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2016年12月24日(土)
『移動レストラン ア・ラ・カルト ―美味しいものは心を動かすところにある』

『移動レストラン ア・ラ・カルト ―美味しいものは心を動かすところにある』@東京芸術劇場 シアターイースト

『ア・ラ・カルト』が移動レストランとして再びのリニューアル、これはすごくよかった! 昨年モーション・ブルーで行われた公演の手応えから「移動レストラン」のアイディアが生まれたようです。また会えた、うれしいかぎり。

初演からのオリジナルメンバーである吉澤耕一(演出)、高泉淳子(台本・出演)、中西俊博(音楽監督)に加え、リニューアルからのメンバーである山本光洋も引き続き出演。釆澤靖起、篠田竜が新しく参加、バンド編成は中西俊博(Vn)、竹中俊二(G)、ブレント・ナッシー(B)、パトリック・ヌジェ(Acc、Tp、Vo)。竹中さんはおなじみですね。林正樹(Pf)が不参加なのはスケジュールの都合かな…(観劇にはいらしてたそうですよ)と思っていたのですが、劇場に入ってみると……ステージが、せまい! グランドピアノを置くスペースがない……というか、置けはするだろうけど(青山円形劇場での公演でもピアノは客席に食い込んでるような位置でしたし)窮屈さは否めないかなーという感じ。レストラン内に置かれるテーブルと椅子も3セットから2セットになっていました。客席はコの字型に配置、正面の最後列はN列。円形の客席だと最後列でも5〜6列だというところ、やはり距離があります。ちょっと寂しい。

しかし! しかしですよ。バンド編成が変わったことで施されたアレンジと演奏が素晴らしく、そのコンパクトな感じが「移動レストラン」の名にふさわしく、『ア・ラ・カルト』という作品の普遍の強さと時代に寄り添い生きていく柔軟さ、たくましさをひしと感じたのでした。廃墟にも倉庫にも見えるステージに音楽家が現れ、軽口を叩き乍ら楽器のセッティングをはじめる。ブレントとパトリックのひとなつこいふるまいに、あっという間に魅了される。ギャルソンが現れ、テーブルと椅子が持ち込まれ、見知った顔が笑顔で登場する。演奏がはじまる……旅団のようだ。さまよえる楽団ならぬさまよえるレストランめいてきた『ア・ラ・カルト』、幻にも映るがステージがあるかぎりそれは現実。円形がなくなり、本多愛也さんが亡くなり、それでもクリスマスシーズンにレストランは開店する。粋な演出に思わず涙ぐむ。

「どうなることかと思ったけど」「池袋にきたの?」「どこで開店しても追いかけますよ」といったタカハシ(おなじみ!)の台詞に泣き笑い。公設の劇場でおまえ……といったギャグに大笑い。年老いたふたりがこれからも続くことを信じてやまない、しかし実際には今年で閉店してしまう銀座の百貨店の話題にほろり。未来は不安ばかり、でも未来があることで新しいものに出会える、前を向ける。高泉さんは前を向いている。人生のほろ苦さを、時間による癒しを、そして喜びを描き演じる。観続けることが出来てうれしい。

この日のゲストはROLLY。いや〜イヴにROLLYの「Ave Maria」聴けて感激。「酒は大関」も聴けて感激(笑)。芝居も歌も演奏も、ROLLYたよりになるわー。高泉さんが「日本の宝」とか言うてましたがほんとほんと。唯一無二の表現者。

今回のワインはチリワインSUNRISE、宇野亜喜良さんによるイラストラベル付。



これも時代とともに変化してきたもの。以前は名物サービスだったが、飲酒運転による事故の報道をうけて有料になった。『ア・ラ・カルト』会場で飲酒した観客が事故を起こしたわけではないが、もし何かあった場合、無料でアルコールを提供した側に責任が問われてしまう。呑む側が自分の意志で購入し、責任の所在を明らかに出来るようなシステムになった。カップでの販売が続いていたが、今回は「持ち帰れるように」とミニボトル。これはいいわー。記念になるし、気持ちとしてはパンフ代わりに、と購入。呑めないのにどうする(笑)。

「今後の予定は未定」とのことですが、再会出来ることを信じて気長に待っています。今年も心あたたまる素敵な夜を有難う。

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・『移動レストラン アラカルト−美味しいものは心を動かすところにある』公式サイト