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2013年08月16日(金) ■
さいたまゴールド・シアター×瀬山亜津咲 ワーク・イン・プログレス公開『ザ・ファクトリー3』

さいたまゴールド・シアター×瀬山亜津咲 ワーク・イン・プログレス公開『ザ・ファクトリー3』@彩の国さいたま芸術劇場 大練習室

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の瀬山亜津咲さんを演出・振付に迎えたゴールドシアターのタンツテアター。昨年行われたワークショップの成果を今回『ザ・ファクトリー』シリーズとして上演し、来年本公演を行うとのことです。

「ダンスの技巧に目を向けるのではなく、舞台で日常を再現する『演劇』のように、身振りや個人の体験を作品に取り入れ、個々の中にある様々な感情を仕草や表情、動きで表現する。」(当日配布のパンフレットに記されていたタンツテアターの解説)は、ゴールドシアターととても相性がよかった。一列に並んで行進したり、片足で立ち目を閉じて静止する姿は、歴史ある身体ならではの様相を見せる。とは言うものの、劇団員は六十代から八十代。「高齢者」という言葉ではひとくくりに出来ない世代差が確実にあり、そう言った意味では他の劇団と変わりはない。そして、体力的な個人差と言うものも明確になってくる。

その個人差を、ユニークなものとして見せる。集団で行う同じ動作にぐらつきはじめたひとりが「ダメだ男は。こっちでやろうぜ」と言い、男性陣がぞろぞろそれについていく。彼らは壁によりかかり動作を反復するが、やがてさぼりだす(笑)。女性たちが並んで靴下を脱ぎ、足をマッサージする動作がダンスになる。むくんでいるわ、だるいわ、と言った感じのものから、帰宅して靴下脱いでほっとしたわ、と言うようなもの迄、そのダンスはバトンタッチされていく。皆笑顔だ。裸舞台(そもそも会場が練習室なので、劇場らしい舞台はない)の左右に置かれたパイプ椅子に、ドリンクや上着を置く様子も十人十色。身体が追いつかない振付のパートで、椅子に座って他の演者を見つめるひとの姿も、スケッチしたくなるような個性ある「かたち」がある。

そうは言っても皆さんよく動くのだ。舞台に立つ身体だ。トレーニングの成果も相当あるのだろう。

ソロのパートもある。台詞もある。かつて教師をしていたのだろうか、学校に暴漢が現れたときのため、生徒に避難方法を語りかける女性。椅子に座り、ゆっくりと手足を動かす女性。練習場の壁沿いにあるバーにぶらさがり「ナマケモノ!」と言う女性。男性の頭を並べ、スイカに見立てて割ろうとする女性(大ウケ)。個人史を語る男性、杖をつき歩く男性、跳び回る男性。客演の若手(ネクストシアターの平山遼さんと市野将理さん、ダンサーの三原慶祐さん)が要所要所で彼らをサポートする。悲しみを爆発させたように駆ける女性を受け止めるパートが美しい。男女ペアになり静かに踊るパートでは、セクシュアルな空気も漂う。手をつなぐ、顔を寄せる、寄りかかる。テキスト下にあるドラマをほのかに感じさせる。それは役のものか、本人のものか。

そういえば身体の堅いネクストのメンバーのパートはウケたわあ。ストレッチのトレーニングするんだけど曲がらない曲がらない(笑)。ここにも個人差。

音楽はシャンソンが多かったかな(この辺りベジャール〜バウシュ的)。あっけらかんとしたラテンもあった。個人的に印象深かったのは坂本龍一の「美貌の青空」がかかったパート。人生の激流、立ち尽くす荒野、そこに芽吹く光。その繰り返しに寄り添う音楽たち、そして夏の虫の声。終盤、最高齢の重本惠津子さんが透き通るようなソプラノで唄う。彼女は参加するパートが多くはなかった。しかし、喉という器官は澄み切った美しい高音を奏でた。身体の可能性を感じさせる素敵なパートだった。

しかし衝撃は最後のパートにあった。男性最高齢の�盒鏡兇気鵑�ひとり中央へ。講談だろうか、一席ぶつ。すらすらとリズミカルに、流暢に語り終える。「こどもの頃ね、ラジオで聴いていたんです。憶えようと思って聴いていたんじゃない、ただ流れていたのをなんとなく毎日のように聴いていただけ。ある日、憶えようと思って思い出してみたんです。そしたら憶えようもなにも、憶えてた。」そしてひとこと、「まあね、ルーツなんて、たいしたものじゃないんですよ。」ぱっと暗転。

この幕切れ!人生は美しい、と言う感傷に流されそうになっていた頭をガツンとやられた。最高にクールな演出だった。最後にポン、と鼓の音が聴こえたかのよう。落語のような絶妙な「サゲ」でした、鳥肌。

そして『我らに光を ―さいたまゴールド・シアター 蜷川幸雄と高齢者俳優41人の挑戦』を読み返している。彼の、彼女の「たいしたものじゃない」ルーツがどんなに豊かなものであるか。どんなふうに作品に反映されているか確認し乍ら。来年の本公演、とても楽しみです。

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千秋楽だったこともあり、カーテンコールでは最後列のブースにいた瀬山さんをメンバーが呼び込んで、ハグしたり握手したり。蜷川さんや井上さんとはまた違う風が吹き込まれたと言う印象がありました。劇団の可能性はどんどん拡がる。