せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年10月07日(金) 置き換える技術

 二兎社の「歌わせたい男たち」のゲネプロを見せてもらう。
 戸田恵子さんが登場しただけでもう泣けてくる。近藤芳正さんにも。1時間50分の上演時間、つらいと思うことはいちどもなく、喉の痛みも忘れて、笑い、泣いていた。
 日の丸君が代問題に真っ向から取り組んでいるのに、舞台上で展開するのは、とっても身近なやりとりだ。もちろんイデオロギーの対立もあるのだけれど。重要な役割を果たすメガネ。戦後初めて流れたシャンソンというのは、憲法や教育基本法のことのように思える。
 とっても「べらぼう」なことになっている今の教育現場を、とてもシンプルに描いたこの芝居で、一番の主役は「教育行政」だ。とんでもない悪役なのだけれど、この芝居は、その「悪さ」を徹底的に描くのではなく、振り回される人たちを描いている(振り回されない人も)。
 戸田恵子さん演じる、元シャンソン歌手の音楽講師という、何も知らない立場からの視点が、観客の視点に重なる構造も見事だ。
 終演後、永井さんにご挨拶。もちろん声は全然出なくて、なんとか挨拶だけ。駅までの道を、今日はほんとに泣きながら歩いてしまう。言葉にならない思いも、言葉にならないとやっぱりつらいんだ。ああ、いい芝居だった。


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