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2007年10月14日(日)
ミーカフェと『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』

ハシゴ。

『ミーカフェ in スワンカフェ 2nd』@スワンカフェ

きゃーっ、ミーちゃーん!2年振りの開催です。ベーカリーは定休日だったので、カフェでまったりー。ミーちゃんの写真に囲まれてにやにやー。こどもたちが描いたミーちゃんの絵を観てなごみまくりー。グッズに散財ー。あ〜、かわいい。ごはんもうまかったー。

ミーちゃんの写真集はもう出ないけど、こうやって時々近況を知ることが出来るのは嬉しいなあ。

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『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』@ライズX

よしながふみさんの対談集を読んでいる。すーげい面白い…やっぱりこのひと頭が切れる……。ボーイズラブ(BL)と言うジャンルはとても複雑で定義が難しいが、よしながさんは「(BLと言われている)『西洋骨董洋菓子店』はBLではなく、ゲイが出てくる少女マンガ」と話している。そしてよしながさんはフェミニストを公言している。このフェミニズムの定義も非常に複雑で繊細なもので、個人の見解によってさまざまなものがあるのだが、そのことと所謂“ホモフォビア”、“おたくフォビア”への対応について、しばしば出てくるのが「話してわかってもらえないことが多くて、結局諦めてしまう、自分を隠すことになる」。

LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル、クィア)のこどもだちが、自分のセクシュアリティを隠すことなく、それによって迫害を受けることもなく安全に教育が受けられるようにと設立されたハーヴェイミルクハイスクール。その学校へ援助金を贈ろうと、『HEDWIG AND THE ANGRY INCH』のナンバーをさまざまなミュージシャンがカヴァーしたチャリティアルバム『WIG IN A BOX』(日本盤も出てるんだけどCCCDなので外盤にリンクを張っておくよ…)を作る過程と、その学校に通うこどもたちを追ったドキュメンタリー。

フランク・ブラックの「Sugar Daddy」はオリジナルとは全く違ったアレンジ。ギターのリフとかはそのままなんだけど、唄いっぷりがもう全然違う。でもすっごい格好よかった!ブリーダーズのキムとケリーのマイペースっぷりは微笑ましいなあ、優しい声だなあ、かわいらしいなあ。ベン・リー、ベン・クウェラー.ベン・フォールズの“ベンズ”のやりとりはおかしかったー。ポリフォニック・スプリーの面々の私服姿、初めて見た(笑)。オノ・ヨーコが「他人の曲をカヴァーするのは初めて」と、ジョン・キャメロン・ミッチェルにニュアンスを教わりながら歌入れする場面にはドキドキ。

レコーディングの様子も多く盛り込まれているが、あくまでも主役はこどもたち。こどもたちが心情を語る場面によりそうようにヘドウィグのナンバーが流れる。

ここで冒頭の話に戻る。よしながさんの対談集で、ある同人誌作家の作風について語る箇所がある。そのひとたちの作品には、「『禁忌な関係としての自分たちの葛藤』を描いたものではなく、『もっといろんな関係があっていいんだ、俺たちも普通のことをしているんだ』というところから始まって」「女きょうだいが普通に『男とつきあっているうちの弟』といえる世界」「弟が彼氏を連れてきても『あんたが彼氏なん?』って、そういうことが周囲に自然と受け入れられている世界」があるとのこと。この映画に出てくるこどもたちの理想はこれなんだろうと思う。こんな世界が実現する時が来るのだろうか?こどもたちは、ハーヴェイミルクハイスクールは自分たちを守ってくれる場所だが、この学校など必要なければいいのにとも思っている。

ジョン・キャメロン・ミッチェルは、「多くの人間がカミングアウトすれば、家族の誰かがゲイだと言うことがよりあたりまえになる。同僚や、愛する者や、家族がゲイであれば差別出来なくなる」と言うが、ハイスクールを卒業したトランスジェンダーのエンジェルは家族の理解を得られず、綺麗に伸ばしていた髪を切られ、女性として生きることを拒絶され、自殺を図る。レズビアンのテナジャは家族と縁を切っている(喧嘩して家を出たとか言うようななまやさしいものではない)。父親からの迫害が続くゲイのラルフィは、卒業後監督と音信不通になってしまった。完成した映画の上映館には、映画に出ているこどもたちの親は誰ひとりとして顔を出さなかったと言う。カミングアウトしていない、出来ないLGBTQのひとたちも多い。道のりは長い。

気になったことがふたつ。エンジェルが大好きなクリスティーナ・アギレラの「Beautiful」を唄うシーンで全くその音が流れなかったこと(唄う前におめかししたエンジェルが、「Beautiful」が収録されている『STRIPPED』のCDをコンパクトがわりに使っていたのが微笑ましい…演出かも知れないけど)。この作品のハイライトとも言える「Midnight Radio」のレコーディング風景で、ヴォーカルのシンディ・ローパーの姿が全く映らなかったこと(他の演奏者はちゃんと映るだけに尚更気になる)。権利関係や政治的な何かが働いたのかな。