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2019年05月30日(木)
カーネーション × 高橋徹也

カーネーション × 高橋徹也@CLUB Que


活きのいい花形歌舞伎と千両役者の大歌舞伎みたいな対バンでした、何そのたとえ。いやー、いいもの観た。『THE 四半世紀 Que25th【QueRTER PARTY】』企画のイヴェントでした。CLUB Que25周年おめでとうございます!

直枝政広×高橋徹也弾き語り共演から三年、遂にバンドでツーマンです。まずは高橋さんから。
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Vo, G:高橋徹也:、B:鹿島達也、Key:佐藤友亮(sugarbeans)、Drs:脇山広介、Pedal Steel:宮下広輔
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かなり練られたセットリストだったように思います。カーネーションとの対バン、60分の持ち時間、それならこうだ、という。プレゼンというと語弊がありそうだけど、一見さんに優しいと同時になめんなよと挑む意気が込められていたように感じました。カーネーションを聴きにきた方、ウチのバンドのポテンシャルお見せします。どうぞ宜しくね。笑顔で握り拳。みたいな。

「5分前のダンス」のイントロ、澄んだ高音のヴォーカルが水面へ滑り出すように静かに、しかし力強く響く。あっという間に場の空気を変える。そして中盤の「シーラカンス」、これがすごかった。ドラマティックな曲の構成、ストーリーテラーぶりを発揮する歌詞と歌声、映像喚起力抜群の演奏。地下のライヴハウスごと深海に沈んでいくよう。アウトロが圧巻、演奏が冴えれば冴える程プレイヤーたちはリラックスしているように見える状態で、ずっとポーカーフェイスで演奏していた宮下さんがニコッと笑う瞬間も。ああ、手応えあるのだなあと思いました。続いての「新しい世界」「大統領夫人と棺」で更にボルテージをあげる。ここのリズム隊がまーいつものことだがすさまじく、「新しい〜」の“ダチーチーチー”、「大統領〜」2コーラス目の展開と、ふたりのコンビネーションは鳥肌もの。最新曲「友よ、また会おう」でフィニッシュ、緊迫感に満ちた演奏からのびのびとした開放感。構成も素晴らしかった。

この日は高橋さんの声のコンディションがとてもいいうえに、発声の仕方もちょっと変えていたように感じました。「新しい世界」で次々と転調する後半も、高音を地声で強引に出そうとせず力を抜いた発声。なんというか、高橋さんの声ってとても繊細なつくりなので(それが魅力でもある)、そのときの喉の状態によって歌が声につられてしまう印象があったのですが、この日はそれを乗りこなしていたように思えたなー。鬼に金棒ですやん。

そんな絶好調(に見えた)高橋さんでしたが、「あー……いやー………(何かいおうと考えてるっぽい長い間)やりましょっか」、「パンダが好きなんですよー……毎日寝る前、おふとんに入ってから『毎日パンダ』を見るんです。ああ、シャンシャン大きくなったなあ、あの頃はまだピンクだったなあ、なんて思い出したりしてさびしくなったりして」とMCは通常営業。カーネーションファンの方がどう受け取ったか興味がある。でも「直枝さんとは2013年に所沢で弾き語りをご一緒した(・BEDTOWN vol.9@所沢MOJO┃Togetter)のが出会いで、いつかバンドで、と思っていたので本当に嬉しいです」とのことでした。

さてカーネーション。
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Vo, G:直枝政広、B, Vo:大田譲、Drs:張替智広、Key:佐藤友亮(sugarbeans)
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高野寛さんのサポートをしていた矢部浩志さん経由でカーネーションを知って、もはや三十年くらいか。直枝さんがまだ政太郎で、ミュートマジャパンでヘヴィロテだった「EDO RIVER」が大好きで、『LIVING / LOVING』もすっかり愛聴盤、周りにもコアなファンがいるのになかなか縁がなく、バンドセットで観るのは初めてでした。腰が抜けました。骨が! 太い! 音が! 強い! 包容力が! デカい! 知らない曲もあったけど「アダムスキー」が聴けたし、何より「EDO RIVER」を聴けたのがうれしかった。しかも佐藤さんがKey弾いてるんですよ。キエー。

直枝さんのMCが面白い。「高橋くんと初めて対バンするってんで、sugarbeansにいろいろ訊いたんだけど。インド語で。……(佐藤さんと向かい合ってナマステのポーズ)でも何もわからなかった。なのでいつもどおりでいきます」「しかし皆さん、さっきと視線が違うね(と高橋さんのマイクの高さ辺りを目視)……ねえ。もう……シャツをベルトなしでタックインって……あんな着こなし俺もしてみたいわ。皆さんいいもの見ましたね」。「大統領夫人と棺」のリーディングにハマッたらしく、その後の大田さんのMCに載せてギターを弾いたりしてました。やめてよ、何でギター載せてくるのよという大田さんに「高橋くんみたいにかっこいい朗読をねえ、」「彼女はー、とかいって」。アンコールで一緒に出てきた高橋さんにも「腰が俺の胸の位置にある」といじっておられました。ウケる。応えて高橋さん、「そんな、こうやって笑ってますけど、僕傷付いてるんですよ」。いやはや容姿をほめられるって照れくさいし困っちゃいますよね。大田さんのMCも面白かった、おそばの話とか。そんなふたりが演奏に入るとまー骨が! 太い! 音が! 強い! 包容力が! デカい! そしてちょうスウィート! 直枝さんのギターカッティングと大田さんのドライヴするベース、厚みのあるハスキーな声で唄われるロマンティックな歌詞、ソウルフレイヴァーだけど他に似ているものが見つからない、カーネーションはカーネーションとしかいいようがないのねと平伏。

いやー今月はパール兄弟とムーンライダーズといい、長年やってきたひとたちの地力というか息をするように演奏するさまというか、常に音楽とともに生きてきたひとたちが鳴らす音をお裾分けしてもらうことの有難さにしみじみした。記録として残る音楽という芸術にも感謝ですよ。演奏は今しかなくて、曲は残っていつでも聴ける。音楽は時間とともにある。

アンコールはカーネーションの「いつかここで会いましょう」。高橋さんはヴォーカルと、タブペンがついたトランジスタラジオみたいな楽器? で参加(後述ブログで「スタイロフォン」という楽器だったと知る)。この曲は高橋さんからのリクエストだったそうで、「僕らの共通点って、郊外ってところかな」と直枝さん、「“支流に沿ってゆこう”って歌詞にすごく共感するんです」と高橋さん。この日はフロアの反応がとてもよく、どちらの演奏にも「これは!」というところがあると相応のレスポンスが必ずあったのですが、まずは直枝さん、続いて高橋さんのヴォーカルが入ったときの「わあっ」という歓声は忘れがたい。幸せな時間をすごせました。

演奏を終えた高橋さんはカーネーションのバンドメンバー全員に握手を求めてらっしゃいました。皆笑顔。客電がついても拍手がやまず再び出てきた三人、ダブルアンコール! 朗読コントみたいなノリで直枝さんのギターにのせて「今日は、きてくれて、ありがとう〜」と朗誦する高橋さん、ドッと笑いが起こる。「いやあ、曲準備してなくてね」と直枝さん、笑いと拍手とともにおひらき。ニコニコで帰路に就きました。

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・高圧鉄塔の向こうへ┃夕暮れ 坂道 島国 惑星地球

・『カーネーション × 高橋徹也』感想まとめ┃togetter
chinacafeさんがまとめてくださいました。はー読み返すー、甦るー

・そうそう、アンコールで高橋さんがFRED PERRYのポロシャツに着替えて出てきたらなんかフロアが「ほおお……」って空気になったことは書き残しておきたい(笑)。直枝さんに相当いじられたあとだったので「わあ、ほんとシュッとしてはるわ〜」的な感じじゃなかったですか

・あとひとつ。「徹也ならてっちゃんって呼ばれてた? 大人になってもてっちゃんって呼ばれる?」と興味を示す大田さんに、「呼ばれなくなりましたねー。今でもそう呼ぶのは親戚か、昔のバンド仲間くらいですねえ」と高橋さん。「今でも呼ばれたい? 呼ばない方がいい?」「呼ばれたいっす」。そういえばBUCK-TICKのあっちゃんはずっとあっちゃんと呼ばれてるなあ(この翌日、櫻井さんが24年ぶりにミュージックステーションに出演とのことでなんとなく思い出した)。てところから長く続くってほんと有難いことだなとまたしみじみ。よよよ