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2008年08月30日(土)
『液晶絵画 STILL/MOTION』

『液晶絵画 STILL/MOTION』@東京都写真美術館

シャープ(液晶ディスプレイ)が特別協力、エプソン(プロジェクター)とボーズ(音響システム)が協力。しっかりした環境でビデオアートが観れました。今後こういうビデオアート展はどんどん増えて行くのでしょうが、キュレーターの腕が問われそうな気もします。映像、と言うだけでただ集めても面白くないので。

今回は絵画と言うキーワードがあり、まとまってすっきりしていました。サイレント作品も結構ある。隣同士の作品の音が混ざってしまい、その騒々しさに集中出来ない映像展も多いので、このテーマで集めたって言うのは印象よかったです。絵画的な静謐さを持ち、しかし映像にしか出来ない表現を見せる。静止画作品の質感を確かめようとして寄って行ってしまう(笑)近付いても見えませんよ、映像なんだから!この、目が追い付かない実感を体験出来たのは面白かった。

手法としては似通ったものも多いのですが(ハイスピード/スローモーション、ストップモーション、スライド)逆に言えば、ビデオアート自体の手法がまだそんなに発明されていないのかも知れない。そしてその分、作家が何を表現したいかと言うヴィジョンがハッキリしていないと、「誰が撮っても同じに見える」と言う怖いことになる。

鷹野隆大、やなぎみわ辺りは即「あ、彼(彼女)の作品だ!」と判る。トランスジェンダーと少女と老婆、と言うハッキリしたモチーフがあるから。ジュリアン・オピーはあの絵柄からしてもう当然です(笑)てかこのひとのビデオアートってどんなん?と思っていたんだけど、あーこうなるんだー!『イヴニング・ドレスの女』シンプルでかわいいー!延々観ちゃった。基本的には動かないので絵画。でも、時折入るチャームが映像ならではのもの。そして時間の観念がない。ある意味ループ。うわーこれ油断したら何時間でも観ちゃうよ、これはよかった。

森村泰昌はもう本人が作品なので、どのメディアでも…と思いそうですが、映像だと、モデル、それを描く画家、それを見物する観客、と言うふうに多層的な視線を取り込んでいるので新鮮に観れました。サム・テイラー=ウッドの3作品は、アイディアとしてはどこかで観たように思えるものばかりではありましたが(動物の死体が腐乱していく様子を早送りで見せる等)、観るひとが興味を持つようなテーマばかりを選んでいるのが上手いと言うかニクいと言うか。どうなるか予想はついているのに延々観ちゃったなあ。

鷹野隆大『電動ぱらぱら』、ドミニク・レイマン『Yo Lo Vi』は観客参加型。作品に鑑賞者が入り込めるような仕掛けがあります。それに気付かず素通りしてしまったひとがいきなり画面に入ってきて、作品を観ているひとが驚く光景が度々あり面白かった。ちっちゃな子がそれに気付いていて、無言ながらも「ほらここ面白いよ!皆見てー!」みたく何度も画面に出入りしてたのが微笑ましかったなあ。

と言えば、ビル・ヴィオラの『プールの反映』はスクリーン裏表両面から観れるものだったのですが、ブースがかなり暗くて奥行きがあるって全然見えなかったのね。表からしばらく観ていたら、裏からひとが出てきてビビった(笑)で、「え、裏あるの!?」と気付いたひとたちがわらわらとスクリーン周辺をぐるぐるし始めたのにウケた。そして壁面によっかかって観てたひとがひっくり返った(壁だと思ってたところがドアで、開いちゃったんだよね……)のにもビビり、ひっそりいた+黒い服を着ていたので全然存在を把握してなかった場内係員のひとが見えないところからぬっと出て来て倒れたひとを助けに行ったのにもビビる。このブース、こんなにひとがいたんか…判らないくらい暗かったんだよ!作品も面白かったです(笑)

ブライアン・イーノのブースもよかったよー。82分『サーズデイ・アフタヌーン』と47分『ミステイクン・メモリーズ・オブ・ミディーヴァル・マンハッタン』の作品をそれぞれ2スクリーン、計4スクリーンに同時に流していて、音楽も勿論本人。スピーカーも四方に配置してあり、音もいい感じに飛ぶ。ほわーんと聴けてよかったです。おそらくこの展示方法は、本人も意図していなかったものと思うのですが、映像2作品+音響でひとつのブース=作品として成立していたように思います。時間の都合上全部観れなかったのが残念。