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2010年11月03日(水)
『The Voice-Over』とか

『SP 野望篇』@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン6

『午前十時の映画祭』の『スティング』を観に出かけたところ、満席で入れず呆然。朝もはよから六本木迄出向いてそのまま帰るのもとこれのチケットをとってみた。TVシリーズもちゃんとは観てないのですが……。

とりあえずTVちゃんと観てなくてもなんとなくは判る展開で、岡田くんのスタントなしアクションも格好よく、そーだ井上ってSPEC持ちだったわと思い出し、そのSPECをいつの間にやら同僚たちがフツーに受け止めてナビ代わりに使っていたりしたことに和み、香川さんの「東大には入れませんけどね」と言う台詞にニヤニヤし、伊達くんが重要な役で結構出ていたことにビビり、と非常に楽しめました。

螢雪次朗さんもよかったなー。北村くんがどこに出ているか判らなかった(…)過去の事件の回想シーンだろうけど、いたっけか……。

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ヨーガンレールのカフェ、ババグーリが一般にも開放されると言うので清澄白河へ移動。しかし満席で90分待ちと言われしょんぼり退散、そのまま現美へ。

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山川冬樹『The Voice-Over』@東京都現代美術館

常設に復活していたのでようやっと観ることが出来た。

山川さんのお父上であるニュースキャスター山川千秋氏は、職業柄か多数のオーディオ/ビデオテープを遺されていました。それらをサンプリングしたインスタレーションです。真っ暗闇のスペースに、スクリーンとTVモニター数台、スピーカー。

結婚式での誓いの言葉、数々の取材やインタヴューの様子、スタジオで読まれるニュース、家庭での息子たちとのやりとり、葬儀での賛美歌。千秋氏が亡くなる迄の数十年が、音と映像で浮かび上がる。映像自体はそう多くはない。千秋氏の姿は殆ど映らない。映っても画面をずらしていたり、ひきの映像だったりするので、顔の雑作や表情は判別出来ない。TVモニターにはニュース映像とホワイトノイズが時折映る。スクリーンには、その音声が録音された年月日と場所のクレジットが出るのみ。

家族へのオマージュ…と言うのとは何かが違う。既にこの世にはいないひとの人生を追体験する、既に肉体が失くなっているひとの、肉体から発せられたもの=声を現在聴いていることの不思議さを意識させる。過ぎ去った時間を再現する記録物としての機能もある。こどもと教科書を朗読する声、コラソン・アキノ大統領にインタヴューする声、食道ガンにより声がかすれ始め、最後の公の場で発した声。それらを鑑賞者は共有することになる。そこには個人の歴史と、彼がキャスターと言う仕事を通して目撃した時代の歴史がある。闇の中に漂うその声は、自分の古い記憶やその時代をも思い起こさせる。

個人的には千秋氏のことは記憶にない。ニュースと言えばNHKを見がちな家だったことや、地方局でオンエアされるフジテレビの番組が限られていたことも関係しているかも知れない。『NNN きょうの出来事』の小林完吾氏は憶えてるんだけどなあ…。一緒に観た姉は憶えていると言っていた。フジのキャスターとして、いちばん最初に認識したのは逸見政孝氏辺りからだ。その逸見氏と千秋氏の会話も作品には収められている。千秋氏の番組の後任キャスターが逸見氏だったのだ。すぐに彼の声だと判った。この声を聴かなくなってからもうすぐ17年経つと言うのに。聴覚の記憶力はすごいんだな、とも気付かされる。

千秋氏の声の遺伝子を山川さんは持っている。山川さんのホーメイは、遺伝子を載せて響き渡る。

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現美内のカフェ・ハイでベトナムプリンとベトナムコーヒーのおやつ。うまかったー。