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2022年12月07日(水)
LOUIS COLE BIG BAND JAPAN TOUR 2022

LOUIS COLE BIG BAND JAPAN TOUR 2022@Spotify O-EAST


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Louis Cole(Drums, Vo)
Chris Fishman(Keys)
Petter Olofsson(B)
Genevieve Artadi(Backing Vo)
Isis Giraldo(Backing Vo)
Fuensanta Mendez(Backing Vo)
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Masanobu Otagaki(Tb)
Melraw(As)
Satoru Takeshima(Fl, Picc)
Tomoaki Baba(Ts)
Yusuke Sase(Tp)
Yu Kuga(Bs)
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ホーンを現地のプレイヤーで編成しようって考えついたひと天才(ていうか直接松下さんに話をつけたそうだし、ルイス本人のアイディアか?)。ルイスと日本のミュージシャンたちとの、長年の信頼関係があってこそですね。ガチンコでした。ホーン6本にジェネヴィーヴたち女声ヴォーカル/コーラス3人がいたことで、過去の日本でのライヴとは(それらのどれも素晴らしかったけど)段違いのスケールでハーモニーが聴けたことが感動的だった。あれは頭数揃ってこそ。YouTubeでアホほど聴いてた銀行口座の歌がビッグバンド編成で、日本で聴けるなんてよおおお。

という訳で松下マサナオ人選によるホーンズを見せつけるにはもってこいの「F It Up」でスタート。しょっぱなからフロアは爆発! ……となった直後、クリスのKeyから音が出ないというトラブル。しかしそこで、ルイスと観客の間に「大丈夫、盛り上げる/盛り上がるよ!」みたいな意思疎通があったのにもジーンとした。「仕切りなおすよ!」とルイスとフロアが一緒になってカウントを取り、あっという間に軌道修正。お見事! こういう咄嗟の茶目っ気は流石です。

ルイスが導入のループを作り、そのあと移動してドラムを演奏する曲も多いので、彼のKeyやMacBookを複数のプレイヤーが入れ替わり立ち替わり担当しているところも面白かった。ジェネがPCの音停めるとこで間に合わなくて、ビートが残っちゃった場面もかわいかったな。ジェネがわーんごめん! みたいになって、ルイスが大丈夫大丈夫って感じでハイタッチして。ルイスのドラムは勿論すごいんだけど(重い! デカい! ジャスト!)鍵盤も相当弾けるんだよね……あのシンベ! あのコード使い! それがクリスのエレピと絡むってのがもうすごくて。それにしてもクリス、先月も思ったけど演奏スタイルが棋士みたいな佇まいでズバズバコードをキメる。すごかった。ベースのPETTERは初見だったけどバッチバチのゴリゴリだった(語彙)。ビートの粒立ちが強い! ルイスのベースといえばサム・ウィルクスのイメージが強かったので、立奏だったのも新鮮(笑)。

前回の来日公演は完全なひとり舞台で、彼のマルチプレイヤーっぷりを堪能出来た。今回は他のプレイヤーとのケミストリーを存分に楽しめた。揃いも揃ってアホうまい、楽しい、そしておかしい。そう、おかしい。どっか変。ルイス以外全員スケルトンスーツ(おなじみ)、ヘンな踊り(わざわざTシャツを出してくる)、小道具使い(ジェネたちカウベルがわりに酒瓶叩いてたよね)、スッとぼけたMC(「チェキ撮る」つって「あれ? 撮れない」、後になって「こんなん撮れてた」と最前のひとにあげる。「新譜聴いてくれた?」て訊いといて「それとは関係ない曲をやります」。「日本大好き。お尻が綺麗になる(ウォシュレットのことか!)」。ウケる)。皆出ずっぱり、歌がないときのコーラス隊はフロアに座ったりゴロゴロ寝っ転がっている。最初「後ろのプレイヤーをフロアから見せやすくするためかな?」と思ったけど、どうやらそれだけではなく、演出の一環だったようにも思う。このステージは最初から最後迄、誰が欠けても成り立たない。

後述のセットリストにソロオーダーが書かれているけど、「F It Up」からしてもう全員にソロまわしたし、メンバー紹介かねてソロまわしたりもしたし、「最後の曲です」「ノー!」「実際はあと3曲ある。アンコールがあれば」って笑わせといて、それでもおさまらないフロアに呼ばれてのダブルアンコールは完全に想定外、「このメンバーでやれる曲がもうないんで」ともう一回(しかし高速)「Thinking」。冒頭ルイスがチャルメラのメロディー演奏してウケたんだけど(これ前回来日でもやったよね)、それを皆が忘れた頃、「My Buick」のピッコロソロで武嶋さんがそのチャルメラをブッ込んできてめちゃめちゃ盛り上がった。音源ではサム・ゲンデルが演奏している「Bitches」のソロを、メルローくんが“THE 俺”仕様で吹きまくったのも激アツ。毎日のように現場でセッションしてるメンツが揃うと、倍々ゲームで相乗効果が生まれる。土曜日にルイスたちが日本に着いて、月曜日から本番。リハはどのくらいやったんだろう。自主練はしてただろうし、このメンツなら初見でもいけるだろうけど、それにしたってこの完成度。素晴らしいに尽きる。

日本での彼をとりまく環境は激変したと思う。ここ迄人気が出たら、もうシークレットや突発での追加公演は無理かもしれない。制限も増えるかもしれない。でも、ルイスは松下さんに声をかけた。皆の演奏を笑顔で眺め乍らドラムを叩き、PETTERと肩をたたきあい、クリスと肩を組んで帰っていく。彼を縛るものが何もありませんように、と祈る。

ギークで閉じた佇まいは変わらない。歌詞もメランコリーで内省的。それでも彼はこの日、フロアへの敬意と愛を率直に声にしてくれた。“I Love You”、なんてまっすぐな告白。大歓声とともにそのままお返しするわ、I LOVE, WE LOVE LOUIS COLE!!!!!!!!!!

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セットリスト(setlist.fmより。ソロオーダーはこちらの画像を参照しました。有難うございます)
01. F It Up
02. Thinking (Ts)
03. Quality Over Opinion // Bitches (As)
04. After the Load Is Blown (Tp)
05. Bank Account // Doing the Things (Tb)
06. Last Time You Went Away
07. Failing in a Cool Way (Bs)
08. Night
09. My Buick (Fl, Keys)
(Possibly LC Solo thing)
10. Let It Happen
11. Park Your Car On My Face
encore
12. Message (Keys)
13. Freaky Times (As)
14. When You're Ugly (Start form “everyone”, everyone solo to end)
encore 2
15. Thinking
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「Quality Over Opinion」のイントロ流れてきたとき「あれやるの?」てフロアがどよめいたよね……カンペ見ながら読みきりました(笑)。


有難う有難う

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・フロントアクトはジェネ、Isis、Fuensantaのトリオ。ドラゴンボールみたいな衣装で現れ、満杯のフロアを見渡して「wow!」。かわいい。IsisとFuensantaの演奏する(あれminiKORGだったかな?)チープでチャーミングなバックトラックに載せて、美しいハーモニーを聴かせてくれました。「I Know」すごくよかった……泣いちゃった。『Dizzy Strange Summer』からのナンバーもライヴで聴けてうれしかった。天井の高いEASTに映えるリリックビデオも。渋谷や月見ルで撮った映像も流れました。にっこり

・ルイス・コールが明かす、超人ミュージシャンが「理想のサウンド」を生み出すための闘い┃Rolling Stone Japan
「自分を特別な世界に引き込んでくれるのはハーモニーだ。特定のコード進行や単体のコード、あるいはハーモニーでもいいんだけど、それでしか伝えられない入り組んだ深い感情があると思っている。真っ直ぐでわかりやすいものじゃない、もやもやした感情。強く感じるのに、それがどんな感情か自分でもわからない。そういう感情を表現するのが好きなんだ。複雑にいろいろ入り組んでいて、細かいニュアンスやディテールが詰まっている表現をね。」
歌詞について、音楽のルーツについて、演奏スタイルとその録音法。そして、努力をするということ。このインタヴューすごいよかった。柳樂光隆さん×小熊俊哉さんのいい仕事!

・おまけ。タカハシコーキさんのツイートでわかったけど、ルイスのステージの最初にタイトなスーツを着たモデルみたいな長身のひとが出てきてPCからSE鳴らしたのね。だ、誰? となったけど、今思うとあれがAllizだったんだ。instaのアカウントとやっと結びついたわ

(20221209追記)
・BEATINK.COM / LOUIS COLE / 飄々とした佇まいに、笑いも含めた最高のグルーヴ! 超絶テクと歓喜と快楽に満ちた、東京公演のライブレポートを公開!
「超人、バカテクと形容されがちではあるが、流麗なコード進行とハーモニーに彼の真価をみた『Quality Over Opinion』のスピリットが受け継がれたパフォーマンスだった。これだけ技巧派のメンバーを集めながらも、テクニックのひけらかしではなく、明快で踊れるポップさをもってプレゼンテーションしていくこと。つまり、楽しさを提供するためにはどうするか、極めて冷静に考えられているということなのだろう。」
「飄々とした佇まいに、笑いも含めたグルーヴの的確さを心得ている。公演中も笑い声が耐えなかったし、終演後も会場を後にする人々が口々に『楽しかった!』と笑顔を浮かべている。歓喜と快楽に満ちたステージだった。」
駒井憲嗣さんによるレポート。写真もいい! 真顔でおかしな挙動ばっかしてるのに演奏中には鎧が脱げるというか、ポロッといい笑顔が零れるのよね