4つの季節を重ねながら

2002年06月28日(金) 一日中笑っていた日 vol.2

   以下、昨日の日記の続きです。



     *          *          *



おかしかったのは、学校で学んだこともレンズ光学やフィルムの構造、現像の化学など、技術についてはほとんど同じような内容なのに、やっぱり微妙なところでずれていること。

彼女は写真の学校で売り込みに使うための簡易写真集の製本の仕方なんて学んでいるんです。映画やコマーシャルの撮影の技術者は売り込みに写真集なんて必要ないので、わたしはそんなことは全く知りませんでした。

逆に、わたしは映像製作の学校で、ピント送りに必要な理論について彼女よりもずっと長い時間教わっています。2年間、週に2日は関数電卓を抱えて学校に行ったくらい。映像の場合は被写体もカメラも同時に動くことがあるので、カメラマンのほかにピント係がいるのです。映像撮影のピント係はファインダーを見られませんが、スチールのカメラマンは自分でファインダーを見て、ピントを合わせることができるから、それほど計算や理論は必要ないんですね。

*わたしは学校にいたときよくピント係をやったので、デジカメのオートフォーカスがうまくいかないと、目測した距離を数値入力してピントを合わせてます。最新のカメラ相手にすごいアナログ。ははっ。(^^;;


スチールと映像に共通していた軽めの業界裏話としては。。。

日本人クライアントは基本的に光が全体にまわっている画が好きで、暗いところと明るいところがはっきりある写真はあまり受けない。日本では部屋の中央天井からの1灯照明が一般的なのに対して、フランスでは壁際からの複数灯照明が一般的だからかな?

フランスでは著作権などの扱いがしっかりしているので気持ちよく仕事ができるけれど、予算がないので、プロの仕事だというのにロケ先で友だちの家に泊まらされたりする。日本人相手の仕事だと、4つ星ホテル確定で有名レストランに行かれるけれど、著作権はなく、ギャラは仕事が終ってから通達され、しばしば値切られる (^^;;(フランスでは仕事をはじめるまえにギャラを言わないのは労働法違反。終ってから値切ったりしたら訴えられる)

著作権を持っていると、例えば雑誌のために撮ったものが本になれば、著作権料が入り、サイトで利用されればまた著作権料が入る。フランスでは基本的に日本に比べてギャラの水準が低いので、仕事をしても食べていけるだけしか稼げなかったりするけれど、仕事をしていなくても著作権料の臨時収入で食べていけたりする。日本では働くとガンともらえるけれど、仕事がない時期は食べていくのに困る。(笑) 映像のカメラマン&アシスタントには著作権料はないけれど、フランスではなぜかフリーランスで仕事をしているのに有給休暇&失業手当(1つの撮影終了翌日から失業中という登録をさせられる)の制度あり。働かなくても生きていけることには変わりなし。(笑)

いくらフランスに住んでいるからといって、日本の人相手に「あ〜、わたし、○日から×日まではバカンスなんですよね〜」とは絶対に言ってはいけない。(笑)「あ〜、その日はもうべつの企画が入っちゃってるんですよねぇ〜」と言うべし。

日本人相手に「仕事はわたしの人生の一部」などと言おうものなら、仕事をする気がないものだと誤解されるので絶対に言ってはいけない。が、大半のフランス人はそう思っている。たぶんこのあたりが日本人の作る画に切羽詰まった真面目さが見られるのに対して、フランス人が作る画に遊び心が見られることの理由。

フランスでだけ仕事をしていると、機材の扱いについては、恥ずかしくて、日本の同業者にプロとしてその仕事をしているとは言えなくなるような適当さになる。(^^;;


などなど。

どっちも一長一短で、まさに Paradise は自分のこころのなかにしか見つからない状態。(苦笑) 

NYはギャラの支払いや雇用関係についてはしっかりしているらしいけれど、表現に制限がつくことがあり。たとえばカルバン・クライン・ジーンズの広告写真で、フランス版では男女数人のモデルがジーンズだけを身につけているのに、アメリカ版ではTシャツも身につけている、など。映像はアメリカではユニオンが厳しくて入り込むのが難しいし。やっぱり Paradise は自分のこころのなかに探すことに。(笑)


フォトグラファーさんはふわふわとした柔らかい印象の女性なのに、「滞在許可証の更新のときは Police 相手に戦うよね〜。あそこに行くたびにフランス語上達しない?(苦笑)」なんて言っていたのが印象的でした。ふわふわな彼女でもやっぱり戦うんだな。



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