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2010年10月10日(日)
『COLD SLEEP』

川井郁子&ファルフ・ルジマトフ 1st Collaboration『COLD SLEEP』@新国立劇場 中劇場

振付はボリショイ・バレエ団の岩田守弘さん、構成・演出はスズカツさん。るるるるじまとふさんに失礼があったらどうしよう(それはスズカツさんに対して失礼じゃないの・笑)とびくびくし乍ら観に行きました。事前情報を読んでもわかるようなわからないような…だったし。いや、あらすじみたいなものは、まっさっにっ90年代初めにザズゥシアターでやってた感じのものだったんだけど…これをバレエで?と言う……。

しかしルジマトフはルジマトフなのであった。そして川井さんも川井さんなのであった。『“ヴァイオリンの女神”と“バレエの美神”』とか紹介入れちゃうくらいですからね。ナルシスト対ナルシスト、両者一歩も譲らぬガチンコ対決。構成が、男女が出会って愛し合って争って闘って死により別れてみたいなののぐるぐるだったんですが、愛し合ってるシーンでも闘ってるように見えるよ!(笑)“私”が常に前面に出ています。「男を愛するアタシ」「男の支配に抵抗するアタシ」「女を愛する俺」「女をエスコートする俺」みたいな。自分をいちばん愛してるのは自分でーす。…いや、このひとたちくらいになるとそうもなるのであろうよ……それが強靭な美しさを放っているのでいいのではないですか……。

すごいのは、こんな感じなのに、実際舞台にあがっているものと観るとなんの嫌味もなく観られてしまうのですよ。そこが一流の証なのでしょうなあ、眼福です。もうルジマトフにはぽ〜となりましたもん(笑)。いやー素敵だったわ……。実のところいちばん惹かれたのは、セットをとりのぞき、シンプルな衣裳に着替えたふたりが音と踊りだけを示すエピローグ「J.S.バッハ:シャコンヌ」でした(この曲の振付はホセ・リモン)。

ひっかかったのは、所謂カラオケをバックに演奏していたこと。パーカッションの生演奏も入っていましたが(高田みどりさん(!)と、和太鼓で服部博之さん、辻祐さん)…この手のソロイストのコンサートってあまり観たことがないのでよく判らないんだけど、普通のことなのでしょうか。バレエだと録音したものをかけて踊るのは珍しくないけど、カラオケ+生演奏ってのはちょっと気になった。

スズカツさん構成・演出の面から興味深かったのは、男は何代にもわたっているのに女は同一人物だったってところかな。あと自然が女の味方をするところ。最近パティ・スミスの9.11を題材にした詩をMIOさんに教えてもらったんだけど、それは「巨大ビルを建てるのも男、破壊するのも男……男たちの自作自演を、ただ見ているのが、女」と言うものだった。これをちょっと思い出したな。塔と言うモチーフも出てきましたしね。

個人的にはeastern youthの“何回だってやり直す〜”が頭の中で鳴ってました(笑)。いつかはやりなおせる時が来ればいいのにね。

その他。
・ヨタロウさんがナレーション!
・川井さんの使用楽器は1715年製のアントニオ・ストラディヴァリウスだったんだけど、パンフレットに「都合上、同楽器を使用しない楽曲もございます」と注意書きが。演奏する川井さんをルジマトフがリフトしたりする振付もあったので納得(笑)