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2013年10月12日(土)
『あいちトリエンナーレ 2013』

『あいちトリエンナーレ 2013』

2010年は辛いことが沢山あった年だった。精神的に最悪だったとき出掛けて行った前回のあいちトリエンナーレはとても楽しく、自分にとってある意味癒しや励ましにもなった。それでなんか恩義みたいなものを感じていてですね…(笑)。街に存在するアートと言うものの位置づけにとても好感が持てたことも、また行こうと思った理由です。パフォーミングアーツのプログラムも好み。ボランティアのひとたちとの交流もいい思い出でした。それは今回もそうだった。

前回は日帰りだったので、今回は一泊してゆっくりすることに。実はあいトリとは別に、最近お気に入りで通販もちょこちょこ利用しているロシア雑貨店リャビーナへ行くと言う目的もありました。カフェもあるって言うしー。昼前名古屋に到着、真っ先に向かいます。日曜日は定休日だそうだし、行くなら今日しかない!ウキウキして地図で調べた場所へ辿り着く。おお、古い雑居ビル…ソ連ぽい……(ラブ)急なせまーい階段、落ちないようにとそろそろ三階へ。ドアに張り紙。
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10/11(金)〜16(水)はロシアに仕入れ出張のため、実店舗、商品発送ともお休みをいただきます。
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……………いきなり心が折れた。臨時休業については調べてなかった。

しかし長者町会場のすぐ近くと言うか、エリア内なんですよここ。無理矢理気をとりなおして奈良さんとこへ行くことにする。

■長者町会場
奈良さん率いるTHE WE-LOWS!WE-LOW HOUSEにはカフェも併設されてます。まずはここでお昼ごはん。コシバ食堂とのコラボ、コシバカレー(鶏肉とかぼちゃのココナッツカレー)おいしかったー。ギャラリーへ入り、ボランティアのおっちゃんにいろいろ説明してもらう。奈良さんの恩師の肖像作品が展示されているとのこと…山本容子、有元利夫作品が!有元作品をここで観られるとは…ふいうちで泣きそうになった、やばい。有元作品、大好きなのだ。
さてうろうろ。前回来たとき探検気分だったこのエリア、今回も廃屋や店舗内に展示されている作品を探して歩く。ちっちゃなビルの階段を上っては下り、店舗の階段を上っては下り。う、うんどう……。建物込み、街そのものが作品。楽しい。
アートラボのモニタに映し出されていた、ブーンスィ・タントロンシンの『Superbarbara Saving the World(スーパーバーバラ世界を救う)』に見入る。このときは1エピソードだけだと思っていた。

それにしても天気がいい。そして暑い。十月中旬でこんな目に遭うとは。

■白川公園エリア/名古屋市美術館
誘導されて裏口から入場。迷路か。美術館外の公園にも作品が点在、観て歩く。予約制の藤森照信作品『空飛ぶ泥舟』に乗り込んで行くひとを、周りのひとが記念撮影。むちゃ揺れてる、怖い!でも面白そう!こどもも楽しそう!撮影OKのエリアも多かったので、携帯+スマホでバンバン撮られてましたね。しかし撮るだけ撮ってさっさと場を離れて行くひとも多く、ううむと思う。

歩く歩く。灼ける灼ける。帽子持ってくればよかったよおお。

■納屋橋会場
ボーリング跡地をそのまま利用しているこの会場、雰囲気ともども前回来たときすっかり魅了されてしまった場所です。今回もいちばん長い時間いたなあ。映像作品が多く、暗闇が心地よい。
フルで何度かリピートしてしまったのはミハイル・カリキス&ウリエル・オルローの『地底からの音』。閉鎖になった炭鉱の元労働者たちが、その跡地に立つ。サッチャー政権(時期的にそうだろう)により切り捨てられた産業、働いていたひとたちはもう年老いている。しかし彼らのツラ構えの魅力的なこと!数十年も前に出て行った(追い出された)職場の音を、彼らは記憶を頼りに声で再現する。発破、蒸気、警報、機器の轟音。
・Sounds from Beneath a project by Mikhail Karikis | a video by Mikhail Karikis & Uriel Orlow

会場のサウンドシステムから発せられた音の迫力、素晴らしかったです。
音と言えばニラ・ペレグの『安息日 2008』も印象的だった。ひと目でラビと判るこども、おとなたちが安息日に向けて街を閉鎖して行く。そのフェンスを引きずる音。
・Artis Video Series: Nira Pereg(ダイジェスト)

そしてここでフル上映されていました、『Superbarbara Saving the World(スーパーバーバラ世界を救う)』!スーパーバーバラは旧式のダッチワイフ。ひとを救い、鳥を救う。彼女は傷付けられた存在で、それでも地球を救おうと奮闘する。かわいらしい絵柄のアニメーションなので、こどもたちも沢山観ていました。彼女のせつなさを理解する年頃になったとき、この子たちは何を思うのかな。
・公式サイト。映像はこちらで観ることが出来ます
一緒に観た見知らぬひとたちや、その場の雰囲気も作品になる。こうやってweb上で観ることも出来る映像作品だが、やはりその場で、五感をフルに使って観たときの気持ちは何ものにも代え難い。
五感と言えば、名和晃平×京都造形芸術大ウルトラファクトリーの『フォーム』は強烈だった。三階に上がった途端異臭が鼻をつく。暗闇に蠢く巨大な泡!洗剤とも違うあの匂い…薬品ではあるのだろうが何だったんだろう。あの異様な光景には匂いも大きく貢献していた。発泡するときのちいさな音、指に触れたときのたよりない感触。

■栄エリア/愛知芸術文化センター
名古屋テレビ塔に掲げられたオノ・ヨーコの『生きる喜び』を眺める。このアートは英文『JOY OF LIFE』ともに各所に分散しており、街のあちこちで観ることが出来た。ビルボード、ビラ、電光掲示板と形態もさまざま。予想外の場所で目に飛び込んでくるそれは、ハッとするとともにじわりと心があたたかくなる。ゲリラのように愛を配る、ヨーコの真骨頂。
愛知芸術文化センターは質量ともに充実、ざくざく観てまわる。コーネリア・パーカーの『無限カノン』、つぶされた楽器が列をなして宙に浮いている。ここにも(鳴らない)音。今年のテーマは『揺れる大地』。ストレートな震災記録写真もあれば、廃材を利用した作品、失われた思い出を共有するようなものと提示方法もさまざま。アイコンにもなっていたヤノベケンジのサン・チャイルドは、チェルノブイリの原発事故に際しヤノベが発表したアトムスーツを着ている。とてもかわいらしいキャラクターで混乱もする。アトムスーツが発表されたとき、こんなにポジティヴな方向性ではなかったからだ。その混乱は未来を示す。

・ARICA+金氏徹平『しあわせな日々』@愛知県芸術劇場 小ホール
福岡“Yen Calling”ユタカの役者デビューを見届けて来たよ!イトケンによる劇中音楽、エンちゃんの声は全部インプロ+ライヴでした。
ベケットの『Happy Days』新訳初演。ほぼ安藤朋子さんのひとり芝居です。大地に埋められているのか、動けない女性。彼女は思い出を語り、今の気分がよいことを語り、幸せだと言う。童女のような声色のときもあれば、老婆のように達観した声も発する。一幕では上半身が出ているが、二幕になると首だけしか自由に動かない。幕間休憩はなく、音楽とエンちゃんの声で時間の経過が表現される。
エンちゃんは彼女の夫役。金氏さん美術の、さまざまなものが積み上げられた山(頂上に彼女がいる)のそばで新聞を読んだり、着替えたりする。殆ど、いや、一度も客席に顔を向けない。台詞は記号的。終盤、彼は四つん這いで山のふもとに現われる。ここでひとこと発せられる「おまえ」と言う言葉が、それ迄の記号から逸脱して感情を揺さぶられる。
効果音も生演奏で、演出の藤田康城さんを筆頭にスタッフが鳴らしていたそうです。アフタートークも面白かった。
しかしエンちゃん、結構大柄だよね…なんかああいう声の持ち主って小柄なイメージ(人外ぽい)があるので実物見る度ハッとするわ。来年KAATでもやるそうなので、また観(聴き)たいな。

前回の山川冬樹『Pneumonia』、そして今回のやなぎみわ『ゼロ・アワー』、『しあわせな日々』。パフォーミングアーツにしろ展示作品にしろ、音が印象に残るあいちトリエンナーレ。それは自分の興味によるものだろうか。今年も行けてよかったな。三年後、また行きたいな。

いんやそれにしても文字通り脚が棒、そして日灼け。宿で泥のように寝た。日帰り用の体力残さないで歩き倒したからな!翌日は名古屋駅周辺を散歩して、コンパルのエビフライサンドも買えてご満悦。鉄板ナポリタンも食べたー。やっぱ九州の鉄板ナポリタンとは違う…敷いてある薄焼き玉子、だしが入ってる?

帰りの新幹線、後ろの席の家族づれ。おとうさんが停車駅毎にホームに出てキオスクでご当地お菓子を買う、と言うスリリングな遊びをしていて面白い…と微笑ましく見ていたら、静岡駅のキオスクにCATS…こっこ……?劇団四季とのコラボこっこが!!!ギャー私もそれほしい!思ったときには発車ベル。無念。楽しい一泊二日でございました。