初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2014年12月21日(日)
『海をゆく者』

『海をゆく者』@PARCO劇場

初演の評判がたいへんよかったので、すぐ再演があるだろう、そのときは是非観に行こうと思っていました。そしたらまー五年経ちましたよね……しかし、初演と同じキャストが揃いました。これは待った甲斐がある! てなもので。その間キャスト五人中四人が還暦を越え、吉田鋼太郎はブレイク? を果たし(たらしい…いや、該当のドラマどっちも観てないんでピンとこない……)。そして役柄では恐らくいちばん年長であろうリチャードを、いちばん歳下の吉田さんが演じていると言う。脂ののった役者たちの魅力が存分に堪能出来る作品でした。

呑んだくれ五人が過ごす不思議なクリスマスイヴ。一触即発の諍い、暴かれる過去、危険なギャンブル。そこで起こる奇跡。思い起こせば数年前のクリスマス直前、『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』を観て相当ドンヨリしたものでした(内容は素晴らしかったヨ!)。これで〆るのはあまりにつらしまだわと、この年はそのあとに『ア・ラ・カルト』を観るというスケジュールを組んだんでしたよ……。それにしてもこの二作品といい、今年観た『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』といい、いや、アイルランドが舞台の作品って、観るもの観るものアルコール依存と言う深刻な問題が出てくる。そこに離れられない家族や仲間との愛憎が絡んでくる。登場人物たちは酒が原因で人生を踏み外し、破滅への道を辿る。ここらへん、自分の観劇歴ではマーティン・マクドナーが刷り込みになります。

ところがこの『海をゆく者』には、信仰と、周囲の献身がある。献身は信仰からくるものでもあるだろう。どんなに呑んだくれていても、罵りあっていても、家族が、仲間が、最後の崖を踏み外さないように見守っている。終盤、リチャードがまるでひとりごとのようにシャーキーへと呟く言葉は、ストーリーの流れからすると過剰かもしれない。それ迄横暴にすら映ったリチャードの振る舞いは、シャーキーへの献身だったのだと、あの台詞に集約される迄もなく感じとることが出来るからだ。しかしそれを敢えて口にする。ここに演劇の、言葉を信じる力がある。作者のコナー・マクファーソンは若くして成功を手中に収め、その後アルコール依存に苦しめられたそうだ。あの台詞は、彼がかつて誰かに言われたことかも知れない。誰かに言われたかったことかも知れない。ひとは「それでも人生にイエスと言う」のだ。

大谷亮介には、今生きることに躓いている盟友がいる。周囲の理解、献身を得て、彼が再び筆を執ることを祈る。どんなひとにも夜は来る。そして夜明けも来る。素敵なクリスマスを。

-----

その他。

・(壁ドン)(壁ドン)(小日向さんが壁ドン)…あのシーンのとき、客席の思いが吹き出しになって見えた気がしましたよね……初演時にはなかった連想(笑)

・ストーリー展開を敢えて調べずに行ったので、序盤は下戸として平田さんに至極同情してましたよ…酒入ってたからって許せることと許せないことがあってだな。酒が原因でイヤな目に遭わされたことも少なくないし、酒で身を持ち崩したひとが身近にいない訳でもないんでな。あーあー

・ホントは全部許せたらいいんだけど、取り返しのつかないことってのはあるものだ

・アイルランド人の呑んだくれっぷりはよお〜とあのじさんと話してて、ふとManic Street Preachersの「A Design For Life」が浮かびましたよね……マニックスはウェールズの子たちです! “We don't talk about love we only want to get drunk / And we are not allowed to spend / As we are told that this is the end”だよ! うわあああああ(号泣)



・と言えばアイリッシュブレックファスト、ウェールズではウェルシュブレックファストなんだけど(てかイギリスでもスコットランドでもほぼ同じだそうで)、ニッキーが食べてるのミッチさんの写真集に載ってたわ(笑)