったことを思い出し
た。本作には全く関係のない話だが、そんな影響も残すほど
の人物だったようだ。

『ねこのひげ』
『力道山』や『THE JUON』などにも出演しているバ
イプレーヤーの大城英司が、自らの企画・製作・脚本・主演
で作り上げた作品。
それぞれが離婚あるいは別居して同棲を始めた男女の物語。
女性はキャリアウーマンで子供もいなかったが、男性は2人
の幼い子供を妻の許に残している。そんな男女と、彼らを見
守る周囲の人々の姿が、細かいエピソードの積み上げによっ
て描かれる。
作品は時間の前後が逆転して描かれたり、同じようなシーン
が男女のそれぞれにあったりと、いろいろトリッキーな構成
もされているが、全体的にはちゃんと整理されているという
か、良く練れらていて違和感もなく、気持ち良く観ることの
できる作品だった。
まあ、自分自身がこういう境遇にたち至ることはもはや無い
とは思うが、現実に離婚社会の現代を考えるとありそうな物
語ではあるし、そうなったところでの思いも拠らない事柄が
提示されて、なるほどなと思わされるところも多かった。
そういった意味では、いろいろ勉強にもなる作品だったとも
言えそうだ。実際、離婚が周囲に与える影響の深さなど、今
まで考えもしなかったことが提示されると、それなりに考え
てしまうところも多々あったものだ。
そんな事柄がうまく描かれた作品で、この脚本のどこまでが
実体験に基づいているか知らないが、丁寧な取材というか、
それなりの何かがあったのかなとは思わせる作品だった。つ
まりそれくらいに現実味が感じられた作品ということだ。
共演は、『愛の予感』などの渡辺真起子。他に、仁科貴、蛍
雪次朗、根岸季衣、藤田朋子、川上麻衣子ら現代日本映画の
バイプレーヤーたちが脇を固めている。
監督は、2000年に大城主演の『ある探偵の憂鬱』を自主製作
した矢城潤一。本作も自主製作の作品で、製作は2005年だが
2008年春に一般公開される。
ただ、本作はディジタルヴィデオで撮影され、公開もヴィデ
オで行われるようだが、試写会ではプロジェクターとの相性
もあるのか画質が芳しくなかった。特にハイライトの右側に
影響が出ていたようで、本上映がどうなるかは判らないが、
これはかなり気になった。

『恋の罠』“淫亂書生”(韓国映画)
2003年『スキャンダル』などの脚本家キム・デウによる初監
督作品。『シュリ』『ユゴ』などのハン・ソッキュが主演、
韓国では2週連続の興行第1位を記録、観客動員250万人を
越える大ヒットとなったそうだ。
韓国・李朝を時代背景に、実直と思われていた官吏が淫靡な
小説の戲作者となり、市井を席巻するベストセラーを作り出
す。ところがそれは王妃も巻き込んだ一大スキャンダルへと
発展し、飛んでもない事態を引き起こす。
一応の物語は知った上で試写会に出掛けたが、男性としては
思わずニヤリとする展開の連続で、予想した以上に面白い作
品だった。特に主人公がいろいろ淫乱な考えを捻り出すのが
愉快で、「いやあ、男って根っからスケベなんですね」とい
う感じのものだ。
このスケベ男を、ハンが実に楽しそうに演じているのも嬉し
くなった。共演は、王妃役に子役出身のキム・ミンジョン、
小説の版元役に『親切なクムジャさん』などのオ・ダルス、
さらに個性派俳優のイ・ボムスが挿絵画家を演じている。
主人公が挿絵画家に場面の説明をするシーンでは突然愉快な
VFXが使われたり、一方、かなり激しいアクションや拷問
シーンなども登場して、何しろ見せたいものはとことん追求
されている。
その他、当時の小説の流布の様子なども丁寧に描写され、ま
た李朝の豪華な衣裳や建物、いろいろな風物なども見事に再
現されている。特に提灯などを使った華麗な映像は、かなり
周到な準備の基に作り出されたもののようだ。
とは言うものの、物語は必要以上に重くすることなく、ある
種軽快に描かれている。それはハンのキャラクターによると
ころもありそうだが、正に第1級のエンターテインメントと
いう感じの作品だ。
因に、プレス資料には李朝と日本の春画に関する解説が載せ
られていたが、李朝の春画は日本のものに比べて写実的なの
だそうだ。そんな事実が物語の背景にもあるようで、その真
髄を追求しようとする主人公たちの行動にも頷けるところが
あったものだ。

『チェスト!』
小学生による鹿児島県錦江湾横断遠泳を背景に、訳ありの3
人の少年たちが成長して行く姿を描く。2006年の第8回日本
映画エンジェル大賞受賞企画の映画化。
自分が泳ぎが得意でないせいもあるが、どうもこの手の話は
引いてしまう。特に遠泳などと言われると、ああどうせ根性
・根性の話になるのだろうな、とも思ってしまう。
根性もコメディならなんとか許せるが、小学生の話では精神
論になるのが関の山、と言う先入観も生じるところだ。でも
映画には作りやすいし、作れば教育委員会などが推薦もして
くれそうで、それなりの評価も得やすいのがこの手の作品だ
ろう。
実際、エンジェル大賞は2002年第1回に2005年3月紹介した
『リンダリンダリンダ』が選ばれ、最近では去年10月紹介の
『全然大丈夫』が2004年第4回の受賞作だそうだが、それら
に比べるとずいぶん早く映画化されている。つまりそういう
企画ということだ。
と嫌みをいくつか書いてしまったが、「映画の食わず嫌いは
しない」が僕のコンセプトなので、この作品も観に行った。
で、観た感想はこれが意外と良かった。
まず本作で気に入ったのは、精神論がほとんど出てこない。
実際、この映画の中で精神論はある意味負けている。それで
も主人公たちが遠泳に立ち向かって行く姿が、それなりに子
供の目線でうまく描かれている感じがしたものだ。
そこには、離婚、リストラなどの社会的状況もそれなりに織
り込まれて、大人にも大人なりに理解できる物語になってい
た。まあ、多少くどいところもあるが、子供にも理解しやす
くすればこうなるのも仕方ないだろう。
ただ物語の設定で、3人のうち2人は遠泳に参加できない理
由が明白に描かれているのだが、肝心の主人公の理由があま
り納得できない。カナヅチというのがその理由というが、父
親が漁師でそれはないだろうというのが単純な印象で、ここ
にもう一つ何か明白な理由が欲しかったところではあった。

因に題名は、鹿児島地方で「気合いを入れるときのかけ声」
だそうで、最初は主人公が胸を叩いて使うのでchestの誤用
かとも思ったが、そうではなかったようだ。


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井口健二