金色の夢を、ずっと見てる

2009年01月19日(月) それは多分復讐にならない。

夕方、ちょっと用があって実家に寄ったら、テレビで『中学3年の女の子が、ネットいじめを苦にして遺書に加害者の実名を残して自殺した』というニュースが流れました。


遺書の中に
『復讐はきっちりしますから』
という一文があったそうで……なんていうか、やりきれない気分になりました。

確かに、名指しされた側はそれによって相当な社会的制裁を受けますよね。報道では流れなくても同じ学校内ではどこからかばれるだろうし、当然、それは地域でも噂になると思います。自分達の言動が1人の人間を死に追いやり、さらにそのせいで(おそらくは)家族までもが批判にさらされる。それはものすごい重圧で、そうやって加害者が苦しむ事が、自殺した彼女の言うところの『復讐』なんだとは判るんだけど……



なんていうのかな、それじゃ結局何も変わらないんだよ。本人は辛い現状から逃げられるからそれで終わりなんだろうけど、残された家族は辛いし、加害者本人やその家族とも揉める原因になるし、誰も救われない。

そういう時代を通り抜けてきた立場から見ると、
「どんなに辛くてもそれは数年で終わる。そしてその数年間は、その後に続く人生においてはほんの一部だ」
と思う。




死にたいと思った事もある。この子と同じように、自分を一番苦しめた連中の名前を書き残せば、その後そいつらがどんなに苦しむかと考えた事もある。逆に、自分が死ぬのではなくそいつらを殺してやりたいと思った事もある。

私には
「あんな奴らのせいであなたの人生を無駄にしないで」
と言ってくれた親友がいたから、今、私は生きてる。


正直、今でも完全に乗り越えられたとは思ってない。時々、自分の妙なクセやこだわりに気付いて、それはあの事が原因なのかなと思う事が、今でもある。でも、生きてて良かったと心から思ってる。死ななくて良かったし、殺さなくて良かった。



中学生や高校生にとって、学校って自分の世界のほとんどなんだよね。だからそこでうまくやっていけないと、自分の全てがダメなような気がしてしまう。

でも、大人になってみたら、世界はもっと広がってる。学生の頃の付き合いなんて、絶とうと思えば簡単に切り離せるんだよ。そこまで行けたら、楽しい事もたくさんあるはずなんだよ。周りにそう言ってあげる大人がいたら、違った未来があったかもしれないのに。



「こういうのは、親が転校とかさせてあげるのが一番いいのかもね」
と母が言いました。でも、いじめられてる事を親に言えない子ってきっとたくさんいる。いじめられてる自分が情けなくて惨めで認めたくなくて、心配かけたくなくて、そんな惨めな自分を知られたくなくて言えないって子。でも、親にしてみたら、何も気付いてやれないまま子供に自殺されるより辛い事ってないと思うんだ。



それに、意地悪な意見かもしれないけど、名指しされた『加害者』も案外本当に反省するとは限らない。そりゃショックは受けるだろう。自分のせいで死人が出たなら。でも、しばらくは反省しても、それで自分が余りにも批判されたり、波及して家族まで大変な目にあったり運が悪ければその土地にいられなくなるような事態になったりしてるうちに、自分がやった事は忘れて逆恨みするかもしれないよ?
「あいつが自分の名前を遺書に書いたりするからこんな目に遭う」
って。もっと酷いと、反省すらしないかもしれない。
「あの程度で死ぬなんてバカじゃん」
とか言うかもしれない。


『被害者』の望み通り、『加害者』が社会的な制裁を受けて心から後悔して反省したとしよう。でも、それは長くても数年の事だ。その後悔を『加害者』が一生背負って生きると思う?本当に後悔したなら、そのせいで人が死んだ事を一生忘れはしないだろう。でも、ただただ後悔して反省するだけの日々を送るのはしばらくの事なんだよ。どんなに後悔しても、数年も経てばその事を思い出す事は少なくなる。そして、『自分がちゃんと生きる事が死なせちゃったあの子への償いになる』とかキレイ事を言って楽しく生きようとするよ。それでも、自分が死ぬ事が本当に復讐になると思う?



はっきり言って、復讐のために死ぬのは割りが合わない。


自分が払う代償に比べて、望む通りの効果が得られる確証は薄いし、そのくせ家族や友人や残された人達が負う傷は深い。死んでも、良い事なんて1つもないんだ。



考えたくもない事だけど、もしいつか自分の子供がそんな目に遭ったら、気付いてやれるだろうか。同時に、我が子が加害者にならないという保障もないんだ。私達の子供時代と違って、今はネットや携帯サイトなど親の目につきにくい手段がいくらでもある。必要なのは、そういうツールから遠ざけたり過度に守ろうとする事じゃなくて、正しい使い方を教える事。そして何より、いじめない子、いじめに負けない子に育てる事。



残されたご家族が、いつか穏やかに暮らせる日が来ますようにと願うばかりです。


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咲良 [MAIL]

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