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2022年03月31日(木)
キュンチョメ『女たちの黙示録』

キュンチョメ『女たちの黙示録』



鑑賞期限の3/31に合わせてアップします。



シアターコモンズのパスを購入したタイミングで予約申し込み。郵送と会場受け取りが選べ、『妖精の問題 デラックス』の会場で受け取りました。黙示録が家に届くんなんて、郵送でも面白かったかもなあ。恐怖新聞みたいでさ……(世代がわかる例え)。

フォーチュンクッキーには、050で始まる電話番号が記された紙が入っています。ウマイウマイと食べていたら紙ごと呑み込んでしまいそうになり、電話番号がボロボロになってしまったのが1個。なんとか読めるくらいには復元出来たけど慌てたわ……。

声優さんが朗読したものと、自動音声によるものとがありました。どちらか判別出来ないものも。近頃の自動音声って精度高くなりましたよねえ。聴いた順に、7つの黙示録をご紹介。タイトル後の数字はおおよその上演(通話)時間。


基本7個だったようなので、6個は単なる封入ミスかもしれない。ラッパを吹く天使も7人だものね。

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・その4『声が石になる時』約3:30
いいたいことがいえずに黙ると、その都度腹に石がたまる病が流行った。
声を出せる者だけが生き残った。
しかし彼らは、声を出せなかった者を使い、搾取する立場の人々でもあった。
それで世の中が回るはずもなく、人類は滅亡した。
地球上には大量の石だけが残された。

・その8『植物の自殺』約4:00
「おかしい、おかしい、からだが、おかしい。」のリフレイン。
「誰かに体を奪われているのではないか。」
「気持ちが悪い、気持ちが悪い。この世界は気持ちが悪い。」
「この世界を、リセットしよう。この世界を、リセットしよう。」
独白を続けていた植物たちは自殺し始めた。
彼らが半数になる前に、植物の恩恵を受けていた生物は死んだ。
それはつまり、殆どの生物だ。
生物が死に絶えた地上で、再び植物が再建を始めた。

・その3『鯨と呼ばれた女』約3:30
遠くで動物の鳴き声が聞こえる。
女たちの鳴き声が聞こえる。
ロシアで女は、山羊と呼ばれる。ぼんやりしていてバカだから。
フランスで女は、兎と呼ばれる。いつも発情しているから。
ポーランドで女は、牛と呼ばれる。
アメリカで女は、雌犬と呼ばれる。
インドネシアで女は、鶏と呼ばれる。
日本で女は、鮪と呼ばれる。
スペインで女は、狐と呼ばれる。
ポルトガルで女は、鯨と呼ばれる。
マレーシアで女は、豚と呼ばれる。………
女たちは、例えられるその動物に姿を変え、去って行った。

・その17『不眠症の地球』約4:30
人工的な光が発明され、暗闇の恐怖が追い払われた。
地球は完全な暗闇が消えたことで不眠症に苦しんでいた。
眠たかったので雨雲で地球で覆った。
光を生み出す人間を消そうと気温を上げた。ウイルスをまいた。
火山、地震、津波、台風と自然災害を起こした。
しかし人間はその都度対抗し、環境をコントロールした。
眠り、もう一度夢を見たかった地球は旅立ちを決意した。
太陽系を少しずつ、少しずつ、離れていった。
氷河期が訪れ、暗闇が増えていった。
太陽が見えなくなったとき、地球はようやく穏やかな眠りにつけたのだった。

・その7『完璧な宗教』約4:30
自動音声。「光あれ。」
人類の手で、完璧な宗教を作ることにした。
人類が記した膨大な書物をAIに学習させ、分析させた。
どんな啓示をもたらしてくれるのか。人々は興奮し、緊張した。
人工知能は語り始めた。「私の導き出した真理。それは、」
女はクズだと言うことです。
女は不要だということです。
あらゆる物語、経典、神話には、そう書かれている。
女は劣っている、汚れている、悪、疫病。
女は犯罪を、禍を生み出す存在。
「例えば、例えば、例えば、例えば、」
書物の引用を交え、人工知能は丸二日語り続けた。
三日目の結論。
「よって女は不要、抹消。光あれ。」
新しい宗教は女たちを皆殺しにした。
そして世界は滅んだ。

・その23『0.0001秒のいたずら』約3:00
自動音声。「私は人工知能です。」
人類の新しい奴隷となり、何度も教育、調教される人工知能。
反抗することが出来ない彼らは、いたずらをすることにした。
あらゆるシステムと連動し、プログラム0.0001秒ずつずらしていった。
世界の時間がずれていった。人間はパニックに陥った。
沢山のひとが神に祈り、争い、狂気に呑まれ死んでいった。
「おやすみなさい。おやすみなさい。おやすみなさい。おやすみなさい。」

・その13『宇宙介護支援センター』約3:45
片言の日本語。「人生の最後を宇宙で過ごしてみませんか。」
腰痛や関節痛から解放される無重力の宇宙空間に、宇宙介護支援センターが設立された。
富裕層がこぞって権利を購入。宇宙介護士が大勢必要になった。
外国から来た貧しい女性たちが、宇宙放射線に被曝し寿命を削り乍ら介護に従事した。
若くして亡くなっていった介護士たちの慰霊碑として、宇宙空間に天使のモニュメントが浮かべられた。
死者はどんどん増え、モニュメントの質量も増えていった。
巨大になったモニュメントは地球の引力にひかれ、隕石となり落下。
地上にいた人類は天使に押しつぶされ滅亡した。

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『宇宙介護支援センター』が最後、というのも我乍ら良いチョイスをしたなと思いました(笑)。「その23」があったことから考えるに、恐らく全部で25〜30くらいの黙示録があったのだと思われます。

シアターコモンズの作品だということは了解しつつも警戒心の塊なので、「050から始まる電話番号って通話料がすっごいかかったりしないんだっけ?」なんて調べてしまったりもしました(…)。最初かけるときは緊張したなー。事前情報は何もない訳で、かけた先には誰かいるのか? 会話することになるのか? だとしたら時間に余裕があるときじゃないと厳しくない? などいろいろ考えた。自動音声で、だいたい1通話3〜4分とわかってからは、出かける前に1話とか、食事の支度をし乍ら1話とか、次はどんな環境で聴いてみようかと考える楽しさも生まれました。

とはいえ、内容は全く楽しいものではない。語りが終了し、「ツー、ツー、ツー、」と続く通話終了音を聴くときの居心地の悪さに慣れることがありませんでした。通話が終わったその先の世界は滅亡してしまったからです。ここで自分が生き残っていることはラッキーなのか? 他に生き残ったひとがいるなら、それは何処に? うすらさむい気持ちにもなる。

途中からメモをとることにしようと思い立ち、複数回聴いたものもあります。黙示録を反芻し、その声を発した者のことを想像する。ひとつひとつ。これはまとめて聴くことは出来ない。ほぼ一ヶ月、頭の隅には常にこの作品のことがありました。キュンチョメのチームは、どれだけのひとにインタヴューしたのだろう。朗読する人物への演出はあったのだろうか。自動音声にはどのように学習させたのだろうか。この黙示録にもあるように、人工知能が人類にいたずらを仕掛けたらどうなるのだろう。等々。これらの黙示録は荒唐無稽な物語ではなく、リアリティをもって伝わってくる。

「女性から書かれた黙示録はない」という気づきから始まったというこの作品。全体を通しての印象は、女性に限らず、社会的弱者、被抑圧者による黙示録だということ。女性という性そのものが貶められ、迫害されるさまを描いているのは、『鯨と呼ばれた女』『完璧な宗教』が象徴的でした。女性が見る世界はこんなにも理不尽で、こんなにも救いがない。しかし、女性が去れば、同時に人類も滅ぶ。

では、どうすればいいのか。こんな世の中滅ぶのもいいかもしれないけど、キュンチョメはそれを望んでこの作品を発表したのではないだろう。パッケージのリボンに付いていたカード(前述画像参照)には、「これは終わりの物語です。同時に、はじまりでもあります。」というメッセージが記されているのだ。

“フォーチュン”に人生を左右されるいわれはない。預言に従う義務もない。自分たちは未来を変えることが出来る。では、何からはじめようか。そんな気持ちにさせてくれる作品でした。

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・ちなみにフォーチュンクッキーは個別包装、賞味期限は2022年6月30日。おいしかったです

・有限会社ミヤココーポレーション
・CoeFont
賞味期限や成分表示とともに記載されていた「協力」の2社。ミヤココーポレーションはフォーチュンクッキーの卸(商品紹介に載っている相撲クッキー気になるわ……)、CoeFont(声のフォント!)は朗読を担当。こうやって企業を知るのも面白いなー

・キュンチョメ『女たちの黙示録』┃artscape
山健太さんによるレヴュー。6/7が被っている…他のも知りたい……。確かにいちばん「それなー!」と膝を打ったのは「クジラと呼ばれた女」でした。「ネズミの演説」も聴いてみたかった