井口健二のOn the Production
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2007年12月20日(木) 明日への遺言、Mr.ビーン、テラビシア、アメリカン・ギャングスター、勇者たちの戦場、そして春風にささやいて、トリコン、黒い土の少女

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『明日への遺言』
B級戦犯として1949年9月17日に処刑された元東海軍司令官
・岡田資中将の裁判での闘いを描いた大岡昇平の原作「なが
い旅」を、『雨あがる』『博士の愛した数式』などの小泉堯
史監督・脚本で映画化した作品。
1945年5月14日、名古屋市に対する絨毯爆撃が行われ、その
際に撃墜されたB29の搭乗員が6月28日に斬首処刑された。
岡田中将ら東海軍の兵士たちはその罪に問われ、1948年3月
8日から横浜法廷において裁判が行われた。
しかし、米軍による都市部への無差別爆撃は国際法に違反し
たものではなかったか。その争点に立って、岡田は搭乗員の
処刑がジュネーブ条約に違反する捕虜の殺害ではなく、戦争
犯罪者への正当な処刑であったことを主張する。
僕は戦後の生まれだが、僕が生まれ育った神奈川県平塚市も
終戦間際の爆撃で市街地の大半が焼失したようだ。実は、当
時の平塚市は市街地の後背部に海軍火薬厰が置かれており、
子供の頃には米軍のスパイが作った地図で火薬厰と市街地が
逆に書かれていたために市街地が誤って爆撃されたと聞かさ
れていた。しかし今回の映画を観て、それが無差別攻撃の結
果であったことが理解できた。
映画は最初にピカソの「ゲルニカ」を映出して、この物語が
無差別攻撃に関わるものであることを明白にする。そして無
差別攻撃の違法性についての説明もされる。
だからと言って、戦時中のこととは言え、岡田らの採った行
為の正当性が何処まで主張できるものかは判らない。しかし
この映画は、敢えてそこには深く踏み込まず、米軍の行った
無差別攻撃が、国際法上で違法な行為であったことを明白に
描いているものだ。
今回、共同脚本を担当した日本在住の劇作家ロジャー・パル
バースは、3年前のアメリカだったらこの物語は受け入れら
れなかっただろうと語っている。でも、今のアメリカならこ
の物語は共感を得られるかも知れないとのことだ。
米軍は、日本でもヴェトナムでも、イラクでも市民を巻き込
む無差別攻撃を繰り返しているものだが、それが罪に問われ
たことはない。そんなアメリカ国民に、この映画が一石を投
じたら面白いところだ。
出演者は、岡田役の藤田まこと、その妻役の富司純子の他、
弁護人役ロバート・レッサー、検事役フレッド・マックィー
ン、判事役リチャード・ニール。また、蒼井優、田中好子ら
が証人役として出演している。

『Mr.ビーン/カンヌで大迷惑?!』“Mr.Bean's Holiday”
ローワン・アトキンスンが演じる大迷惑男Mr.ビーン久々の
登場。
テレビの人気者だったMr.ビーンが、前回映画館に飛び出し
たのは1997年、もう10年も経ってしまったものだ。前作の時
は、確か渋谷パンテオンで日本での披露試写が行われ、僕は
いろいろあって、芸能人の座る2階席で「王様」の少し後ろ
で観た記憶がある。
前作は、ロンドンの美術館の監視員だったMr.ビーンが、カ
リフォルニアの美術館に展示される絵画のお披露目の席に誤
って派遣され、滞在中そのカリフォルニアの美術館の職員の
家や美術館で大迷惑を繰り広げるというもの。
当時のMr.ビーンの人気をそのまま映画に持ってきたような
作品だったが、Mr.ビーンが一所懸命になって頑張れば頑張
るほどド壺に填っていく姿が、哀愁を込めて描かれていた。
しかもこの哀愁が何とも良い感じで、唯のお笑いではないな
と感じさせてくれたものだ。
そして今回のMr.ビーンは、教会の屋根の修繕か何かのため
の募金くじが行われ、そこで特賞のカンヌ旅行を当ててしま
うことから始まる。それにはヴィデオカメラも副賞に付いて
いて、彼はカメラ片手に旅立つが…
イギリス人は英語しか話さず、フランス人はフランス語しか
話さない、という考えが根底にあるようで、Mr.ビーンは、
「ウイ」「ノン」と、何故か「グラシアス」しか話さない。
そして、早速パリで道に迷ったMr.ビーンはすったもんだを
開始する。
これにロシア人の少年やフランス人の女優の卵、さらにアメ
リカ人の映画監督らも巻き込んで、折しも国際映画祭開催中
のカンヌが最後の舞台となる。そしてその記録は、ヴィデオ
カメラにバッチリ撮られていた…というものだ。
僕は前作もお気に入りの作品だが、正直、前作の展開にはか
なり無理があって、その辺は当時のテレビの人気で誤魔化さ
れていた感じもあった。
しかし今回は、物語にさほどの無理もなく、10年も経てばも
はや過去の人気は吹っ切らなくてはいけないということなの
か、しっかり映画を作ろうという意志が見える作品になって
いた。それが海外では前作を上回るヒットになったとも思わ
れるところだ。
アトキンスンは、その後ハリウッドのコメディ映画などにも
出演しているが、Mr.ビーンの復活で新たな路線が開けそう
だ。「クルーゾー警部」の対抗馬になったら面白い。
なお、フランス人女優の役で『恋愛睡眠のすすめ』のエマ・
ドゥ・コーヌ、ロシア人少年の役で『ポーラー・エクスプレ
ス』に「出演」していたマックス・ポリドリーが共演。そし
てアメリカ人監督役をウィレム・デフォー、ロシア人監督役
をハリウッドでは悪役で知られるチェコ人俳優のカレル・ロ
ーデンが演じている。

『テラビシアにかける橋』“Bridge to Terabithia”
ニューベリー賞など、世界の名だたる児童文学賞を受賞した
キャサリン・パタースン原作の映画化。
いろいろな事情で学校では爪弾きになっている少年が、近所
に引っ越してきた少女と共にファンタシー世界を冒険する。
それは、近くの森の小川をロープで渡った先に広がる世界だ
った。
僕も、幼い頃に自分だけのファンタシー世界を持っていた。
テラビシアのような壮大な世界ではないし、大人になってか
らそこに行くことは最早できないが、何時でも思い出して、
何かしら自分の支えになってくれるそんな世界だ。
そんなことを思い出しながら、この映画の世界に引き込まれ
て行った。少年は活発な少女の後押しでその世界に入って行
くが…そこには悲劇も起きる。けれどそれらの全てが少年の
成長を促して行く。
原作者は、自分と自分の息子に訪れたある出来事を基にこの
物語を書き上げたということだが、その現実的な背景が物語
に厚みを加えていることは間違いない。そしてその物語は、
全ての人の心に染みる感動を与えてくれる。
今回の映画化の脚本は原作者の息子が執筆してる。1977年に
出版されたオリジナルの物語を現代化することは、この映画
化では欠かせないことだったが、それを当事者の一人でもあ
る息子が担当したことも、この映画化では重要なことだった
ように思える。
これによって、親と子の両方の側面からの物語が完成してい
るようにも感じられた。
出演は、少年役を『ザスーラ』のジョッシュ・ハッチャーソ
ン、少女役を『チャーリーとチョコレート工場』のアナソフ
ィア・ロブ。他に少年の父親の役でロバート・パトリック、
教師役でズーイー・デシャネルが共演している。
監督は、『ザ・シンプソンズ』や『ラグラッツ』などを最初
に手掛けたガボア・クスポ。実写作品は初監督だが、少年少
女の視点に立った映画作りと見事な映像感覚で、この作品を
成功に導いた。またVFXをWETAが担当、見事なテラビ
シアの世界とクリーチャーたちを描き出している。

『アメリカン・ギャングスター』“American Gangster”
リドリー・スコット監督、デンゼル・ワシントン、ラッセル
・クロウの共演で、1970年前後のニューヨークを舞台に、麻
薬の取り引きで伸し上がった男と、その麻薬取り引きに絡ん
で腐敗し切った警察の浄化を目指した男との対決を描いた作
品。
物語の発端は1968年、ハーレム仕切っていたボスが死去し、
その跡目をボスの長年の右腕だったルーカスが引き継ぐ。そ
の亡くなったボスは、生前にニューヨークにも進出した家電
量販店に目を付け、生産者から直接仕入れる流通革命の話を
ルーカスにしていた。
時はヴェトナム戦争の最中。街にはアジアで良質なヘロイン
を味わってきた若者たちが溢れていた。しかしニューヨーク
に流れるヘロインは純粋からは程遠く、しかも警察が一度押
収した麻薬が還流しているものもあった。
そんな中、ルーカスは、ヴェトナムいる仲間に連絡を取り、
自らも現地に飛んで、純粋なヘロインを調達する。そして、
米軍の物資に紛れさせる方法で、本土への密輸ルートの形成
に成功する。
一方、ニュージャージーの刑事ロバーツは、押収した現金を
そのまま本部に届けるような実直な男。彼のやり方は、周囲
の汚職警官たちから煙たがられ、昇進もままならなかった。
そんな彼に、地方検事直属の麻薬捜査官チーフの仕事が与え
られる。そしてそれは、麻薬捜査に留まらず、警察組織全体
を揺るがす捜査へと発展する。
なお、物語は実話に基づいており、特にワシントンは、役を
演るに当ってルーカス本人にも面会して役作りをしたという
ことだ。
ヴェトナム戦争の状況や、最後はサイゴン陥落など、僕らも
知っている歴史的な出来事が背景に置かれ、第2次大戦ベビ
ーブーマー世代にはいろいろな面で興味深い作品となってい
る。その戦争を利用して甘い汁を吸った奴がいて、さらにそ
れを利用して警察組織の浄化に成功した男がいる。これも、
アメリカンドリームなのだろう。
共演は、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッディン
グJr.など。また、劇中のボクシング、ジョー・フレイジャ
ー対モハメド・アリ戦のシーンでは数多くのセレブのそっく
りさんも登場する。
なお、映画の最初の量販店のシーンで、店頭のテレビを指さ
してソニーの次に、トウシバとわざわざ言うシーンがあり、
さすが次世代ヴィデオの企画争いで、東芝HD-DVD陣営の旗手
ユニヴァーサル作品という感じで可笑しかった。

『勇者たちの戦場』“Home of the Brave”
アメリカ軍によるイラク占領を背景に、そこで人道的な活動
に従事していた軍医と、同じ出身地から従軍していた兵士た
ちの物語。
彼らは、本国帰還を間近にしたある日、要請でとある村に赴
き、そこで反米勢力の待ち伏せに逢う。そして、死傷者を出
しながらも何とか脱出し、本国への帰還を果たすのだが…そ
こで彼らを待ち受けていたのは、戦場以上に過酷な現実だっ
た。
その戦争が勝ち戦であったら、祖国は彼らを暖かく迎えたの
だろうか。サミュエル・L・ジャクスンが演じる主人公は、
戦地から戻ったその日に開かれたホームパーティでバーベキ
ューを焼いている。そして、食卓で交わされる会話には戦争
の話は出てこない。
それは、戦地での悲惨な体験を思い出させたくないという配
慮のようにも取れるが、実際に交わされている会話は極めて
他愛ないもので、そんな配慮でないことも如実にされる。そ
して、そんな周囲の対応が主人公を徐々に追いつめて行く。
一方、『ステルス』などのジェシカ・ビールが扮するのは、
体育教師だった女性。しかし戦闘で片手を手首から失い、職
場復帰はするがボール1個を扱うのもままならない。この女
性教師のシーンでは、義手はちょっと変な感じだったが、義
手を外したときのVFXは見事だった。
この他、同じ戦闘で親友を失った兵士の役でラッパーの50¢
としても知られるカーティス・ジャクスンが本名で出演して
いる。
原案、製作、監督は、1970年代に『いちご白書』などを製作
し、1990年以降、監督に転身してヘイデン・クリステンセン
が出演した『海辺の家』なども手掛けているアーウィン・ウ
ィンクラー。社会的な題材にも手腕を示す監督の渾身の作品
と言うところだ。
なお本作は、ブレット・ラトナー製作、キューバ・グディン
グJr.主演による『エンド・ゲーム/大統領最後の日』とい
う作品とセットで公開される。実は、スケジュールの都合で
そちらの方は観ることができなかったが、セット作は題名か
ら察すると政治の中枢での陰謀劇という感じのようだ。
つまりこの2本は、一方は政治中枢での闘い、他方は市井の
闘いということで、見事に対比される作品となりそうだが、
いずれも今のアメリカが抱える問題を描いたものになってい
るようだ。
製作は2作ともミレニアム。今までどちらかと言うとアクシ
ョン専科のインディーズ系という認識の映画会社だったが、
認識を改めることになりそうだ。

『そして春風にささやいて』
角川ルビー文庫から発行、ごとうしのぶ原作による映画化。
原作はコミック化などもされているようだが、いわゆるイケ
メンキャラクターばかりの物語ということで、そのキャステ
ィングから大変だったということだ。
物語は、全寮制の男子学園を舞台にしたゲイものといってし
まうと身も蓋もないが、そんな学園に迷い込んだ主人公が、
先輩の庇護の元、徐々にその環境の中に溶け込んでゆく様子
が描かれる。
主人公は、音楽の天才だったらしいが、家庭内の問題でその
志を封印し、その学園に来ている。そして1年目は、比較的
目立たないルームメイトと大過なく過ごしたようだが、2年
目になって、校内のあこがれの的の先輩が同室者となる。
これによって主人公は、他の学友たちの反感を買うことにな
るのだが…
僕は基本的に男性であるし、性癖も男性より女性の方が好き
な方なので、イケメンの評価も良くは判らないし、まして男
同士の恋愛シーンというのが女性にどのように評価されるの
かも判らない。
でもまあ、この映画に描かれている世界というのは、青春も
のとして単純に評価もできるし、その線では、他愛ないもの
ではあるが、若い女性に評価されるのだろうなあという感じ
はしてくるものだ。
脚本は、金杉弘子。去年評価した『スキトモ』も、一部にゲ
イを描いてはいたが、本作はさらに一歩進んでいる。とは言
え、僕は、この脚本家には『君にしか聞こえない』のような
作品を、もっと見せてもらいたいとも思っているが。
その出演者は、柳下大、加藤慶祐、齊藤ヤスカ、滝口幸広、
牧田哲也、坂口りょう、相葉弘樹、羽多野渉。これだけで判
る人には判ってしまうのだろうな。
公開は22日から渋谷のイメージフォーラムで、連夜21時から
のレイトショウ。その後全国に展開されるようだ。

『トリコン!!!』
横浜を舞台に、3人の若者が集まる探偵事務所を巡る物語。
横浜が舞台の探偵物、刑事物というのは、映画やテレビでも
いろいろあったと思うが、東京とは違ったエキゾチックな雰
囲気があって良いものだ。東京は捜査何課のような組織で動
く物語が合っているが、横浜が舞台だと、刑事物でも小規模
なグループで、ちょっと規格外れの刑事などがよく似合う。
そんな横浜を舞台にしたこの作品では、主人公は孤児院で育
った3人の若者。それぞれ過去は捨てて、お互いもエース、
ジャック、キングと呼び合っている。そんな彼らが開業した
探偵事務所だったが、探偵の仕事の依頼はまだなく、来るの
は便利屋のような仕事ばかり、しかも宅配ピザの間違い電話
もしょっちゅうという有様。
それでもバラ色の将来を夢見ている彼らの許に、ある日幼い
少女が紛れ込んでくる。その少女は彼らをパパと呼び、3人
はお互いに隠し子ではないかと疑ったりもするのだが、やが
てその子が仕事の依頼第1号をもたらすことになる。しかし
それは、彼らの過去にもつながるものだった。
とまあここまで書いて「そんな大げさな話ではないよ」とい
う声がどこからか聞こえてきそうだ。実際、話はここから、
放浪の画家や彼の描いた絵の行方の捜査などに進み、そこに
地元の顔役らしい人物が登場したりもするのだが、全体的に
は軽いし、どうってことのないところに終始してしまう。
でもそれは、多分この映画の作者たちの狙いなのだろうし、
そういうことを理解してやれば、それほど気にもならない物
だった。
監督は、2006年『ケータイ刑事 THE MOVIE』の佐々木浩久。
正直に言って前作は、僕は評価しなかったもので、本作もそ
の流れを汲むものではある。しかし、前作のような悪趣味な
ギャグはなかったし、それなりに観られる作品にはなってい
た。それだけの進歩の後は見えるものだ。
主演は、進藤学、南圭介、八神蓮。
この主人公たちが名告るときに一々ポーズを取るのだが、主
演の3人がそれなりに真剣にやっているのは好感が持てた。
もっとも、これが最近の若者の乗りなのかなという感じでも
あったが。なお主演の3人は、この作品の主題歌も歌ってお
り、CDも出ているようだ。
共演者には、根岸徹と長内美那子がいて、特に長内は、存在
感もあって良い感じだった。

『黒い土の少女』“검은 땅의 소녀와”
日本と同様、韓国でも斜陽の代名詞のような炭坑の街を背景
にした物語。
主人公の少女の父親は、じん肺で炭坑夫の仕事を辞めさせら
れるが、合併症がないと以後の治療費の保障はないと言われ
る。それには労組も動いてはくれているが、規則の壁はぶ厚
いようだ。
退職した父親は行商の仕事を始めるが、そこでは詐欺まがい
の手口にあってなけなしの資金も失ってしまう。ここでの展
開は本当にありそうで、身につまされる。そして父親は徐々
に酒浸りになって行く。
少女の家に母親の姿はないが、その経緯などは語られない。
ただ画面には何度か思わせぶりな女性の姿が写し出される。
しかし、それについて監督は「それは観客の目を代表した存
在だ」として明言は避けているものだ。
そして少女には知恵遅れの兄がいて、彼女はいつもその世話
を焼いているが、いたいけな少女のその姿は、『おしん』な
どにも通じる感動を呼ぶシーンと言えそうだ。多分映画の評
価もそうなるだろう。
この少女の役は、1999年生まれのユ・ヨンミが演じている。
すでに韓国テレビでも人気のある子役とのことで、その実力
は確かなものだ。特に、兄と一緒にバスに乗っているシーン
でのかなり長い一人芝居には驚かされた。
父親役は、『大統領の理髪師』で大統領を演じていたチョ・
ヨンジン。そして謎の女性役で韓国の国民的女優と言われる
カン・スヨンが特別出演している。
監督のチョン・スイルは、ソウルに拠点を置かず、釜山を中
心にした映画作りをしているようだ。そんな監督の視点が見
事に活きた作品といえる。そしてその視点は、日本にも共通
するようにも感じられた。
なお、映画の舞台は韓国江原道の某街となっていて正確な場
所は特定されていないものだが、2005年12月に紹介した『春
が来れば』の舞台となっていたトゲ(道渓)に似ている感じ
がした。もちろん炭坑町の風景など、どこも同じなのかもし
れないが、途中で映る大きく湾曲した鉄道線路の風景はよく
似ている感じがしたものだ。


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井口健二