Day Dream Believer
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2002年04月28日(日) 欲望






 私がなぜ、なかなかkazeに心を開けなかったのか
 それには理由があった。

 私は長いこと別居中ではあっても法律的には配偶者がいることとか
 彼にも妻子がいるらしいことを知ってしまったこととか
 そういう重大な事実などは、別にどうでも良かった。


 
 彼に強く惹かれながらも心をなかなか開かなかった理由。

 彼の紹介でプロジェクトに新しく参加した女がいた。
 彼らの事実上の上司である自分の立場を考慮しなければいけなかった。
 それと・・・

 それとこの世の中には欲しくても自分のモノにできない存在が
 あるという事実を知ってしまったからなのだ。

 それならば、最初から欲しがらなければ良いだけのこと。

 だから私は彼の心が欲しいという欲望を捨てた。
 
 肉体は簡単だ。手に入れようと思えば手に入る。
 だから私はkazeとのセックスは受け入れた。
 
 でも、実体の見えない不確かなものである「愛」は
 どんなに欲しくても自分ではどうにもならないものなのだ。



 今日は朝から恵比寿で新人研修のオリエンテーションがあった。
 私は今日のプログラムや参加者リストに目を通すふりをして
 外の廊下でkazeとその女が話している姿を無意識に見た。

 女は背の高い彼のスーツの袖をつまんで見上げながら
 何か甘えたような目をして訴えている。
 彼は僅かに困ったような表情で応えていた。

 それを見て私は急に気分が悪くなった。

 「そんな目をしてkazeを見ないで。」

 本当はそういいたかったのかもしれない。

 部下の女に嫉妬しなくても済むように
 だから私はこれ以上彼への想いを封印したのだ。


 でも見ていなさい。
 あんな胸ばかり大きな生意気な女より
 私の方が良くなるようなそんな風にあなたをしてあげるから。
 心はあげないけど体はあげる。

 私からあなたを離れられないようにしてあげる。


 たぶんそんな風に私が彼を愛し過ぎて憎み始めたのは
 この頃だったと思う。




 
 


sora |MAIL

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