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2013年04月13日(土)
『ゴドーは待たれながら』

ナイロン100°C結成20周年記念企画第二弾 NYLON 100°C side SESSION #12『ゴドーは待たれながら』@東京芸術劇場 シアターイースト

初演は1992年、いとうせいこうさん作演出、きたろうさんのひとり芝居。今回は初演より台詞を二割方減らして上演時間を二時間内に抑え、ケラさん演出、大倉くん出演での再演。……てことは、初演は二時間以上あったのか。今回観ただけでも相当な台詞量に圧倒されたのですが、これ以上あった台詞を当時のきたろうさんは全部憶えたのか…今となっては信じ難い(失礼)。いやその、ここ十数年きたろうさんの舞台ってシティボーイズMIXでしか観ていないもので。で、そのグダグダ加減がもはや魅力にもなっているので。

それにしてもドシッとくる。ゴドー待ちでエストラゴンが「どうにもならん」と言っていた頃、ゴドーはゴドーでどうにもならなくなっている。ゴドー待ちと言うとこれと、別役実さんの『やってきたゴドー』との関連性をケラさんがコメントしていたが、個人的には、と言うか第三舞台を観ていたひとの殆どがそうだろうが、『朝日のような夕日をつれて』が入ってくる。考えてみればゴドー待ちを知ったのも第三舞台がきっかけで、実際に舞台に載ったゴドー待ちを観たのも、1994年春の鴻上さん演出のものだった(@同じ芸劇、中劇場)。そして同じ年の秋に蜷川さん演出の男版、女版2ヴァージョンのゴドー待ちを観たんだったな(@銀座セゾン劇場)。

絶望的な状況のなか、どう生きるか。どう遊ぶか。そして、そんな絶望的な状況に灯る希望とは何か。

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俺は何かを頼まれてるに違いない。
ただ会うだけじゃなかろう。
つまり相手にとっちゃ、俺は一つの希望だ。
(にやりとする)なにしろ、そいつは俺を待ってるんだから。

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待たれることは希望なのだ。「時間切れだ」と言われる迄、誰かが何かを待っていること。シティボーイズを観た翌週にこの公演が観られてよかったな。戯曲掲載のパンフ買ったので読むのが楽しみです。

さて大倉くんですが、対他人の状況で光る印象が強く、実際受けの演技も巧いひとなだけに、ひとりだとどうなるのかなと思っていました。得意技を封じてのチャレンジングな苦闘を強く感じましたが、焦燥や逡巡の表現等、新しい魅力を見ることも出来たように思います。そして『消失』のときのような、笑い以外の場面で発揮される冥い色気を観られたのも嬉しかった。あとなんというか、長身で腕脚の長いゴドーって、なんだか自分のイメージになかったんです。それが観られたのも面白かったな。あの服、あの帽子を大倉くんが着るとこうなるんだなあって。

そして声の共演、野田さん。ああ、イラッとする(笑)かわいい声。反転して、ゴドー待ちの少年の役を野田さんで観てみたいななんてことも思いました。ゴドー待ちをケラさんが演出してみたものも観てみたい。