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2011年03月06日(日)
『日本映画をリードする二人の天才 PART 1 三池崇史のカオス』その2

『日本映画をリードする二人の天才 PART 1 三池崇史のカオス』@新文芸坐

と言う訳で本編の三本です。まとめて観ることで気付いた部分があったりして面白かった。DOAとイチのロケ地被り(龍が死体燃やす屋上=金子が死体燃やす屋上とか署長が笛吹いてる屋上=ヤクザマンションの屋上とか)がよくわかって楽しかったり、垣原と松平斉韶の心情に共通点を感じた(どSでどMで生きてる実感に飢えている)ことも、続けて観られてよかったなあと思いましたー。た、たのしい。

■『DEAD OF ALIVE 犯罪者』
初見がビデオだったので(Vシネとしては正しい出会いなのか)、スクリーンで観られて嬉しかった…序盤の腹からラーメンがパーン!ってのからもうアガったわ〜。終始満面の笑顔で鑑賞、ほっぺが痛くなる程です。リキの元気玉をスクリーンで観られて感無量でございました。
いやもういろいろ思い出した…きぐるみの朱鷺が撃たれて羽根が飛び散るとこで泣いたんだった(バカ)。いやだってなんできぐるみよ?あのシーンで?いやちゃんと理由付けあるけど!あれが撃たれて舞い散る羽毛がまた美しいってのがバカらしくて泣けるんだよー!
そしてまたトモロヲさんの出番に気付けずエンドロールでああっとなった(龍の幼なじみ役)。

■『殺し屋1』
うえーんやはり素晴らしい!久々に大スクリーン+大音量で観たイチはよかった…ホント傑作ですわこれ。
今観ると、あたりまえだが皆若い。おーもりくんとか、二十代だもんね…大学生くらいに見えますよ。黒目ー!それにしてもあのラーメン食べるシーンのおどおどっぷり…こんなこいぬのような子が数年後に日本から恐れられる天才ファンドマネジャー(役)ですよ。その片鱗はかけらも見えない…三池さんは片鱗見えてるって言ってたけどそれは役者の資質がと言うことですね……だってこのいぬっころと鷲津が同じひとって信じられん。役者って怖い!
そして國村隼さんが若く見えたわ、とても。なんだろ髪の色のせいかしら…今は今で貫禄あって素敵ですよね。
映画館でもDVDでもアホ程観ているので新発見と言うと、絶命寸前の金子の声「タケシ〜」が森進一の声に似ているってことくらいか。それにしても音が本当に素晴らしい。乳首を床に投げつけたボツッと言う音、何度聴いても絶妙で鳥肌たつ…音効と言えばの柴崎憲治さんの仕事です。ボアのメンバーが手掛けた音楽も最高です。三池作品と言えばの遠藤浩二さんではないんですよね。
遠藤さんとはその後何作も作っていますが、人物デザイン(これはもう衣裳だけにはとどまらないものだったと思う)を手掛けた北村道子さん、美術の佐々木尚さんと組んだこの作品は三池さんにとってエポックだったのではないかと思います。ご本人もトークで仰っていたように、この後他分野のクリエイターと組むことによって映画におけるデザインがかなり変わる。猥雑さに洗練が加わり、粗野のなかに美しさが宿るようになった感じ。

DOAとイチ、どちらの舞台も歌舞伎町。今では随分寂れてしまっている。活気あるあの街の姿が映像として残ったことは嬉しいな。まあ風林会館周辺は今でもあんな感じだし、残るところは残っているけど。イチでちらっと映る『しびれるキャバレー 日の丸』も健在です(笑)。

■『十三人の刺客』
ようやっと観られた…公開当時体調も悪かったしすごく落ち込んでた時期だったのでいろいろ気力がなかったんだよ。先々月に同じ新文芸坐でやった新旧『十三人の刺客』上映も行きたかったんだけどどうにも時間が合わなかった。
ううう、観られてよかった。もう大変。なんかもーいろいろ燃えたぎってしまいそうな程の興奮振り、公開当時の記憶が殆どないので(いや観るつもりではあったんだよ、でもぬあー当時のことはもう思い出したくねえ)どのくらい盛り上がってたかを追体験したくて夜な夜な2ch映画板の刺客スレを遡って読む有様です。スレも熱くてすごい盛り上がってて16スレもあって、で2chって落ちちゃうとしばらくHTML化されないじゃない?…ミラーサイトやキャッシュを見付けてきて読むこの自分の執念を何か他の善行…慈善事業等に使えないものか。しかし公開半年弱で16スレてどんだけ。パンフも中古をゲットして嘗めるように読んだ。このパンフすごいいい出来ー、内容ギッシリ写真もデザインもよくてこれで600円てすごいな。
と言う訳でひとさまの感想を読むのが楽し過ぎて自分は何を書いたらいいか判らなくなってしまいました(バカ)。とりあえずひとの感想と2chを読んだ上で明確になった自分のツボを過剰書き。

・内野さん(間宮図書)の顔芸がすごかった。その表情と、グロテスクな程浮かび上がる首の血管と身を切っていく音で、介錯なしの切腹を見せる。この演出はすごくよかったなー
・そうこちらも音効は柴崎憲治さん。もうすごいすごい。このシーンだけでなく、刃物で肉を切る音がもう…本物よりもリアルと言うマジック
・幸四郎さん(牧野靭負)の切腹シーンとの対比としてもよかった。こちらは切腹→介錯で、刀が首を断つ画を見せる。こういうところにCG使うのも面白い
・CGと言えば牛のCGがチャチくて萎えたって感想が多かったんだけど、あれ自分は爆笑ポイントでした。三池さんらしい!て感じで
・それにしてもテンポがよかった。えっ、141分?うそぉてなもんで。オールナイトの最後の一本だったのに(スタート3:40)眠くなるどころか目は冴える一方でした。脚本は天願大介さん
・泥まみれでの斬り合いが始まるともう誰が誰だか判んなくなるんですが(笑)むしろそれがいい

・新左衛門が殿を討つ決意をするきっかけとなる重要な役を、ネクストシアターの茂手木桜子さんが演じていてビックリ!熱演素晴らしかったです
・櫓の上から口上を述べるシーン、役所さん(島田新左衛門)と松方さん(倉永左平太)とふるちん(佐原平蔵)の三人で、えっその三人のなかにふるちんが?と嬉しい反面ビビる。ええっいいんですか?みたいな(失礼)
・そのふるちんは槍の名手。いろいろとちょー格好よかった。いい役だった…(涙)刺客のメンツに入る迄の人生をいろいろ感じさせる、背景への想像力をくすぐる役でした

・で、その槍の名手と言う触れ込みがあったので、高岡くん(日置八十吉)はふるちんに間違って刺されたのかと思った(笑)
・そう、そうなのよ…これって十三人のうち殆ど死んじゃうんだろうな、誰が最初に死んじゃうのかな、誰が生き残るのかな…と言うところもポイントなんですが(前知識全く入れてなかった)、まさか高岡くんが最初とは……。ガーンとなった反面いやこれ役としてはおいしいかも、と思い直す
・また伏線があったもんね!一瞬交わすあの微笑み!このシーンコンマ何秒かで「あ、きっとこの後死ぬ!」と思ったもん、思った途端……うーん、やっぱりおいしい。すごく印象に残った
・十三人のなかに近藤公園くん(堀井弥八)が入っているのが何げに嬉しかったわー
・伊勢谷くん(木賀小弥太)は妖精てことでいいです
・十三人に入れてもらえたときの伊勢谷くんの嬉しそうな表情よかったなあ
・結局最後誰が生き残ったのか?と言うのが議論になっていて、いろいろな解釈があって面白いなあと思いました。どちらにもとれるようになっているのが今回の場合楽しめるのでいい

・で、稲垣くん(松平斉韶)ホントすごかった!あー何をやってもツマンネ、「今日と言う日がいちばん楽しかった」。残虐なんだけどヘンに品がある、その壊れた浮世離れっぷりがすごい
・これはかなり難しい役…どっちかに寄っちゃいそうだもの。キチガイで嗜虐性のある人物か、敷かれたレールから外れられない苦悩の人物か。稲垣くんはそのどちらにも偏らず、まるで当て書きされたかのようにそこに在る。不気味な程それが似合う
・何しろ「もう解決手段がない、殺してしまう他ない」と観客に思わせなければならない人物。いや思う思う思います、どうにもならんよ!観終わった後フィクションで本当によかった…映画でよかったと思った……
・道徳がーとか倫理がーとか、そういうところから自由になれる楽しさ。映画ならでは
・しかしこれ地上波では放送出来ないかな…出来てもカットされるところ多いだろうな。テレビ朝日も製作に参加してるのに(苦笑)

・しかし「今日と言う日がいちばん楽しかった」のは、殿だけでなく皆そうだったんだろうな。刀はダイコンを切るくらいしか役に立たないなんて言われていた頃の侍たちは、ひとを斬ったことがない者が殆ど。そんな時代に侍と言う生き方を選んだ者たちが歩む人生、辿り着く果て

・市村さん(鬼頭半兵衛)のなんて言うんですか、違う時代だったら!違う職業だったら!違う上司だったら!上司がアレだから!いや上司がアレだから?な役どころももう…思うところあり過ぎて大変です。うわあん
・あと光石さんの(役ですよ、役)言うこと聞くとろくなことにならないんだなと思いました(笑)。陣笠が爆風で吹っ飛んでカッパみたいになっててかわいかった。かなり笑える役どころ。しかし最期はキメてくれました

あー他にもいろいろあるがキリがない、面白かった…またスクリーンで観たいよ!今二番館を血眼で探しています…また丁度二番館での上映がひと段落した時期なんだよね、ホント今回完全に乗り遅れた、く゛や゛し゛い゛…とりあえず早稲田松竹にはこれからかかるみたいなので是非行きたい。

いやはや濃い一夜でした。楽しかった!