22sentimental



2006年07月03日(月)


6月27日の午前0時半に、じいさんは一人逝ってしまった。

あたしが朝の5時半に電話を受ける
「オレからの連絡があるってことは、どうゆうことかわかるな」
って、既に数日前から福岡に駆けつけていた父は言っていた

じいさん、享年83才。
あたしには、もうおじいちゃんて存在はいなくなっちまった。

朝から仕事だったけれど、6時にはスカイマークのHPを見て予約をしていた
コンビニで飛行機代を払って、仕事に行った。
涙は最初にちょっとだけ出たけど、しっかりしなきゃってことが先行して
悲しみにくれる時間なんてなかった


じいさんに最後に会ったのは羽田空港だったな
あれが、最後ならもっと手をいっぱい振っておけばよかった


じいさんに会えたのは福岡の父の実家で
「家にかえりたい」って、死ぬ前にしきりに言っていたじいさんの希望を
叶えてやったのだ

顔を、見たら、もうじいさん死んじゃってて
この人は動かない、ってなんか心底思った

なんだろう蝋人形みたいに思えた。生きてない、って。
寝てるんじゃない、魂がない、って不思議な感覚

いつも死んでる人を見ないから、慣れなかった。
生きてるじいさんじゃない、じいさんをはじめて見た。そんな感じだった。
じいさんは、生きてなかったよ。

遺影はイイ写真だった。じいさんが生前これがいい、って言ったやつ。
すげー笑ってて、すげーいい写真だった。
なんだよ、じいさん、もうこの顔できないのかよ。って思った

通夜が終わって、ホテルに帰って、泥のように眠る
お母さんと二人だったから
朝起きて違う環境なことに違和感をホテルに泊まると感じるのだけれど

お母さんがいるとなんか、その違和感がなかった
母ってあたしにとって最も自然な存在。いて当たり前、ナチュラル。
なんて思った。家族って、母って、なんて存在感。

今日にはもう千葉に帰らなくてはならない。

その間に葬式をして、じいさんを焼いて、骨をひろって、食事をして
荷物を整理して、空港に向かって、お土産を買って、飛行機に乗って、
バスに乗って、車に乗って、
家に帰るまでの行程が程遠く、濃い一日を想像するだけでつかれた

葬式は、暑かった。晴れて良かった。
ずっといとこの子供を抱いて、南無南無と合掌を教えて、気を紛らわす

ただ、やっぱり花をじいさんのお棺に入れるとき
涙が溢れてしまった。たくさんの花に囲まれたじいさんを見て、
いつもじいさんの世話をしていたいとこの兄ちゃんが泣いているのを見て、
じいさんの遺品がつめられていくのを見て

やっとあたしはじいさんに対して、涙を流せた気がした

火葬場で、ばあさんは「最後にお顔を拝見しますか?」という質問に
「いいです」と断っていた

じいさんに苦労をさせ続けられたばあさんの気持ちはどんなんか全然
想像がつかなかった。ただ喪主なのに、一番じいさんから遠ざかりたがっていた
気がした。ずっと、死んだじいさんに近づこうとはしなかったし
泣いてなんかもいなかった。なんともいえない表情をしてた。

肉のついてるじいさんを見送って、待合所に行く途中
母が

「最後に焼かれるなんて、今までの罪への罰みたいだ」

って、言った。その言葉がすごく忘れられなかった。
そんなこと、思ったこともなかったから。そうだね、思えば悲惨な行為だよね。

それをアタリマエだと思ってる。
あの、焼かれている時間は奇妙な時間だと思う。一瞬此処が何処で
何を待ってるのかを忘れてしまう。何をしに来ているのかを

そうして、また、現実に戻される。

あたしは、母の言葉と共に、きっとこのじいさんの焼かれた後の姿を
忘れないと思う。

あんなに、足の骨がきれいに残っていて、骨のサンプルみたいに
そこに太くきれいな骨が二本立派にあったから

この、人の骨を見ると、自分にもこんな風に骨があるのかと思ってしまう
いつかこうやって自分の知らない自分の姿を皆に見せるのかと思ってしまう

もう、じいさんには一生会えないのだとここでやっと現実を呑み込む
じいさんを形成していた肉たちはどこにもないのだ、じいさんはもういないのだ

骨をつまむ、風習なのかココでは一人で骨をつまんだ。
係りの人は丁寧に、この骨は何処の部分なのかを説明してくれた

式場に戻って、次の法要も済ませてしまったけれど
何のために誰のためにお経をとなえているのかわからなくなってしまった
もう、死んでしまったじいさんは居ないのに。
骨になってしまったじいさんはいるけれど、それはもうじいさんじゃない気がした

全てが終わって、式場から家に帰るとき
なんでかわからないけど、ばあさんから預かったまま

そのままアタシが遺骨を抱いて車に乗ってしまい
じいさんはアタシに抱かれて家に帰ることになった。

人の骨が入っている箱を抱えているというのに、怖くも何もなかった
じいさん軽くなったなぁって、ミーに抱かれちゃってるよって、
なんかじいちゃんの声を思い出していた

「みゆきちゃん、みゆきちゃん」

って、耳の奥でじいさんが呼んでる。その声がはなれない。
じいさんの喉も声帯もこの世にもうないのに、みゆきちゃんって声がする

あの骨を抱いていた時だけ、じいさんの声を思い出せた。
あれから、ずっとじいさんの声を再現しようとしても
もうどんな声だったか思い出そうとしても思い出せない

あのとき、じいちゃんがきっとあたしに本当に呼びかけていたのだ
だから聞こえたのだ

もう、こうゆう事情で九州に来たくない。と思ったけれど
たぶん、この先も同じような理由で来なければならないのだと未来を想像すると
なんだかそれだけでやるせなかった。

飛行機に乗って、雲の上を見た。
なんにもなかった、天上の世界もじいさんの姿も。ただの雲だった。

江原さんに言わせれば
じいさんの魂は、じいさんという回を終えて、また違う命として生まれかわるね
全然違う目線の住人として生まれるんだ
また日本人で生まれるかなぁ。

アタシが死ぬまでに生まれかわったじいさんと、出逢えることはあるのかなぁ。


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