wakaP〜の好物三昧

2003年12月08日(月) ジョニ・ミッチェル 「シャドウズ&ライト」

「シャドウズ&ライト」はジョニ・ミッチェルが1979年9月、カリフォルニア州サンタ・バーバラ、カウンティ・ボウルで行った「伝説のライブ」を収めたビジュアル作品だ。何しろバックミュージシャンが極上。パット・メセニー(g)、ジャコ・パストリアス(b)、ライル・メイズ(key)、マイケル・ブレッカー(sax)、ドン・アライアス(ds)といった夢のようなメンツが彼女をサポートする。

白状するが僕がこの作品を知ったのは90年代になってからだ。
友人のギタリストに「フュージョンが好きと言うならこれを聴かなければモグリだ」と言われビデオを貸してくれた。ジョニは当初「青春の光と影」等で知られるフォーク・シンガーであり、その後チャーリー・ミンガスのトリビュート・アルバムを発表するなどジャズに傾倒していった事は知っていたが、何となく難しそうなイメージがあったので敬遠していたのだ。

しかしビデオを見て一曲目のタイトル曲からぶっ飛んでしまう。それはシンガー対バックと言う関係でなく、ジョニを軸に集まった超一流のジャズ・ミュージシャン達の個性が絶妙のブレンドで溶け合っている、超贅沢なインタープレイの場であった。

切なく繊細なジョニの旋律は一見滑らかに動いていく様に聞こえるが、コード進行とリズムは複雑に絡み合ってシンコペーションや変拍子が次々に表れては消えていく。その上をパット・メセニーのギターソロが心地よい緊張感をもって展開する。僕は、今までこの作品を知らなかった事を悔やみ、かつ恥じた。

特に、今は無きジャコが素晴らしい。お得意、ディジタル・ディレイ(この時代だとテープ・ディレイ?)を活かした一人多重ベースソロはもちろん、ジョニの唄の世界にジャコの世界を重ね合わせるように絡みつくベース・プレイ、自由一杯に繰り広げるマイケル・ブレッカーとのブルース・ランニング等など、オーディエンスの耳を引き付けて離さない。

ライル・メイズはバックに徹しており、シンセやエレピを多用しているがパットとのデュオになると、今に繋がるパットメセニーグループのサウンドが一杯に繰り広げられる。(一曲、ロックンロールのソロが面白い。…笑。)ライブは日没に向けて、益々盛り上がっていく。ジョニはギター片手に弾き語りをしている風なのだが、全体から涌き出てくるサウンドは紛れも無いジャズ。そしてラストは、黒人コーラスとライルの荘厳なシンセソロで終わる。

ジョニ自らが監督、インサートされた様々なイメージ映像には賛否両論あるが、ここにある宝石のような音の集まりは正に70年代が生んだ「奇跡の音」であると思う。


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