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2014年03月29日(土)
『空ヲ刻ム者』千秋楽

『空ヲ刻ム者 ―若き仏師の物語』@新橋演舞場

前半観たときよりいろんなところの抜けがよかったなー、やっぱりこの作品好きだ、私は。猿之助のお楽しみ会に過ぎないとか言ってたやつのことは根に持つことにした(笑)。

と言うのは冗談としても、観念的、哲学的なものを追求したい思いと、歌舞伎の外連をエンタテイメントとして楽しんでもらいたいと言う興行的な面のバランスの間で悩む座頭、と言うイメージも浮かびました。その悩める姿が今作の主人公・十和と重なるところもあった。そして、その困難をも楽しんでやると言う気概も感じた。これは前述の「お楽しみ会」とはニュアンスが違います。

千秋楽なので何があるか判りませんよ、なんて口上では言っていたけれど(そして実際浅野さんがいつもと違うことをしたらしく猿弥さんが動揺していたけど・笑)、所謂おふざけはなく、ストーリーをしっかり伝えるよう、丁寧に進めていっていたように感じました。台詞ひとつ、仕草ひとつとっても前半観たときとは印象が違った。湿度があると言うか、登場人物たちがひとりの人間として生きている厚みが増していた。死を間近にした伊吹をいたわる十和の場面には涙しました。自分を慕い、腕とともに好きな仏を彫る夢をも差し出した伊吹への慈愛と後悔に満ちた十和の仕草、美しく悲しかったなあ。

千秋楽と言うこともあり観客の反応もよく、現代劇の役者の方々にも大向こうが飛びまくっていました。宙乗りで猿之助さんと蔵之介さんが手を繋ぐ場面では黄色い声がとんだよー。ホントにキャーッて声が飛んでた(笑)。一回目は三階席、今回は二階席上手寄りの席で観たので花道もよく見えた。大詰めの戸板倒しのところ、花道では猿之助さんと蔵之介さんが見得を切ってたのね。これ三階席からだと見えてなかった、二回観てよかったわ。

カーテンコールは四回。二回目では黒衣さんや裏方さんも登場させ、役者は全員ひとりひとり礼をするように促す猿之助さん。客席から前川さんも呼び込みました。前川さんが歌舞伎の舞台に立ってる!これにはアガった。三回目からは猿翁丈が登場、どよめきと大歓声が起こりました。見る度にちいさくなっていくようで胸がぎゅっとなる。毅然と手を振っておりましたが、椅子から立つことはありませんでした。猿之助さんがしっかり寄り添っておられました。全てが終わり観客が出て行く。その顔、顔を眺めるのが好きです。いい千秋楽のあとに必ずある、独特の高揚感が客席にありました。

そんでまあ、ほら、現在新世界脳なので、歌舞伎界いや松竹?がゴールドムーンなら猿之助一門は北大門組だわ!と言う頭のおかしな妄想も浮かびましたよね…いろいろ思うところあるわ……(〆がこれか)。