せきねしんいちの観劇&稽古日記
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| 2005年11月18日(金) |
青年座「パートタイマー・秋子」 |
久しぶりの本多劇場。駅前のペルモビルがすっかり様変わり。居酒屋やバーが入っていてびっくりした。 で、「パートタイマー・秋子」。スーパーのチラシのようなフライヤーで、軽めのコメディを想像していたら、おもいきり裏切られる。 下町のスーパー「フレッシュかねだ」を舞台にした、権力争い。スーパーの店長が誰になるかというかけひきや、パート仲間でのいじめや派閥、とっても身近な「政治」の話。まるで、シェイクスピアの歴史劇みたいだなとちょっと思った。 あきらかにパッとしないスーパーに、あきらかに負け組の人たちが吹きだまってる。その中でおこる、とてもみにくい、でも、切実な争いが、ほんとにおかしく描かれる。 誰も完全には正しくない、でも、正しく生きたい、嘘をつきたくない、でも、いけないこともし、嘘もつかなければ、生きていけないという切実さが、おかしさにつながる。 このあいだの「歌わせたい男たち」同様、誰にも肩入れしない、クールな視点で書かれた台本がみごとだ。 こういう話は、テーマや言いたいことが勝ってしまって、「ああ、それがいいたかったのね」と思わされておしまいということになりがちな気がするけど、見終わった後、「言いたかった」ことは言葉としては何も残らない。この残らなさが、もしかするとおもしろい芝居の醍醐味なのかもしれないと思った。一言では言えないものを、2時間かけて芝居にする。そのことこそが。 客席の年齢層はとっても高め。芝居は若い人たちのものばかりじゃなくて、こういうものもちゃんとあるんだというのが、とてもうれしかった。 見ている間はゲラゲラ笑って、カーテンコールのあとに涙が出てきた、そんな芝居。出演の小豆畑くんに、お疲れさま、いい芝居をありがとうとメールを送った
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