せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2008年12月14日(日) ワークショップ3日目

 昼間、ゴールドスミスワークショップの最終日。
 持ち寄った雑誌の写真を切り抜いて、コラージュをつくってみる。
 気になる写真を1枚、もう1枚、そして気になる言葉を1つ。そして、そこからイメージされる言葉を書き出してみる。つづいて、写真をプラスして、一つの作品をつくる。僕が気になって切り抜いたのはギュスターブ・モローの「出現」と、サッカーの試合中の選手たち、そして言葉は「記憶を掬う匙」というもの。そこから、光りと闇、時間といったイメージが生まれた。昨日の老人ホームでインタビューをするというエクササイズが僕の中に何かを残していたのだと思う。
 つづいて参加者それぞれがどんな現場でどんな仕事をしているかをお互いに共有した。
 壁に貼った、それぞれが持ち寄った写真について、ただの紹介ではなく、写真の中の人物として語るというエクササイズ。
 前回、前々回と参加しているけれど、こんなふうに、他の人の仕事について知ることが出来たのは初めて。とても興味深かった。
 いろいろなエクササイズをしながら、見えてくるのは、自分が何者なのかということだ。
 僕が、大切にしたいと思うことは何なのか。
 最後のエクササイズ。内戦で橋が落とされた東ヨーロッパの街でのワークショップを再現してみる。
 見えない川にかかる一本のつなをわたっていくというもの。一人ずつ、それぞれのやり方で全員。
 つづいて、今度は同時に2人が両端から渡り始める。さあ、どうする?
 正しい答えはどこにもなく、渡り始めてもどうしたらいいか、まだ悩んでしまう。それでも、渡り始める瞬間。
 僕は、長い棒を横にもってやじろべえのようにバランスをとっているシゲコさんとむきあった(僕は、軽業師のように傘を持ってバランスをとってた)。向き合って、傘を捨て、彼女が棒を持つ手に僕の手を重ねて、二人で一緒にバランスをとって、そのままくるっと180度回ってすれちがうことに成功した。
 いろんな人がいろんな方法を見つけていくなか、僕は助け合うという方法を選んだということがおもしろかった。
 内乱の続く街では、やや甘い、成立しない方法かもしれない。でも、僕は、緊張感の中、そんな方法を選ぶのだということ。
 見えない川とロープ、そしてとんでもない緊張感を、全員が感じながら、全員でつくった輪の中をまっすぐに歩いていく2人を全員でどきどきしながら見守った。
 落ちないように、うまくいくようにと。
 見えない川とロープは、その時、僕たちを強くむすびつけてくれていたと思う。
 演劇のおもしろさ、つよさを、たしかに感じた瞬間だった。
 3年計画のロイヤルナショナルシアターとロンドン大学ゴールドスミス分校のワークショップは、今日でおしまい。
 一回目から、実はその前の演技のクラスでもお世話になったクリッシー・テイラーさんとも今日でお別れ。とってもタフな人だと思っていた彼女が、最後の挨拶で涙ぐんでいた。
 ほんとうにいい時間をすごさせてもらったと思う。感謝してもしきれない思いだ。
 リチャードが参加者のブログをつくってくれた。そこで今回の参加者はまた出会い、情報を共有することができる。
 まずはさよならだけれども、また、やあひさしぶりと言って会えそうな仲間たちと知り合えたことに感謝。僕も、自分の仕事をしっかり続けていきたいと思う。

 夜は「ジェラシー 夢の虜」稽古。ウォームアップのあと、場面をつくるエクササイズ。
 今日は、キャラクターを設定してもらう。劇中に登場するキャラのベースと同じ要素を持っていたり、一人称をいろいろにしてもらったり。
 「僕」の高山さんに「あたし」の日下部くんが活躍するプールサイドの場面がにぎやかにおもしろかった。
 稽古場の予約をうっかりしていて、今日は早く上がることになる。早めの時間、長い夜を川島芳子と過ごした。朝まで。


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