初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2009年06月02日(火)
『SEMINAR』2回目とか

■菊地さんの日記で
グローブ座が6月いっぱいでクローズって書いてあるんだけど、スズカツさんと篠井さんの『翻案劇 サロメ』って10月にグローブ座でやるんじゃなかったっけか…?
またパナソニックグローブ座とか名前変えてリニューアルオープンするのかね。
まあ菊地さんの言うことなので、話半分で聞いておこう(笑)

■スズカツさんと言えば
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』行ったんだねー。私も行ったよー!(さけぶ)

■今更ですが
『桜姫』(現代版)、音楽がヨタロウさんでビックリ

****************

『SEMINAR』@東京グローブ座

本日は落ち着いた環境で観られました…よかった……まあ上演中携帯メール見るやつはいましたけど(泣)。この内容の芝居(主人公は携帯がだいきらい)の時にそういうこと出来るってある意味すごいよな。虚しい…。

リー・カルチェイムの作品は『Defiled』以来。その時にも思ったが、このひとの書くものにはテクノロジーに対する時代錯誤とも言える憎しみが感じられる。そしてそれは皮肉めいたものとして描き出され、主人公は周囲から徹底的に阻害される(そして主人公も率先して孤立する)のだが、そこには確実に「テクノロジーによって失われたもの」があり、自分だけはそれを忘れないでおきたいともがく現代人の姿がある。

1対1のダイアログが多くのシーンを占める。ふたり芝居だった『Defiled』のバリエーションとも感じられる。主人公ローレンと学友たち、教師が、それぞれ数十年生きてきた自分の人生を背負って会話で火花を散らす。どちらにも確固とした信念があり、会話を通して何故その信念を持つに到ったかの背景を浮かび上がらせる。誰もが正しく、誰もが依存していて、誰もがそういう自分を貫き通す、あるいはそうなってしまう自分を止められずに苦しんでいる。自分が生きている環境、時代をこの作品の舞台であるルネッサンス史を学習するセミナーに重ね、登場人物たちの生きる道を少しだけ照らす。

しかし問題は解決しない。自分の能力を引き出せたと思ったテスは教師からレポートを否定され、いちばん自分が使いたくなかったであろう手段で教師を組み伏せる。このシーンがいちばん痛かった。本当はこんなことしたくないといちばん解っているのは自分だろうに。その積み重ねで生きて行く。いつかそんな自分に死ぬ程退屈する。死にたくなる。先月たてつづけに清水邦夫作品を観たこともあり、「生きたふりより死んだふり」「死んだふりより生きたふり」と言うフレーズをよく思い出していた。生きたふりが巧い死人は多い。

その上で、ハンナに「絶対に死んじゃダメ」と言わせたところには好感を持った。今の時代と環境は違和感があり過ぎる。やっぱりそれでも生きていかなくてはならない。途中で生き方を変えることは出来る。今の自分を保ったまま、そうすることは出来る。そうでありたいと願っている、実のところは。

上演台本はスズカツさんが書いています。スズカツさんと言えばコミュニケーションをずっとテーマに芝居を作っていて、その底には「人間はお互いを100%理解することは出来ない」と言う常識がある。と言うと、カルチェイムもスズカツさんも偏屈なイメージを持たれそうですが(笑)作品自体は非常に開かれている印象がありました。

加藤くんは初見でしたが、舞台映えしますねー。自分の見せ方を知っている感じがしました。台詞回しが独特ですが、相手によってころころ態度を変えるローレン像に合っていました。中村くんと安藤さんが出てくると芝居が小気味良く動くようになる。ダイアログ部分はこのふたりとローレンのシーンが頭に入りやすかったです。

ダルトーンの美術と白を基本とした照明。ピンスポ多用で、向き合う登場人物たちがお互いの領域に入れないような断絶感が際立ちます。だからこそ終盤、ハンナがローレンに近付き抱きしめるシーンは印象に残る。ホワイトノイズ多用、横川さんの音楽もノイズ調とアンビエント調、ヴァイオリンを使った軽快であり乍ら不思議な暗さがあるもの、とシーン毎にメリハリをつけており、面白い劇伴になっていました。『SWEET HOME』をちょっと思い出した。横川さん、舞台用音源の作品集出してくれないかなー。