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2012年07月19日(木)
『ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだ ポンポン』

ハイバイ『ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだ ポンポン』@こまばアゴラ劇場

向田邦子賞受賞(おめでとうございます。授賞式の様子、ちょー笑った)後初の公演。再々演だそうです。当方今回初見で、客演の荒川良々くんがあまりにもハマっていたので、あの役を初演と再演はどなたが演じたのかとても気になります。いんや面白かった…ジワジワくる……今でもジワジワ来てる、自意識にポンポンを小刻みに振られている〜!それは応援のポンポンなのだけど、どうにもこうにもむずむずする〜!以下ネタバレあります。

'80年代前半くらいかな、ひょうきん族をオンエアしてる、ファミコンがある家とない家がある、小学生は半ズボン。そんなこどもたちと、その親たちの話。そして親たち、大人たちがやっていること。劇団でエチュードをやる、その劇団を取材する。彼らのコミュニケーションは、うまくいっていないようでうまくいっている。ときどき崩壊するけれど、なんとなくまた修復してる。

いやもう、あるあるのてんこもりで終始ニヤニヤしてしまいました。しかしそのあるあるが一癖あって、複眼的と言うか、あっ、この角度からだとディスコミュニケーションとしか見えないけど、あの角度から見るとコミュニケート出来てる!でもそれははかなくて曖昧で、同じ方法を辿っても次はどうなるか判らない。登場人物は、パンパンに膨れ上がった自意識に振り回され乍ら、懸命に相手を思いやり、自分のことを伝えようとする。

「想像力」を「察するってことでしか観客は参加出来ないってことでしょ?」と表現したところにシビレましたわ、厳しい!その複眼は揚げ足取りにならず、批評として鋭く突き刺さる。でも「やっぱりわかりやすいのがいいよね」、と劇団に在籍する母親は言い、息子は「くさっ!」と言う台詞にぶはっと笑う。ここで面白かったのは、高圧的に劇団員を追及していた演出家がその子と一緒に思わずぶはっと笑ってしまうのだ。一瞬その子と演出家は同じ、あどけない程の屈託なさで笑っていた。それにハッとしたかのように、直後演出家は烈火の如く怒りだす。自意識が心を縛る。自意識が身体を解放する。こちらもぶはっと笑いつつ、ちょっと泣きそうになったわよ!これには感銘を受けたなあ…とか言って、この演出家を演じたのは岩井さんなのだけど、実はこのシーン素で笑ってました、だったらどうしよう(笑)。

こまやかなディテールがボディブロウのように効いてきます。夫婦喧嘩のやりとりとか、それを見ているこどもがお父さんに訴えることとか、皆傷付いているのに見ている側は何故かほっこり、そしてじんわり。おしっこを漏らした小学生が、そのことを知られていないかものっすごく気に病んでるときの心理描写がもう秀逸!突拍子もないような視覚化なんだけど、目の当たりにすると「これだあああ!」と思わず膝を打ってしまいそうなピンポーン!感。いやーこれ、自分の小さい頃を思い出してのことなのか、よくあの感触を思い出せるな、そして大人になった今よくああも立体化出来るものだな。妙なところに唸りまくりです。

印象に残ったシーンは沢山あったんだけど、そのなかでも特にうわんとなったのは、主人公の男の子(良々くん。12歳の役・笑)とそのお父さん(岩瀬亮さん)が一緒にごはんを食べる場面。偶然にもふたりとも左利きだったのね。で、お母さん(安藤聖さん。『南部高速道路』からそう間を置かずすごい)が食卓の準備をするときちゃんと左側が持ち手になるようにお箸を並べたのです。ちょっとしたことだけどこれにはジーンときた。この家はそういう家なんだ、って。あと主人公のともだち(平原テツさん)のおうちは母子家庭の気配があったんだけど、そのお母さん(川面千晶さん)の、こどもとの向き合い方がすごくよかったの。お金を大事に扱うこととか、おしっこ漏らしちゃった子への接し方とか。終始笑えるし、相当バカバカしいところではあるのだけど、この丁寧な描写はガツンときたー。これらの積み重ねがちょっと歪んだ元鞘へと繋がる。綻びを繕いつつ家族もともだちも日々を暮らして行くのです。こどもの日々は大冒険、親の日々だってスリリング。そしてそんな彼らにポンポンは振られているのです。

それにしても良々くんはもー出てきただけで笑えた。12歳!半ズボン!シャツはイン!平原さんも同様!ニヤニヤしつつ見ていて、「随分大人びてるわねえ、何歳だったっけ?」と言う台詞で笑い解禁みたいな(笑)これも「察する」の一環ですね、こういうのが通じる舞台ってホント楽しいわ……。

岩井さんと岩井さんが出演した映画『桐島、部活やめるってよ』の監督、吉田大八さんのアフタートークも面白かったです。お子さんの話、男の子と女の子の違い等、質疑応答を交えつつ。左利きについてはここでも指摘されていました。狙った訳ではなく偶然だったんですって。どちらもそうだと最初気付かないよねって。あと演出家の実在するモデルについての話が面白かった……。向田邦子賞授賞式の様子も面白おかしく話してくれました。卒制でシナリオを書いている女子にアドバイスをする男岩井、イケメンでした(笑)。