まつや清の日記

2006年05月30日(火) 明日は収用委員会

 明日の収用委員会を前にして、「却下を実現する会」で下記の申し入れをしました。団体名では、受け取っても権利者としての資格に問題があり、裁決過程での公文書扱いにならない、を巡って議論が平行線となりました。

 やむなく参加したメンバー全員が権利者でもあったので個人名を書き添えました。今回の申し入れが反対派の基本的な姿勢となります。意見書を提出した全員の発言の場が確保される委員会運営をどう実現できるのか、がカギです。

 午前9:00にグランシップ入り口に集合です。10:00からの開会に備えます。できるだけの大勢の権利者の皆さんの参加と一般の方々の傍聴を呼びかけたいと思います。

2006年5月30日

意 見 書

静岡県収用委員会
会長 増田 尭 様

土地収用裁決申請却下を実現する会
事務局長 増田 勝
静岡市葵区鷹匠2‐12‐10「市民ひろば」内

 行政手続法や情報公開法などの様々な法制度によって、行政運営の公正の確保と透明化の一層の向上が求められる時代において、「公共の利益の増進と私有財産との調整を図」る(土地収用法第1条)ための妥当な審理を行わなければならない収用委員会においても、その透明性の確保は必要不可欠なものとなります。また、収用委員会は公正中立な行政委員会であり、損失補償に関する専門知識を有する機関であることから(「逐条解説土地収用法」上巻P723)、公正かつ慎重な審理が求められることも言うまでもありません。

土地収用法第47条では、収用委員会が申請を却下しなければならない場合の要件が複数定められています。多くの権利者によって構成されている私たちの会では、それらの要件に該当する重大な事実について、今後の審理過程において明らかにしていきたいと考えております。

そうした事実の概要について以下のように整理するものであり、収用委員会の公開審理の場において、権利者及び国民全体に対する透明性をきちんと確保した上で、これらの事実について充分な時間をかけた公正かつ慎重な審理が行われることを求めるものです。

また、そのような土地収用法の精神を担保する為には、土地収用法第43条の規定に基づき意見書を提出した、権利者全員の発言の場の確保が必要であることを申し添えます。
1、 収用申請に係る事実

イ、土地物件調書作成に係る事実
 土地収用法第36条では、裁決の申請に先立ち、収用又は使用する土地及びその上にある物件の状況、権利関係を調査し、土地物件調書を作成する必要があると定められています。そして、この土地物件調書の作成に瑕疵があるときは却下事由になるとされています。この土地物件調書の作成過程での法的問題点について、審理過程で明らかにしていくものです。

ロ、土地物件調書に係る事実
土地収用法第47条では、土地調書に当然記載すべき関係人の権利の表示、署名押印がかけているとき(昭和31・8・9建設計総受第72号新潟県土木部長あて計画局総務課長回答)、土地所有者を誤った裁決申請であるとき(昭和28・2・19建設計和第5号和歌山県知事あて計画局長回答)等には、申請が土地収用法の規定に違反するものとして却下の裁決をすべきものとされています。また、土地物件調書が所定の方式を欠いた場合、記載事項が真実でない等の場合は、却下事由に該当すると定められています。これらの問題について、審理過程で明らかにしていくものです。


2、事業認定申請に係る事実

イ、任意交渉に係る事実
土地収用法第47条では、起業者が適切な任意交渉をしなかったという事情は却下事由に該当すると定められています。そもそも、この静岡空港の土地取得交渉において起業者たる静岡県知事は、「誠心・誠意」の交渉を行った上であくまでも任意取得を図るという旨を公言してきました。さらに、国・国土交通大臣に対してその趣旨の確約書を提出し、その上で設置許可を受け、事業を進めてきたものです。ところが起業者は、そうした公的発言、確約書の内容を一方的に破棄して、土地収用法の適用申請を行って現在に至っているものです。その過程において、土地の権利者に対して適切な任意交渉努力が行われてこなかった事実について、権利者自らの証言において明らかにしていくものです。

ロ、事業計画に係る事実
 土地収用法第47条では、申請に係る事業と事業認定を受けた事業との間に同一性を認めることができるが、両者の間で事業計画が著しく異なる場合には、事業認定における土地利用や事業の公益性等についての判断をもはや維持することができず、改めてこの判断を経ることなしには収用又は使用の裁決をすることはできないので、却下の裁決をすべきものとされています。
 起業者は、2004年11月26日に開港予定を2年延長し、2009年とすることを明らかにしました。そして、その直後の同年11月30日に、国土交通省地方整備局に事業認定申請書を、同省航空局に工事完成期日変更申請書(2008年11月1日完成予定)を郵送し、事業認定申請を行いました。この2009年は、羽田空港の再拡張事業が完成する年とされており、この事業について土地収用法の適用等は予定されていないため、数回にわたって開港年次の延長がなされてきた静岡空港の事業とは異なり、この羽田空港拡張事業は予定通り2009年に完成するものと考えられます。しかし、開港予定延長発表直後に事業認定申請を行ったことからも明らかなように、この申請書における需要予測等の諸データは、2009年段階での周辺状況を全く考慮していないものです。
ところが実際には、拡張された羽田空港からは国内線はもとより、アジア便を中心とした国際線も数多く就航することとなります。そうなれば、成田空港、中部国際空港との競争を前提に算定された静岡空港の国際線需要予測はもちろん、国内線においてもその算定の根拠において大きな変更をもたらされることは明白なことです。そして、札幌便年間50万人の需要予測を基に大型機が就航することを前提として、2500mの滑走路を計画した事業の基本計画の根拠自体が揺らぐこととなります。その結果、収用対象地は必要最小限とすることとする事業認定の判断基準に基づけば、2500m滑走路を前提とした収用対象地の範囲も、その正当性を欠くこととなると考えられます。このような諸事実と問題点について、審理過程で明らかにしていくものです。


3、事業認定無効に係る事実

 土地収用法では、事業認定に関することは事業認定庁(本件では国土交通大臣)が行い、補償などに関することは収用委員会が行うこととされています。したがって、収用委員会は自らの判断権限を有しない事業認定の適法性についての判断は行わないため、その審理権限もないとされています。しかし、「審理に入った段階で、当事者の主張などにより収用委員会が重大かつ明白な瑕疵があると認めた場合には、収用委員会は不適法な審理手続きを開始したことを認め、改めて申請を却下するのが適当であると考えられます」(「Q&A土地収用法」)とあるように、事業認定自体が無効である場合には、収用委員会は申請を却下しなければなりません。
 無効な行政行為とは、重大かつ明白な瑕疵を有するものであるとされますが、「重大かつ明白な瑕疵」という概念は、きわめて抽象的で漠然としており、その具体的な中身が明確に定義されているわけではありません。最高裁は、「瑕疵が明白であるとは処分成立の当初から誤認であることが、外形上客観的に明白である場合を指す。・・・行政庁がその怠慢により調査すべき資料を見落としたか否かには拘らない」と「一見明白説」をとっていますが(最判昭和36・3・7民集)、下級審の中には、「明白な瑕疵とは、何人もその瑕疵の存在の格別の調査をするまでもなく一見して認識しうる場合ばかりでなく、行政庁が特定の行政処分をするに際し、その職務上当然に要求される調査義務を尽さず、しかも右調査義務の履行として簡単な調査をすることにより容易に判明する重要な処分要件の存否を誤認してなした場合にも、右に所謂明白な瑕疵があると解すべきである」として「客観的明白説」をとるものもあります(東京高判昭和34・7・7行集)。
 このように、「重大かつ明白な瑕疵」についての判例の理解は必ずしも一致しておらず、個別具体的事例に応じて弾力的に運用されるものと解されます(原田尚彦・行政法要論)。こうした意味において、本件の事業認定そのものに重大かつ明白な瑕疵が複数認められるため、審理過程で個別具体的に明らかにしていくものです。


以上     


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K.matsuya

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