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2009年02月21日(土)
『ベンジャミン・バトン ―数奇な人生』とか

昨年末Amazonに注文したReport Suspicious Activityのファーストがまだ届かないよー一度出荷準備が出来ましたって連絡きたのにー。がんばれAmazon

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わー週末だーやっとチェ39観に行けるよと確認してみたらば、モーニングとレイトばかりになっている…がーん。昼前に起きたのでモーニングはもう無理、明日早起きなのでレイトはキツい。とりあえず新宿に出る。そんじゃメリケンサックかベンジャミン…時間が丁度よさそうなのを探して、今日はこっち。

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『ベンジャミン・バトン ―数奇な人生』@新宿ピカデリー スクリーン1

ネタバレあります、未見の方はご注意を。

うえーんしみじみいい話でした。フィンチャーがこんないい話を撮ったってのに少なからずビックリですよ…勿論フィンチャーならではの徹底した画作りはそのままですが、今回はストーリーありきでテクノロジーを使っているところにとても好感を持ちました。

例えば『パニック・ルーム』のコーヒーカップとか、『ゾディアック』の直角に曲がる鳥瞰カメラワークとか、うわっ面白い!と言うCGシーンはぶっちゃけストーリーとは関係のないもの。フィンチャー色としてニヤリとするものでしたが、必要性があるとは思えないものでした。しかし今回使われたCGは、ストーリーに必要なものを、テクノロジーを前面に押し出すことなく(しかし非常に労力をかけて)さりげなく使っている。若返るベンジャミン、老いるデイジー、ハチドリ。

それにしても潜水艦から銃撃されるシーンがすげー迫力で、ここで泣いた、怖くて(笑)もうっホント勘弁して、戦争イヤだー(泣)時計作ったおっちゃんの息子が戦場からリワインドして帰ってくるとこも泣いたけどな!そんなことあればどんなにかいいのにな!でもないんだもんな!とまあことあるごとにさめざめ泣いてもうた。ちょっとした楽しかったことや、それはどれも長くは続かないことや、でもそういうことこそ死ぬ時の走馬灯には浮かぶんじゃないかしらとか、あーいちいちしみじみ来たなー。

ベンジャミンが暮らしているのが老人ホームみたいな施設なので、程なく死んでいくひとが殆ど。雷じいちゃんが俺は7回雷落ちたんだぞーと話す度に、その雷が落ちたシチュエーションがひとつひとつ映し出されるので、うわーんこれ7回目が映ったらきっとこのじいちゃん死んじゃう!とかもうそれだけで半泣きでござった(しかしあのじいちゃんすごい長生きだな・笑)。それとか泳ぐおばあちゃんが忘れた頃に出てくるところとか、あとやっぱり最後のハチドリ!ああしみじみするよ…。

そして育てのかあちゃんがすげーよかったなあ。牧師さんとこにお願いに行くとこは、あの盛り上がり方が『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に出て来た狂信的な集団を思い出してちょっとドキドキしたけど、神の力かどうかはともかく、願いが叶ってよかったなあと思った。と言えば、この作品、独特な宗教観(と言っていいのか…)があるように思いました。アメリカらしくない、と言うか……キリスト教らしくない。死の向こうには何もない、それ迄生きていた中で起こったことは素晴らしい、死ぬことは怖くはない、とでも言うような。これはフィンチャーの色なのか、脚本のエリック・ロス(『フォレスト・ガンプ』の脚本のひとなんですね)の色なのか。

ニューオーリンズと言う土地柄も関係あるかな。お葬式とか、死者を明るい音楽で送るところとか。シーンとしてはそれ程多くない黒人霊歌がとても印象に残ります。たまたまロケ地に決まり、カトリーナ後それを変更することなく撮影されたそうですが、この土地で撮ったからこそ、死生観に独特な味わいが増したようにも感じました。

ブラピとケイトはも〜すんごくよかったよー。おおおー(泣)ブラピってホントチャーミングだなー。そのチャーミングっぷりが、外見じーさん中身は無邪気なこどものベンジャミン像に不思議な魅力を与えていました。で、若返る程に哀愁が出てくるの。これがせつない。ケイトは…もうねえ美しくて大変でござった。こんな美貌で「歳をとりたくないの」とか言うか!凡人はどうすりゃいいんだよ!いや待て、美貌だからこそその容貌が衰えるのがショックなのか…身体を使うお仕事だったしね。それが自分の限界を感じて、ではなく、事故で断ち切られたのも悲しかった。バタフライ・エフェクト的なシークエンスがせつなかった。

と言えば、ここでケイトが出た『オスカーとルシンダ』を思い出しました。人生は一瞬一瞬が賭け。