井口健二のOn the Production
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2008年01月06日(日) スウィーニー・トッド、俺たちの明日、うた魂♪、魔法にかけられて、奈緒子、胡同の理髪師、L、マイ・ブルーベリー・ナイツ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師』
  “Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street”
ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演のゴールデン
コンビで、1979年のトニー賞受賞ミュージカルを映画化した
作品。
18世紀のロンドンの下町を舞台に、復讐に燃える理髪師と、
彼を助けるパン屋の女主人を巡る物語。この物語について、
以前は実話に基づくという説もあったが、最近は19世紀に発
表された創作が基になっているという説が有力だそうだ。
ロンドン下町のとある建物の2階で理髪店を営む主人公は、
美しい妻と生まれたばかりの娘と共に平穏な暮らしをしてい
た。ところが妻に美しさに目をつけた判事の策略によって彼
は無実の罪で捕えられ、15年の刑を処されてしまう。
そして15年後、刑期を終えた主人公がロンドンに帰ってくる
と、店の在った一帯は荒れ果て、妻子の姿もそこにはなかっ
た。
彼の理髪店の階下にはパン屋があったが、ミートパイが売り
物のその店は、肉の高騰でろくな商品が作れず、店も寂れて
いた。そして店に立ち寄った主人公は、女主人に正体を見破
られるが…彼は自らを判事への復讐を誓ったスウィーニー・
トッドと名告る。
これに、成長した娘や彼女に想いを寄せる若者、さらに『ボ
ラット』のサッシャ・バロン・コーエン扮するライヴァルの
理髪師とその助手などが絡み、世にも恐ろしい復讐劇が展開
する。
アメリカではRレイト、日本での公開もR−15。つまり未成
年者は鑑賞が制限されているものだが、それもうなずける内
容で、『チャーリーとチョコレート工場』の気分で観に行っ
たデップ+バートン・ファンには、かなり強烈な体験になり
そうだ。
でも、バートン監督の作風はこれが本来のものだし、その意
味では元からの監督のファンには納得という感じの作品にな
っている。それに、血の流れがチョコレートに見えないこと
もないが…いやいやこれは間違いなく血の色だ。
その他の共演者は、ヘレナ・ボナム=カーター、アラン・リ
ックマン。それに、『ハリー・ポッター』シリーズに出演の
ティモシー・スポール。さらに脇役陣には、ロンドンの舞台
ミュージカルなどから若手が起用されている。
ボナム=カーターの歌は、『コープス・ブライド』でも披露
されていたが、リックマン、コーエン、それにデップの歌声
は未知だった。でも全員が見事な歌を披露しているもので、
特にデップは、楽曲自体があまり音域を要求されるものでは
なかったとは言え、堂々とした歌いっぷりで映画に納まって
いた。

『俺たちの明日』“우리에게 내일은 없다”
社会の底辺で暮らす2人の若者の物語。
主人公はレンタカー屋の車庫で働き、ビルの地下にあるスタ
ジオに住んで、気晴らしはドラムを叩くこと。そんな主人公
には弟のように保護している若者がいるが、実は以前に主人
公が彼に性的な障害を与え、以来負い目もあって目が離せな
くなっているようだ。
その若者は母親との2人暮らし、母親は彼の父に捨てられて
から宗教に填るなど、精神的に少しおかしくなっている。そ
して若者は、常々銃さえ手に入れば…と思っていたが、風俗
店で働いていたある日、偶然その銃が手に入ってしまう。
日本の映画でも過去にあったような、そんな若者たちの物語
だ。恐らくはこれが映画の生み出し続ける基本のテーマの1
つなのだろうし、こういう映画が連綿と作られているのが映
画の意味というものかも知れない。
どの作品も同じようなことが起き、同じような結末に終始す
るものではあるが、その作られる時代や場所の状況を背負っ
て映画は作られて行く。それは悪いことではないし、映画に
とって必要なもののようにも思える。
監督のノ・ドンソクは、韓国の映画アカデミーで学んだ俊英
で、本作が2作目。当然過去の作品も知っているだろうし、
その中で自分が今作るべき作品を作っているはずだ。その本
作で韓国の若者たちを熱狂させたというのだから、その考え
は正しいことになる。
出演者の中で、弟分を演じたユ・アインは、いわゆるイケ面
俳優として人気急上昇中の若手とのことだが、本作が映画デ
ビュー作。次回作は、日本製のコミックス『アンティーク〜
西洋骨董洋菓子店』の韓国版映画化だそうで、これから日本
でも話題を呼びそうだ。
そして主人公は、監督の第1作にも主演しているキム・ビョ
ンソク。プロフィールが公にされていない謎の俳優とのこと
だが、演技は的確にされていた。その他の脇役も、ほとんど
が監督の友人たちとのことで、そういうスタンスの作品のよ
うだ。
なお、撮影はパナソニックの760pヴィデオカメラで行われた
ようだが、監督インタヴューによると、ソニーのカメラに比
べて色調が淡くフジフィルムのような感じだったそうだ。と
いうことはソニーの色調はコダックなのかな?

『うた魂♪』
12月に主演作『東京少女』を紹介したばかりの夏帆主演で、
全国大会出場を目指す高校コーラス部の活動を描いた作品。
2004年函館港イルミナシオン映画祭・第8回シナリオ大賞を
受賞した脚本「あたしが産卵する日」の映画化。
夏帆が演じるのは、全国大会常連校のコーラス部でソプラノ
のパートリーダーを務める荻野かすみ。自分の歌声と容姿に
異常なくらいに自信を持ち、性格も自己中心的で、カメラが
趣味の生徒会長とも相思相愛と思い込んでいる。
そんなかすみは、実は周囲からは多少煙たがられているのだ
が、そんなことは全く意に介していない。ところがある日、
生徒会新聞に掲載された歌っているかすみの写真が、産卵中
の鮭の表情に似ていたことから、一気に自信を喪失してしま
うことになる。
これに、ガレッジセールのゴリが率いるヤンキー風の高校コ
ーラス部や、薬師丸ひろ子が扮する合唱部顧問(産休代員)
などが絡んで、青春を謳歌する物語が展開する。
2008年は「合唱」の年になるようで、すでにママさんコーラ
スが登場する『歓喜の歌』を紹介しているが、今度は高校コ
ーラス部の物語となった。
ここで同じような題材の作品が並ぶということには、多少の
危惧も感じてしまうところだが、内容的には、『歓喜の歌』
は舞台裏のすったもんだを描いているのに対して、本作は純
粋にコーラスで歌うことの喜びを描いたもので、その方向性
には違いがあるものだ。
実際に本作では、コーラス部員の発声訓練の様子や、コーラ
スを合わせていく過程なども描かれており、それだけコーラ
スが中心に据えられた作品であることがよく判る。
と言っても、それがコーラスのシーンになると、その画面か
ら受け取られる感動はいずれも同じようなものになってしま
うのだが…それを繰り返し感じたい思うのであれば、どちら
も観れば堪能できるという作品だ。
映画では夏帆たちのコーラスも見事だったが、ゴリたちの歌
う尾崎豊には異様な迫力があった。因に、夏帆たちのコーラ
ス部の指導はオペラ系の王真紀、ゴリたちの指導はゴスペル
系の吉田英樹が担当して、それぞれ実際に出演者たちが歌声
を披露しているそうだ。
また、審査員の役で男性コーラスグループのゴスペラーズが
登場し、夏帆たちが最後に歌うコーラスでは彼らの新曲が使
用されている。そして、映画の中では薬師丸も久しぶりに歌
声を披露している。
実は、娘が社会人のコーラスグループに参加していて、先日
もそのコンサートを見に行ったのだが、コーラスの迫力とい
うのは特別な感動を呼ぶもので、その感動がこの映画では特
に上手く表現されているように感じられた。

『魔法にかけられて』“Encanted”
ディズニーが、『白雪姫』や『眠れる森の美女』などの正統
派プリンセスを久しぶりに生み出したと言われる作品。最近
のディズニー映画でオープニングロゴとなっているお城が発
端の舞台となっている物語。
その城を支配する女王は、長年自分の地位が脅かされるのを
心配している。そして義理の息子である王子に運命の花嫁が
現れないようにしていたのだが、ある日、王子は森の中で動
物たちと一緒に暮らす女性ジゼルと出会ってしまう。
そして王子の求愛を受け、動物たちと手作りしたドレスで城
に向かったジゼルだったが…。そこで待ち受けていた女王の
策略に填って遠い世界へと飛ばされてしまう。そのジゼルが
辿り着いたのは、何と現実のニューヨークだった。
この最初の城の建つ世界(アンダレーシア)がアニメーショ
ンで表現され、ニューヨークに到着してからは実写で物語が
進行する。
ところが、この実写ではエイミー・アダムスが演じるジゼル
が、現実世界の中でも、まるでアニメーションの世界のよう
に「真実の愛」について歌ったり、踊ったりするものだから
話がややこしくなる。
しかも現実世界で彼女を助けるのが、自身もバツ1の離婚専
門弁護士なのだから、いくら「真実の愛」だといっても信じ
てくれるはずもない。そこに彼女の後を追って来た王子や、
さらに女王の手先までもがニューヨークに現れて…
共演者は、王子役に『X−メン』でサイクロプス役のジェー
ムズ・マースデン、弁護士役にテレビ『グレイズ・アナトミ
ー』などのパトリック・デムプシー、さらに、スーザン・サ
ランドン、『スウィーニー・トッド』にも出ていたティモシ
ー・スポールらが登場する。
カルチャー間のギャップというか、ディズニーが普段アニメ
ーションで追求している世界感を全部覆すのだから、これは
思い切ったことをしてくれた作品だ。でも最後には、ちゃん
と修復が在るのもディズニーらしいというところだろう。
なお映画は、『白雪姫』『シンデレラ』などへのオマージュ
やパロディも満載で、そんなものを探しながら観ているだけ
でも充分に楽しめる。その他、ジゼルがセントラルパークで
歌うシーンは『サウンド・オブ・ミュージック』だったり、
ディズニー以外のシーンも次々登場する。もちろんお子様向
け、でも大人は大人の楽しみ方もある作品だ。

『奈緒子』
「ビッグコミック・スピリッツ」に連載された同名原作の映
画化。
長崎県の離島の高校を舞台に、駅伝県代表の座を目指す陸上
部員たちが厳しい夏の合宿訓練に励む姿が描かれる。そして
そこには、小学校の頃に喘息療養のためにその島を訪れ、そ
の後は東京に戻っていた同年代の少女の姿もあった。
駅伝の国際名称はroad relayなのだそうだが、元々が日本発
祥の競技ということで、海外でもekidenのローマ字書きで通
用するそうだ。
その駅伝競走の距離、区間などは大会ごとに任意に決めてよ
いそうだが、本作の背景となる高校駅伝男子は、フルマラソ
ンと同じ42.195kmを7区間に分け、それぞれの距離は10km、
3km、8.1075km、8.0875km、3km、5km、3kmとなっている。
つまり、各選手が走る距離は10km〜3kmと幅がある訳で、こ
れにそれぞれの選手の特質や力量などに合わせて、出場メム
バーや走る順番などのチーム構成を決める面白さもある。そ
こにも駅伝のドラマが存在するものだ。
その辺のドラマについて、多分原作ではもっと克明に描かれ
ていると思われるが、映画ではその辺が省略されたのは残念
なところだ。でもまあ、2時間の上映時間ではそれも仕方が
ない。映画の中でそれなりに新人の抜擢などが描かれていた
のは、その片鱗とも言えるのだろう。
物語は、少女が過去の来島中に海に転落した事故が背景にな
る。それによって過去を引き摺らなくてはならなくなった少
女と、やはりその事故の影響を受けた陸上部のエースの再生
の物語が描かれる。それは駅伝の襷を繋ぐことの意味と重ね
合わされるが…
確かに最後に皆が繋がるということは描かれているが、それ
がレースの結果であったり、コーチの病気であったり、いろ
いろな要素で形成されるから、何か肝心なところが暈けてし
まった感じも持つ。昔のスポ根物の域を出ていない感じがし
たのは、その辺りにも原因がありそうだ。
とは言え、主演の上野樹里と三浦春馬が揃っていれば、そん
なことは別段問題にもされないのだろう。この他にも、ライ
ヴァル校を含む駅伝のメムバーとして、今が旬と言えそうな
若手俳優が大挙出演している。
最近のこの種の作品にはお決まりのようなオカマキャラも出
てこないし、あまりオチャラケることもなくスポ根物が描か
れているということでは、今の時期に作られるのも良いとい
う感じの作品と言えそうだ。

『胡同の理髪師』“剃頭匠”
北京の紫禁城も望める胡同(フートンと読み、路地の意味だ
そうだ)の古い住宅に1人で暮らす93歳の老人。毎朝6時に
起床し、1日に5分遅れる時計の針を合わせてネジを巻く。
そして仕事は、80年以上のキャリアを持つ現役の理髪師。
この老人の日常を、実際に92歳の現役理髪師の人を主演にし
てドキュメンタリーのように描いた作品。しかもそこには、
独居老人の問題や北京オリンピックを控えた街区の再開発の
問題なども描かれる。
フィクションで描かれた作品なので物語は判りやすく、また
ドラマティックにいろいろな問題が浮き彫りにされる。それ
は決して中国だけの問題ではないし、特に日本ではほとんど
共通の話題として語られそうな物語だ。
でも、映画はそんなことは別として、この老人がいろいろ機
智に富んだ語録を発したり、また古き良きものと殺伐とした
現代のものとが対比されたり、老人を軸としていろいろな出
来事が描かれている。
中には、正装の人民服を新調しようとする老人に対して、そ
のようなものはもう作る人もいないという、日本人には関係
ないけれどちょっと意外なエピソードもあったりで、いろい
ろ面白く観ることができた。
舞台の胡同は、そこに溢れる人情も描かれ、これこそ古き良
き時代というものだ。でも、それを形成する建物群には取り
壊しの表示が書かれていて、オリンピックイヤーを迎えて、
今はもう無いのかも知れない。そんな時代に対する思いを込
めた作品にも見えた。
なお、監督のハスチョローはモンゴル族の出身者だそうで、
従って北京のこの風景が原風景ではない訳だが、美しく描か
れた胡同やその周辺の映像は素晴らしかった。
一方、老人を演じたチン・クイ理髪師は、昔の京劇のスター
や日本軍の占領中には官僚の理髪も手掛けたとのことだが、
93歳の今もその技術は衰えていないようだ。その髭剃りのシ
ーンなどは見事だった。

『L』
2006年に公開された『デス・ノート』からスピンオフされた
作品。オリジナルで「死神のノート」を操る殺人鬼キラと対
決した天才プロファイラーLのその後の行動が描かれる。
物語の発端はタイ。その山間の村に致死性のウィルスが撒か
れ、住民が全滅する。しかしそこから罹病せずに脱出した少
年がいた。
一方、日本の細菌研究所では究極の致死性ウィルスの研究が
進められていた。それは人類の将来的な存在を懸念し、逆に
人類を絶滅させることで地球を救済しようとする過激組織の
目的に沿うものだった。そして、そのキーが1人の少女に託
された。
この2つの出来事がLの許で交錯し、人類が生み出した新た
な「死神」と、Lとの最後の闘いが描かれる。
オリジナルでLを演じた松山ケンイチが再びLに扮する。実
はオリジナルを観ていたときには、Lの存在を余りに戯画化
した演出が気に入らなかった。それが、キラの存在を際立た
せるための方策であったことは明らかだが、それにしても…
という感じを持ったものだ。
そして本作でも、Lの戯画的な演出は踏襲されてはいるのだ
が、今回の全体的なLの存在はバランスが良く感じられた。
それはキラの存在がないせいもあるのかも知れないが、今回
はLの存在が戯画化された中にもいきいきとした存在感を見
せていた。
もちろんこの描き方が原作の読者にどう受け取られるかは、
原作を知らない僕には未知数だが、この作品1本を取り上げ
るなら、このLのキャラクターは理解できる。
ただしその分、他の新登場キャラクターに戯画化の印象が強
いことは否めない。元々、マンガが原作なのだから戯画化は
認められるべきかもしれない。しかしそこにおける存在感は
必要なはずだ。その存在感が今回のLには感じられたと思え
る。だが、その他のキャラクターに関しては…
実は、試写会で配られたプレス資料によると、一部の出演者
には監督の演技指導がされなかったようだ。その辺が原因か
とも思えるところだが、ハリウッドでも認められた中田秀夫
監督をして、何故そうなのかを知りたいところだった。

他の出演者は、福田麻由子と福田響志の子役に加えて、工藤
夕貴、鶴見辰吾、高嶋政伸、南原清隆ら。また、CGIのリ
ュークを含めて前作の登場人物たちも顔を見せる。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』“藍莓之夜”
ウォン・カーウァイ監督で、2007年のカンヌ映画祭オープニ
ングを飾った作品。
監督の前作『2046』は、SFという事前の情報もあって
期待して観に行ったものだが、まあ何と言うかストーリーも
支離滅裂で、何とも評価に困る作品だった。
それで今回も多少心配をしながら試写会に向かったのだが、
さすが2作連続で同じ轍を踏むことはなかったようだ。その
意味では、かなりの安全作とも言える感じの作品で、落ち着
いて観られる物語が展開していた。
物語の発端はニューヨーク。その街のとあるカフェに、1人
の女性客が現れる。彼女は売れ残りのブルーべリーパイを食
べ、カフェの男に預けたアパートの鍵の話をする。その店で
は、いろいろな人から預かった鍵が、大きなガラス瓶の中に
保管されていた。
そして彼女は立ち去るが、やがて彼の許に彼女からの手紙が
届き始める。それにはニューヨークから遠く離れた場所で、
彼女が関った人々の物語が綴られていた。
このカフェの男にジュード・ロウが扮し、旅をする女性を歌
手のノラ・ジョーンズが演じて映画デビューを飾っている。
さらに彼女が旅先で出会う人々として、『グッドナイト&グ
ッドラック』でオスカーにノミネートされたデイヴィッド・
ストラザーン、『ナイロビの蜂』で受賞のレイチェル・ワイ
ズ、『クローサー』で候補になったナタリー・ポートマンら
が登場する。
物語は、ニューヨーク、メンフィス、そしてラスヴェガスで
展開されるが、それぞれいろいろな形の愛を描いたもので、
その物語がまず素晴らしかった。
『2046』では、監督は事前に脚本を書かず、当日俳優や
スタッフにメモを渡して撮影を行ったと聞いたが、本作では
事前にローレンス・ブロックと共同で脚本が作られたという
ことで、その辺は多少やり方が違っていたようだ。
それでも俳優の役作りはかなり自由に任され、撮影中に監督
と俳優が一緒になって役を作り上げていったそうだ。
その中でジョーンズの演技は、初めてとは信じられないくら
なもので、さらにその彼女を暖かい目で見つめ続けるロウの
演技が素晴らしく、それだけでも観る価値を感じる作品だ。
なお本作は、カーウァイ初の英語作品となっている。


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井口健二