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2020年01月27日(月)
Jagatara2020『虹色のファンファーレ』

Jagatara2020『虹色のファンファーレ』@Shibuya CLUB QUATTRO


ワタシのアフロポリの原点は窪田晴男経由のヤヒロトモヒロさんです、ラブ♥

十三回忌以来、江戸アケミの法事。いやはやまた出席出来るとは思ってなかった、開催に尽力されたメンバーとスタッフの方々に感謝を。今回は三時間半ってとこでした(笑)。疲れはしたがライヴの内容はダレるところが全然なかったなー。出順含めた構成演出もかなりつめて考えたんじゃないでしょうか。ライヴイヴェントとしてもすごくよいものでした。この手のやつって大概毎回ひとりは泥酔してるひとが出て来ていろいろぶち壊すんだけど(…)今回はそういうのもなく、皆大人になったなあと思いました。勿論いい意味で。

今回(やってるのが本人たちなんで語弊はあるが)Jagataraのハコバンがいたってのが前回とは大きく違ったことで、FISHMANS方式といおうか……Jagataraを聴きにきたひとたちにJagataraの楽曲を提供することに徹していたのがよかった。バンマスに抜擢された宮田岳さん(ex. 黒猫チェルシー)の貢献がデカい。いちばん若いのにあのコワモテ(ほめてる)たちをようまとめたなあと感服。そしてすげえいいベース弾きますね! 今後注目していきたい。

開演前の間、フロアにはずっとJagataraのライヴ音源が流れていた。フルハウス、熱気もすごい。開演時間が過ぎると、待ちきれなくなったひとたちが音源にあわせて唄い出す、その歌声が拡がっていく。これには感動。図ったかのように「もうがまんできない」が終わるとともに暗転、大歓声。出て来たのは……吹越さんでした。そうだよ今回出演者が発表されたとき、吹越さん? 何する? と思ったんですよね。ソロアクトでもおなじみの燕尾服で盛装。ソロアクトでもやっていた、「オー・ソレ・ミオ」にあわせて、傘入れビニール袋をいっぱい繋げたやつに息を吹き込んでって長くするやつでした(笑)。途中から村田さんが登場、セッションになる。トロンボーンの音色とスライドが袋の伸縮とシンクロする。やがて袋はフロア迄伸びていき、やんややんやの喝采です。ここで、こんな形でソロアクトを観られるとは〜!

ちなみにこのネタね。


EBBYに「EBBY!」「EBBYいけ!」なんて声がとぶ。「いけって(笑)いきますよー!」とまずはEBBY vo.の「裸の王様」。ゲストヴォーカルのトップバッターはトモロヲさん。このひと、このメンツのなかでも年長組の方なのに、いつもこういう飛び道具っつうか起爆剤みたいな使われ方されるの最高ですね。久しぶりに上空に唾をはくアクションも観られてシビれた。以前本人がいってたけど「でもあれって、上に吐くから結局自分にかかるんですよ(笑)」。そういうところも最高。

二番手オーケン。開口一番ボソッと「ナゴムレコードが続きますね……」、ドッとウケる。「『タンゴ』が好きで好きで、あちこちで弾き語りでカヴァーして。あるとき町田さんと共演したんですけど、そのとき町田さんに『大槻くん歌うまなったなあ』っていわれて。そのあと巻上さんと共演したら『大槻くん、歌うまくなったねえ!』っていわれたんですう。大好きで何度も何度も唄ってたら、そのうち『タンゴ』って僕が書いたんじゃないかなあって気がしてきて……あ、ちがった。って」。

鮎川さんが登場すると「鮎川さんだよ!? 鮎川さんと共演できた〜!」とEBBYがキャッキャ喜んで、こっち迄ニコニコする。言葉の怖さを知っているであろう、言葉を生業とする町田さんが静かに伝える歌声。余談だが町田さんはもともと朝型で、ライヴは夜だったのでそのときには疲れ果てていていつも満足のいくものにはならず苦しかった……みたいな記事を最近読んだばかりだったので、今日ももう疲れて眠いのかもなあと思った(笑)。それでも来てくれたんだなあとしみじみもした。

アケミが亡くなった年に生まれたという折坂さんは「Jagataraに影響を受けた友人たちは沢山いて、出られて羨ましいと。それに恥じないように」というようなことをボソボソと話し唄い出す。フロアが静まり返る。十三回忌のときこだまさんが語った言葉を今でもよく憶えている。死んだひとは現在起こってることを知らない。何かニュースがあると、ああ、アケミはこのことを知らないんだなと思う、と。この歌で描かれている中産階級は、今のこの国ではもはや中産階級ではないかもしれない。あの時代の「中産階級」を知らない世代が唄う中産階級の歌。それがこんなにも凄みをもって響く。アケミは今の日本を知らない、アケミは自分の法事が行われていることを知らない、アケミは折坂さんを知らない。そのことをまざまざと思い知らされる。

ゲストヴォーカル皆よかったけど個人的にいちばんキたのはエージさんとせいこうさんだった。抜けがよく力強いエージさんの歌声、キレッキレのせいこうさんのラップ。近田さんは「HEAVY」のフレーズを出して来た。VIBRASTONE! 隣の年配のふたりづれが「かっこいい、かっこいいよ!」と跳ねる。杖をついているひとが身体を乗り出す。涙ぐんでるひとがいる。ここの客層だと私も若手の部類なんですが、ステージだけでなくフロアにも「こういう大人(まあ充分大人なんだが)になりたいなあ」と思わせてくれるひとたちがいるというのはなんとも心強いですね。

アンコール、年功序列でゲスト紹介しますって最初に呼び込まれたのが鮎川さん、次が近田さんでちょっと驚いた(…)。近田さんも大病されたけど、今はとりあえず落ちついてるようでよかった。皆で「もうがまんできない」を唄ったんだけど、世代別にかたまってマイクを分けあってるのが微笑ましかったです。せいこうさんが「重鎮が楽屋にいっぱいいるのでもういづらくて、オーケンなんか5分くらいで出てっちゃってた」といってたのウケた。あとぼそっと書くと、トモロヲさんと町田さん……ウッ町蔵といいたい、が並んで唄ってるの見るとうれしくなりますね。『SWEET HOME』の傷が深いのでね(わかるひとだけわかってくれ)。

Jagataraはアケミの死後、ナベさん、篠田さんも亡くなって、「これからどんどん死ぬぞ」なんて寂しくなったものですが、その後はなんとかだいたい(だいたいいうな)生きてる。音楽の現場で活躍し続けているひともいるし、それこそ『ロビンソンの庭』の住人のようになっているひともいる。ゲストにしてもお客さんにしても、来たくても来れなかったひとはいっぱいいる。こだまさんが出てきたときは松永さんや朝本さんのことを考えたし。

ヒヤリとする箇所は確かにあった。おまえはおまえの踊りをおどれ、この言葉を見失わないように。旧譜が再発され、サブスクでも聴けるようになった。Jagataraが聴き継がれていきますように。次回があるかは判らないし、自分が出席出来るかも判らない。でも、バラバラに集まって、バラバラに帰っていけばいいんだ。ECDがそうだったように。

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セットリスト

op. オー・ソレ・ミオ〜インプロ / 吹越満
01. 裸の王様
02. でも・デモ・DEMO / 田口トモロヲ
03. タンゴ / 大槻ケンヂ
04. Black Joke / 鮎川誠
05. Fade Out / 桑原延享
06. アジテーション / 町田康
07. 中産階級ハーレム / 折坂悠太
08. ある平凡な男の一日 / こだま和文
09. つながった世界 / 向井秀徳
10. れいわナンのこっちゃい音頭 / 永山愛樹、桜井芳樹
11. 都市生活者の夜 / 七尾旅人、不破大輔
12. みちくさ / 高田エージ、いとうせいこう、近田春夫
13. 夢の海 / 江戸アケミ
encore
14. みんなたちのファンファーレ
15. クニナマシェ
16. もうがまんできない / 全員(フロアにもマイクリレー)
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・Jagatara2020
Oto(g)/ EBBY(g)/ 中村ていゆう(drs)/ 南流石(vo, dance)/ ヤヒロトモヒロ(perc)/ エマーソン北村(key)/ 吉田哲治(tp)/ 村田陽一(tb)/ 宮田岳(b)/ 関根真理(perc)/ 山崎心(sax)/ 北陽一郎(tp)

・よだん。今回の物販Tシャツ、「このアケミ、フェミ・クティみたいだねってつくった。アケミ・クティだよー」とかいうてましたが周囲では「江頭」「江頭にしか……」という声があがっておりました。うん、江頭(江頭だいすき)