せきねしんいちの観劇&稽古日記
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| 2008年10月11日(土) |
Pal'sSharer「Romeo+Juliet+Juliet」 唐ゼミ「ガラスの少尉」 |
阿佐谷のアルシェに、去年一昨年と書き下ろしを演出させてもらってPal'sSharerの公演「Romeo+Juliet+Juliet」を見に行く。 阿佐谷のアーケードには大きなハロウィンの飾り付け、そして、ジャズフェスティバルの旗がひるがえっている。 芝居は、披露宴の出し物「ロミオとジュリエット」の稽古をするために集まった30歳を目前にした高校のクラスメイトたちのお話。 場所も時間もまさに、この阿佐谷のアルシェという劇場の今をそのまま使っているのがおもしろい。がらんとした何もない空間がうまく生きている。 久しぶりな仲間たちがわらわらと集まってきて、お互いの今をしゃべりあう前半がおもしろい。後半、やや、みんなが正論を話し過ぎかなという気がしないでもないものの、今ここでこれを見ているおもしろさは十分かんじられる、いい芝居だった。 終演後、演出の森さん、はじめ出演のみなさんにご挨拶。舞台監督の田中さんに「髪が黒い」と驚かれる。 少し歩きたくなったので、南阿佐ヶ谷まで歩いていたら、佐藤大司くんに呼び止められて、びっくり。自転車の後ろに男の子を乗せている。彼は、僕が名付け親になった優一郎くんだ。もう三歳になるそうで、今日は二人で散歩とのこと。 近況を立ち話して、泰子さんによろしくと、また会う約束をして別れる。とてもうれいい偶然。というか、ご無沙汰していて本当にごめんなさい。 その後、唐ゼミ「ガラスの少尉」を見に、川崎市市民ミュージアムまで。 武蔵小杉からのバスが一時間に3本くらいしかないことがわかり、タクシーに乗る。 どこだかわからないところにいく気持ちがもう、非日常でわくわくする。 唐ゼミの青テントに電球のオレンジの明かり、どきつい色味の看板がまたいいかんじ。 芝居は、1973年のラジオドラマを元にしたもので今回が舞台では初演とのこと。といっても、テイストはまるのまんま唐十郎。 エメロンのなつかしのCM「振り向かないで」をモチーフに語られる、人の倍の肺活量があるヒロインと、戦争中のバリの記憶をもつ中年男。場面は、ガラス工場とバリをまたにかけて、時間を超えて繰り広げられる。 といっても何の説明だかわからないようなかんじで、とにかく、おもしろい1時間半だった。 テントの中の装置は、墜落した飛行機の内部のようで、ここにガラス工場やら喫茶店やらヒロインの部屋や、ジャングルやらが、無理矢理に登場してくる。そのちっともオートマチックじゃないかんじが、なんともいえず楽しい。 なつかしい、中島みゆき作の「匂いガラス」が聞けたりしたのもうれしかった。 役者では、隊長役の安達俊信さんが実にすばらしい。押し出しも立派で、そして色っぽい芝居だった。 来年は、上演不可能と言われる「下谷万年町物語」を上演するとのこと。 初演を見ている僕は、あの舞台がどんなふうによみがえるのか、とても気になる。 帰りは、観劇後の人たちだけで満員になったバスで武蔵小杉の駅まで。 知らない街までやってきて、芝居を見る、そのことが一つのおもしろい体験になった。 劇場へ行き、芝居を見ることへの、そこはかとないおっかなさが、ひさしぶりに感じられた。
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