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2019年12月01日(日)
『EXIT イグジット』

『EXIT イグジット』@新宿武蔵野館 シアター1


ポスターのとおりなんですが、これがまーハラハラドキドキスッキリワクワク、楽しかった!

原/英題は『EXIT 엑시트』、イ・サングン監督作品。製作にはリュ・スンワンの名があり、成程アクションエンタメ映画としても快作でした。2019年7月に本国で公開され大ヒット。日本にもファンが多い少女時代のユナが主演ということもあり、日本での公開も早かった。有難い〜。ワタシの目当ては同じく主演のチョ・ジョンソク。実年齢より10歳は若い就職浪人の青年役です。

ヨンナム(ジョンソク)とイジュ(ユナ)は大学の登山部に所属していた先輩後輩。イジュに告白してあっさりふられたヨンナムは、卒業後もいいことがない。数々の就職試験に落ちた彼に家族はうるさい、とくに姉の圧がすごい。家でゴロゴロしてるのもなんなので、とりあえず毎日出かけてせっせと鉄棒エクササイズ。公園の名物おじさん(…)になっている彼を甥っ子は他人といいはる。そんなある日、母親の古希祝いパーティで訪れたホテルで働いていたイジュと再会。彼女は副店長になっていた。そのとき街に毒ガスがまかれるというテロが起こる。ガスの成分は未知、中和法もわからずとにかく逃げるしかない。ガスを避けるには上階に行くしかなくて……? 以下ネタバレあります。

序盤の家族の近さ、長男の立場、家長制といった韓国ならではの人間関係がむちゃむちゃ過剰で、うわこれキッツいわーと思っていたんだけど、まあそれは後に昇華されるんです。就職もせんでなんばしよっとか、登山部の道具もなんて捨てんとか(九州弁に翻訳しています)ってさんざんイジッていた長男を実は家族みんなが愛していて、長男は長男で登山部のトレーニングで培った体力と知恵をピンチに活かして……という。パーティ会場のビュッフェを持ち帰ろうとパックにつめこむ家族を見た長男が「恥ずかしい!」と顔を覆う図も笑えた。リュックから飲みものの瓶がわんさか出てきて「なんでこんなにつめこんでるんだよお!」ってとことか。後に笑うためのフックだというのはわかっていて、さまざまな小道具も伏線だというのがわかるので、ある意味構えず観られます。あの花火も大団円! って感じでよかったな。

とはいえキッツかったけどな…あの姉ちゃんの詰め寄り方とか……容赦ないわ……。

コメディ仕立てなので「きっとこのふたりは無事家に帰れる!」という安心とともにドッカリ座って悠々と観られる……筈なのにそうじゃない。この塩梅がよかったなあ。次々に訪れるピンチ。ずさんな安全管理、自衛しか頭にないホテルの店長。といった人災的なトラブルは『タワーリング インフェルノ』を筆頭としたさまざまなパニック映画をガイドにしたと思われますが、仕上がりはとてもポップです。ドローンや動画配信を善意のツールとして使うところにも希望が持てるし、常に笑いを忘れないところもいい。何より主役のふたりの懸命さがとても魅力的。こどものように泣きじゃくるふたりがとびきりキュートで、応援したくなってしまう。家族やこどもたちに救助の定員を譲ってしまうところなんてもらい泣きしちゃう。そしてふたりのなかのひと(ジョンソクとユナ)のアクションに感服です。どのくらいスタント使ったかはわからないけど、序盤の鉄棒おじさんは自分でやったとジョンソクくんがいっていたし、相当トレーニングを積んだのでしょう。といえばそのインタヴューが載っていたパンフレットで、ジョンソクくんは本国では「千の顔を持つ男」と呼ばれていると書かれていた。き、北島マヤ(わかる気もする)。

イ・サングン監督は今作が長編デビュー。テンポよいアクションシーンの扱いとか、もはや手練の域でした。今後も楽しみ。

それにしてもカラビナを見ると『生徒諸君!』の沖田くんを思い出す世代で、しかもここ数ヶ月、スコット隊の南極探検についての文献を読み漁っていたのでいろいろ思い出されてぼんやりした。遭難するってホントにつらい、当事者もその家族も。皆無事に帰って!

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・EXIT イグジット ┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。公式パンフよりも詳細なキャスト/スタッフクレジット、とても助かります有難うございます!

・映画EXIT が法令を改正させる⁈
屋上の鍵が開いていない、というのは安全面からして当然ではあるんだけど(今作の場合店長の鍵の管理がずさんだったのが問題)こういうことがあると怖いよね。『トガニ』が大きな例だけど、韓国映画が現実社会に及ぼす影響力の大きさは本当にすごいな