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2008年06月22日(日)
『名作の舞台裏「ハゲタカ」』『能楽現在形 劇場版@世田谷』

ヘド書き足しの前にこれだー。濃い土日だった…。

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公開セミナー第20回『名作の舞台裏「ハゲタカ」』@横浜情報文化センター 情文ホール

連れてってもらえることに。うああ〜有難うございますー!一緒に申し込んで外れた皆ごめん!枠が1人分しかなかったんだ……定員200人の募集に2300人の応募があったそうです、すげー。みっちり3時間でしたがあっと言う間でした。以下おぼえがき。

・1部は『ハゲタカ』第1話上映
・あー何度観てもおもしれー!「買い叩く!買い叩く!買い叩く!」
・いやそこだけではなくて(笑)演出のテンポもいいし話にもぐいぐい引き込まれるし出演者は皆ガチンコでいいツラ構えでそのいい顔をいいアングルで撮っていて!
・大画面で集中して観て、改めて気付いたことも多かった
・あと音楽がいいー大きな音で聴けて楽しかったー
・芝野からの電話をブッチ切る鷲津の女王っぷりに笑う。あんたそれ一応ビジネス電話だろう、感情的な内容とは言え。失礼極まりないな!(笑)

・2部はゲストを招いてのトーク、参加者からの質疑応答
・ゲスト(敬称略、司会:荻野慶人)
 大森南朋(出演:鷲津政彦役)
 宇崎竜童(出演:西野昭吾役)
 大友啓史(演出)
 訓覇圭(制作)
机上の名札が、第1話上映前は鷲津政彦、西野昭吾になっていた。上映後に大森南朋、宇崎竜童に変更。役名と役者名を確認させるためでしょうか。細かい気遣いだ!
役名の名札が置いてあった時は、おーもりくんわしづのコスプレ?で登場するのかとドキドキした。宇崎さんも西乃屋の羽織着てくるかと思った(笑)
以下印象に残った話など。記憶で起こしているのでそのままではありません。話が前後した部分はまとめて繋げたりしています。

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宇崎●1回目で死んじゃうので(笑)僕は大体2〜3日の撮影でした。1話目しか台本をもらえなかったのでオンエアを観て「ああこうなるんだー」と。
最後迄ちょっとずつでもいいから出たかった。普段は共演者さんと心合わせをしようと、撮影前に食事に行ったりするんだけど、ドラマの内容が内容なのでそんなこと出来ない。撮影期間も短かったし誰とも仲良くなれないまま終了しました(笑)
皆に迫真の演技と褒められたのですが…僕はライヴを軸に生活しているので、普段の仕事は大体19時くらいから。明け方に寝て昼過ぎに起きる。でもドラマの現場は朝早くて、6時集合、しかも千葉に、とかだったりする。そうなると眠れないまま現場へ行くことになって…なのであれは寝てなかったからじゃないかと……(笑)さっき楽屋で(第1話を)観てたら稲川淳二さんみたいですねえ(場内爆笑)なんだか幽霊が出る話とかしてそう
大森●メイクさんが「宇崎さんは役作りのため寝ないで来たんですよ」って言ってましたよ。そうじゃなかったのか…(場内笑)

宇崎●(自販機の小銭を拾うシーンは)監督が「開けて、小銭拾って、ポケットにつめてください」って言ったのをそのまま何回もやっただけ。何回やったかなあ……。大友さんの撮り方は変わっていて、メインカメラが動く。戸惑うこともあった
大森●最初にリハーサルをやらないと言われて。鷲津を演じることについてはこちらでちゃんと作るので他のことは監督たちを信じておまかせ、と言う感じ(おおたのもしいこと言った!)
司会●鷲津がメガネをかけている時とそうでない時がありましたね。あれは心境の変化等を表していたのですか?どういう狙いで?
大森●そうでしたっけ…憶えてません(笑)意識してないです
大友●あれは本能的にやってましたよね(鷲津そのものになってたんだーと場内ざわざわ)
司会●他のひとをいじめていじめて、えげつない役でしたね(笑)ご本人はこんなに優しい顔なのに(場内爆笑)
大森●(照笑)さっき楽屋で(第1話を)観てて、「俺怖い顔してるなー」と……(笑)

大友●(しつこい、何度もやらせることについて)常に緊張感を持たせたい。ドキュメンタリータッチで撮りたかったので、カメラ4〜5台をいっぺんにまわし、メインカメラをどんどん移動させた。「今、こっちから撮られている」と判らないよう、役者さんの自意識を刺激しないように
宇崎●そして編集で繋げるんですね。オンエアを観て「えっこうなるのか」と。「こんなところを撮られていたのか」と思った
大友●自分は役者さんが力を出せるお手伝いをしているだけです。撮影に入る前、柴田さんに「敢えて演じますか?それともリアルに行きますか?」と訊かれ、後者でお願いします。と
訓覇●役者の集中力が切れないよう、少なく撮るドラマも多いけど大友さんはそうしない。緊張感のあるシーン、泣いたり倒れたり…と言うのをを何度でもやる
宇崎●永島(暎子。西野の妻役)さんなんて何度僕に突き倒されたか……(申し訳なさそうに)
訓覇●プロデューサーとしてはヒヤヒヤしていたけど、「何回やるんだよ!」と言う文句は誰からも出ない現場だった
大友●頭の中に思い描いたものをほんのちょっとでも越えたいんです。カメラが演技に連動出来なくて台なしになることもある。役者の演技を制限したくないので、カメラと役者の一致点を見つけるのに時間がかかる。撮影前にきちんと説明して、納得して頂いてます
大森●鷲津がリハビリ中、ちゃんと歩けないことに苛立って地下道で暴れるシーンを撮ったんですけど…あれ、急に撮りましたよね。台本にもなかった。でも本編では使われなかった。DVDの特典映像にも入らなかった。格好よかったのに……(笑)いや、別にいいんですよ?あのシーンをやったおかげで鷲津の心情が繋がったと言うか、その後を表現するのに役に立ってよかったんですけど…あれ、最初から使わないつもりでした?フィルム回してなかった?いいシーンだったんだけどなあ……
大友●不思議ですねえ…なんで入らなかったんでしょうねえ……(ニヤニヤ)

大友●専門用語が多いでしょう、ホワイトナイト、ゴールデンパラシュート……格好いいなと思って。必殺技みたいじゃないですか、スペシウム光線!みたいな(笑)
大森●難しいし、長いし、多いし…。大友さんに「(台詞)減らしてください」と半分冗談で頼んだけど駄目でした(笑)でも憶えるのに苦労すると言うことはなかったです
大友●『必殺仕事人』や『女王の教室』のように、悪いと言われるひとが返り血を浴び、自らの身体を引き裂かれ乍らも相手をバサバサ斬っていくようなものを撮りたかったんです。単純な善玉悪玉で分けられない、複雑なダーティヒーローを描きたかった
宇崎●鷲津は冷たい冷たいと言われますが、回を追うごとに変わっていきますよね
大友●あれは役者さんたちの力ですね。あの文太さんさえ変わっていきましたから
大森●鷲津はひとを陥れていることを自分で理解している。その上で全て受け入れようとしていたんだと思います。そしてそれがパンクする……。彼は彼なりに、あの世界で真剣に生きているんだと思って演じていました。最初の段階からキャスティングしてくれたことに感謝してます
訓覇●ドラマの幕切れには批判もありました。「作りものを描かないで」と。前半3話の方が人気があるようです。でもラストに救いを描きたかった

宇崎●今回出演で本当によかった。音楽のひとすごく大変だっただろうなって。通常の作曲依頼とはかなり違うと思う。1〜3話と、4〜6話では(音楽の)当て方の傾向も違いますよね?
大友●専門用語も多いし、難しそうなシーンが続くドラマなので、「見せていく」ための音楽は重要でした。観ているひとに次はこういうことが起こりそうだぞ、と喚起させるような音楽。“ハゲタカ”ですから、それにまつわるキーワード…「托卵」とか「飛翔」とか、それでイメージを伝えて何曲も作ってもらった。音を当て乍ら編集していきたいので
訓覇●ハゲタカのサントラ、ニュース等で今もよく耳にしますよ。ただ猟奇的な事件とかを扱ってる時のBGMとかで…(苦笑)
大友●宇崎さんや大森さんは音楽をやってらっしゃるからセンスがあって、いい意味でフットワークが軽い。演技が重くならない

質問●銀行に勤めている者です。閉鎖的な銀行内をよくここ迄描けたなと思いました、どのように取材を?
訓覇●銀行側は非常にオープンでしたよ。こちらの取材にもきちんと応えてくれたし、苦しいことも沢山教えてくれた。銀行を一方的な悪者にしたくありませんでしたので、その苦しみを表現できたら…と思いました。私は(ここのところ問題が続出している)NHKの者なので、共感することも多かったです。ファンドの方がガードが堅かったですね。情報を殆ど教えてもらえませんでした
大友●仕事の内容もですが、例えば銀行の偉いひとの部屋ってどうなっているんだろう?と言うディテールも大事だったので、ちゃんと部屋を見せてもらえてよかった。あとバブルの頃はタクシーで送迎されていた偉いひとが今は電車通勤で、「嫌じゃないですか?」と訊いたら「いや、自分の好きなところで途中下車出来るし、焼き鳥食べに寄り道出来るから今の方が気が楽」と。そういう話も聞けてよかったです

質問●大木会長の「やりなおしたいなら、何もしないことだよ」と言う台詞を鷲津はどう思ったのでしょうか。また、大森さん自身はそれをどう思い役作りをしましたか?
大森●(鷲津としては)「このおっさん、何言ってんだ?」と(場内笑)鷲津は自分の考えこそが絶対だと思っていた。ここが大木会長と鷲津の壁だったんでしょうね。そしてあの言葉で鷲津は揺らいだとも思う

質問●同じ枠の『クライマーズ・ハイ』は映画にもなりました。『ハゲタカ』にその可能性は?続編等のご予定は?希望でもいいです
訓覇●『ハゲタカ』は準備含め1年半くらいかかった。本当にパワーがいりました。僕身体弱いので…(笑)もし続編を作るなら、体力を回復させてから……また1年半くらいかかるかも(笑)
大森●鷲津に戻るには時間がかかるので、続編が決まったら早めに教えてください(笑)

宇崎●本当に面白かった、とてもショックなドラマだった。今まで出してもらった中でベスト1の作品になったと思う、ここに来ている皆さんはきっと観ていると思うけど、是非、是非全話観てください
大友●よくスタッフに話すんですが、「天才イチローでも3〜4割しか打てないんだ」と。『ハゲタカ』は予想以上に成功した。次は失敗するかも、と言うか失敗したい。守りに入らないでチャレンジし続けたい。僕は1話と6話を演出しました。井上、堀切園が演出している回もあります。名前が出なかったスタッフも沢山います。『ハゲタカ』組は本当にいいチームだった。僕だけじゃなくて…『ハゲタカ』に参加したスタッフの名前を他のドラマ等で見掛けたら「『ハゲタカ』組、やってるな」と応援して頂けたら嬉しい。いつかまたこのチームでいい作品を作れれば
訓覇●今度大友さんと組んだら失敗しちゃうのか(笑)『ハゲタカ』は数字(視聴率)よくなかったんだけど、いくつも賞を頂いて、オンエア終了して1年以上経つのにこんな場にも呼んでもらえて…本当に嬉しいです

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ゲスト全員が「このチームでまた仕事をしたい」と言っていたのがとても印象的でした。面白かった!おーもりくんすごい水飲んでたな。セミナーでも立派なことを喋るようになりましたのう(笑)

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みなとみらい線が延びたので、情文ホールの最寄り駅から渋谷駅迄直行出来るようになっていた。便利ー。

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『能楽現在形 劇場版@世田谷 —能は能か、演劇か』@世田谷パブリックシアター

一噌幸弘さん(一噌流笛方)、亀井広忠さん(葛野流大鼓方)、野村萬斎さんのユニット。半能『融』、能『舎利』。『融』はいろんな流派を日替わりで見せるもので、この日は宝生流でした。よって『半能「融」遊曲』。『舎利』はスペクタクル能で退屈しない!面白かったー。照明効果も通常の能舞台では観られないもの。韋駄天と足疾鬼のバトルは宇宙戦争みたいになってた(笑)

上演後には3人と、『舎利』のシテ方・金井雄資さんのアフタートークもありました。能舞台と劇場の構造の違い、伝統芸能を現代舞台でどう上演するかの新しい試みについて等面白い話が沢山聞けました。大きな段差を組み、橋掛かりは中央に2本。照明は暗く、床面は黒のリノリウム。何もかもが能舞台と真逆のスペースで舞うのはとても大変だったと金井さん。面も付けているので視界は狭く、跳躍も多い舞なので「死ななくてよかった」「ケガしなくてよかった」と言っていました。それでもとても楽しそう。音響も、PAを使えるからこその効果をいろいろ使えて面白かったとのこと。

最終日だったから舎利投げて壊しちゃった!破壊衝動を抑えられなかった!ここにロック、パンクのスピリット!とか盛り上がっておかしかったー。

それにしても一噌さん、すごいキャラだ。それをあしらう萬斎さんの鬼っぷりもすごかった(笑)いちばん歳下の亀井さんがいちばん大人に見えた(笑)