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2015年02月02日(月)
『自作自演』飴屋法水×江本純子

芸劇+トーク 異世代リーディング『自作自演』第12回 飴屋法水×江本純子@東京芸術劇場 シアターウエスト

リーディングはふたりで一時間(ひとり30分)、休憩をはさんでトークと言うタイムテーブルでしたが、休憩時に時計を見てみれば20:30過ぎ。このふたりがただ朗読して終わる、と言うことはないだろうなあと思ってはいましたが……。トークは駆け足となりました。

最初にふたりと司会進行の徳永京子が登場、挨拶。皆にこやか。飴屋さんと江本さんは小学生の男の子と女の子のようにもじもじしている。徳永さんに「劇作家…と言うことでよろしいですか?」と言われた飴屋さん、ニコニコし乍ら激しく首を振る。「では、演出家…」再び拒否。結局何って言ったときにちいさく頷いたんだっけなあ、パフォーマー? 演じるひと? 音響家だったかな…忘れてしまった(悔)。劇作家、演出家、と呼ばれた江本さんは「はいっ、全く問題ないです!」とキッパリ(笑)。

舞台上にはCDJとミキサーの卓。まずは江本純子による短編「むきだされた天使」。「これは飴屋さんの機材なんですけど、私も一枚CDを持ってきましたので、使わせてもらいます。初めてCDJってものを触ります。壊さないようにしないと……」「私毎日ジョギングしてるんですけど、そのコースがだいたい30分なんですね。なので自分のなかでの30分と言う時間は確かなものです」。リニューアルオープンした道玄坂のストリップ劇場、召集された30人のダンサーたち。出番の多さによって15名ずつ二部屋の楽屋に分けられる、そこで起こった窃盗事件。キャラクターをめまぐるしく演じ分ける。登場人物がせわしなくLINEをやっているさまを、実際に携帯バイブの音を鳴らして表現する。スピードがどんどんあがり、途中登場人物たちが混濁するところはライヴの醍醐味。抜き身の迫力。

続いて飴屋法水、骨壷を持って登場。サイドテーブルにそれを置き、サインペンで字を書いていく。“おばけ もののけ ひと”。『武満徹トリビュート』にも登場したものだ。「自作自演ってあまりいい言葉では使われないですよね、ヤラセ、そうヤラセだ……」と言う呟きからスタート。「この場で考え乍ら、いろいろ読んでいきます」。卓前に座って音を出す。思えば飴屋さんが音響オペするのを「見る」ことは普段叶わない訳で(ライヴは別として)、そういう意味でも非常に貴重。表情が厳しい。さっきはにかむように笑っていたひとの、違う顔。心臓の鼓動音。スピードを変えて、ゆっくりめに設定する。それをキープしたまま、話し始める。自己紹介的なものから、娘の話。人間が生殖して、1たす1が3になった。生まれて一年経ったある日、突然彼女は二本足で立った。飴屋さんもハンドマイクを持ち立ち上がる。誰も教えてないよ、誰も教えてないよ。なのに立った。右足、左足、右、左、交互に足を出して歩いた。誰も教えてないよ、誰も教えてないよ。右、左、右、左。このとき右と言うと左足を、左と言うと右足を出していた。たまたまなのか、意図的なのか、本当に右と左を間違えているのか…冒頭の「ヤラセ」と言う言葉を思い出す。誰も教えてないよ、誰も教えてない……リズムが生まれる。やがてガクン、と崩折れる。脱線したリズムが繰り返される。

サンプリングした虫の羽音だったり、音楽だったり。音は続く。「ブルーシート」の点呼のシーン、灰色のねこのシーン。動物と人間の違い、人間しかしない行動。「教室」、くるみちゃん来てる? ここでゲストの登場です、ケンタッキーフライドチキンさんでーす。バケツ型のパッケージからチキンを取り出し、食べる。骨が残る、これはどうしますか? くるみちゃんどうする? 客席後方から声がする、「捨てる」。どこに捨てる?「ゴミ箱」。作品のなかの登場人物が実体を持って現れる。さてこちらは骨壷です。僕のお父さんの骨が入っています。これは捨てられない。何故? とか言ってこれはメレンゲで作ったクッキーなんですよ、きっと食べたら甘いんだ…サクサクサク、と言う音が響く。あんな乾いた音がするのだなあと思う。この辺りから、虚と実の境目がどんどんなくなっていく。蛇には瞼がない? 黒いパンツ、死んだら森に埋めて、虫は幸せか? さまざまな作品のさまざまなフレーズがポツリポツリと、しかしリズムを持って放たれる。「ブルーシート」の生徒たちがわいわいと話すシーンは圧巻。

「じ め ん」、この作品は夢の島で上演しました。舞台後方のスクリーンに映し出された衛星写真には日本がない。2011年、僕は10歳。2021年、僕は20歳。2050年……昔ここに日本と言うちいさな島がありました。今はもうありません。だってそれは夢だったから。夢の島だから。両親の話、僕のお父さんとお母さんはお見合い結婚で…お見合い、今のひと分かるかな? これは僕が生まれたときの写真、これはお姉ちゃんとの七五三の写真…これはお父さんの会社の保養所かな、電力会社だったからほらパラソルに電って書いてある。MARKとのコラボライヴで使用したテキストと、インプロは続く。もはや新作だ。テキストは既存のものだし、飴屋さんが話す内容も一貫している。しかし、このひとが提示するものは、毎回「今、ここではこれしかない」ものになる。

初恋のひとの話をします。名前は江本さん。……ん? ふたりで映画館に行って『ジョーズ』を観て…スピルバーグのね。最後ジョーズにアクアラングを突っ込んで爆発させるの。嘘です、『ジョーズ』なんて映画はありません、スピルバーグなんて監督もいません。だって、爆発する訳ないじゃんジョーズが。嘘、嘘、ヤラセ。ねえ江本さん、純子さん、僕たちはこのまま一緒に暮らしていく? それとも別れる? 別れたら僕たちは教えてしまうよね、娘に。人間はいとも簡単に離れられると言うことを。ずっと一緒にいたら、人間はそう簡単に離れられないと言うことを教えてしまうよね。客席のある位置を睨んで喋る。とても鋭い目。猛禽のような目。見ている先は江本さんがいる席だろうか、それとも、彼のパートナーであるコロスケさんがいる席? 自作自演、ヤラセ。嘘と本当。

音楽は流れる。言葉はリズムに乗る。強い言葉。強い音。「人間の数え方は1ではない」、礼。終演。

卓上には鈴も用意されていたが使用せず。転換のときスタッフが落とし、リン、と澄んだ音をたてた。

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さてトーク。ダウンを着てもう帰るんかと言う出で立ちの飴屋さんが出てきてうろうろ、どこに座ろうか迷っている。水が用意されているのに自分でお茶のペットボトルを持ってきている。上手側の椅子に座りぽつんと待つ。江本さんも徳永さんも現れない。どうしよう、と言った困惑顔のままニコニコする飴屋さん。客席がなごむ。やがてふたりが出てきて「飴屋さんが真ん中に座るんですよ」「もう座っちゃったから…」「ダメです、決まってるんですよ」「まだ休憩時間あるんですけどもう始めちゃいます?」。一気に場が賑やかになる。飴屋さんが時間より早く出てきてしまったらしい(笑)以下おぼえがき。

と●今回は江本さんのリクエストで飴屋さんを
え●そうです、『ライチ・光クラブ』を演出したのでそこで接点が出来て、これは是非と。失礼な話ですが今日初めて舞台を拝見しました
と●それを受けて飴屋さんは……
あ●うん、ともだちになろうと思って。僕も江本さんの作品初めて観ました。『ライチ〜』は観たんですけど、江本さんの書いたもの、舞台に立つのを観たのは初めて
と●異世代リーディングと言うことで、歳の離れたひとを、と言う企画なんですが、おふたりは二世代くらい離れていますね
あ●えっ、そんなに離れてるの!? 僕50過ぎだけど……
え●そうですね、20年弱は離れてます

と●今回はこの企画で初めて、出演者が客席で観たんです。これ迄はお互いの作品を、舞台袖や楽屋で観ていたんですけど、江本さんが客席で観たい! と。最前列でと言われたんですが、配券の方が「そこはお客様の席です」「お客様にもう売っています」と
え●ええ! もう今回私は前座で、飴屋さんの前に盛り上げようと言うつもりで。これ(飴屋さんの作品を客席から観られたこと)はもう私にとってギフトでした
あ●でも、共通点あったよね
え●そうですねえ…あの、古屋兎丸さんから飴屋さんがライチに出たときの話を聞いてて。腰に巨大なドリルペニスを付けて〜
あ●うん、そう。江本さんの短編、観る前に読んだんだけど、
え●えっ読んだんですか!?
あ●うん、読んだ。で、あの、ブルブルするやつが……
と●そうですね、物体としての肉体と、ヒトガタとしてのローターが
あ●あっあれローターだったの? ヴァイブかと思ってた
え●やっ、今は一体型のもあるんです。だから大丈夫です、問題ありません!
と●(笑)そういった人工的なものと肉体的なもの、いきもの、と言ったところに共通点があったと思います
え●そうですねえ、共通点は「性器」でしたね

あ●そうそう、いきもの、動物…毛皮族。毛皮族って格好いい。なんで毛皮?
え●今だったら(そんな名前は)付けないですね。なんだろう、ゴワっとしてて、重たいものって言うか……
あ●財団、江本純子。財団って何?
え●今だったら付けないですね(再)! 劇団、本谷有希子があったので最初劇団、江本純子にしたいって言ったら制作からダメって言われて。じゃあ財団にしようって。財、財産ですからね! 財産がないと芝居出来ないし、演劇も財産ですよ。でもなんでつけちゃったんだろう……
と●江本さんは、揺れますよね……
え●そうですね、揺れっぱなしですね!

と●飴屋さんの作中、江本さんが登場しましたが、これは最初から考えて?
あ●いや、その場その場で考えていって
と●使用する音とかは決めていたんですか? 小道具も使っていましたが
あ●使おうって音や小道具は決めて持って行ったけど、どこでどう使うかはその場で考えました
と●映像も使われましたが
え●今朝劇場に来たら「飴屋さん映像使うそうですよ」って言われてえっ!? って慌てたんですけど
と●リーディングなのに。それにしても飴屋さんの使う言葉は強い…短い言葉で。タイトル等も格好いいですが、あのタイトルってのは降ってくると言うか、降りてくるんですか? 公演を打つとタイトル先行の場合もありますが
あ●降ってはこない。よく判らなくて…内側から出てくる訳でもなくて……見えてくる
と●……漢字で?(全員笑)
あ●うーん、よく判らない

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江本さんは前座と謙遜していたが、先攻で生々しい作品を選択して提示し、後攻の飴屋さんがそれを受けた上で準備してきたテキスト群からセンテンスを選択し、そこに虚実を織り交ぜていったのだと思う。感覚的であり乍ら、やはりこのふたりでしか成し得ない、この日ここだけのコラボレーション。

・『自作自演』<第12回> 東京芸術劇場