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2004年12月21日(火)
『ロミオとジュリエット』

『ロミオとジュリエット』@日生劇場

「ティボルトが死んだからそんなに悲しんでいるのね」と言うキャピュレット夫人に「ちげーよばーかばーか!」ふたりの死後駆け付けた神父に「おせーよばーかばーか!」「逃げんなよばーかばーか!」和解する両家の親に「何今頃気付いてんだよばーかばーか!」と終始大人に毒づく3時間。よよよ、若いっていいね!そしてアホだ!

と言う訳でもうすぐ14歳の娘っこと、年齢は不明だけどまあミドルティーンでしょうな男の子との、5日間の恋。スピードです!生き方は速度ですね。よってトゥーマッチ、ラウド。舞台には愛に死んだ若者たちの遺影、遺影、遺影。

しかし今回は何よりも「こどもが親より先に死んではいかんよ…」っていちばん思った…親たちの姿を見てしみじみ。とは言うものの、頭の中で終始大人に毒づいていたのは、自分の中にまだ中坊魂があるってことですかね…それはどうなのか。

シェイクスピアを観る時はいつもそうなんですが、「あんたらやりすぎ!」とツッコミを入れつつ、登場人物の濃さと生き方の速度に驚嘆もするのです。仮死状態になったジュリエットを発見したばあやの嘆きように「反応が早過ぎてこっちの感情がついていかん」とか思ったりね。これは演者によらず毎回思う。『マクベス』でのマクダフの怒りようや、『ハムレット』でのポローニアスの死にっぷりにも通じるものがあります(自分の中では)。「ああ死んじゃった!はやく葬式せな!生き残ったものは嘆き悲しみ恨みを晴らせ!そして前を向け!次次!」とかそういう感じ。とにかく急いでる。全ての心情を台詞で語り尽くそうと言うイギリスならではのものかも知れません。とにかく喋るのに忙しい。

その膨大な台詞を操りつつ、若さ!躍動!の表現もフルに使います。8メートルの高さを活かした3階建てのセットを、若者たちは駆け上がりよじ登り飛び下りる。これは相当…身体的にもハードルが高い。怪我には気をつけてほしいものです、疲労にもねー。一歩間違うと大事故につながりそうだし…いやホント。2階席だったので全景を観られてよかったです。

装置も含め、全体的に日生劇場サイズに合わせた演出がこまごま観られて面白かった。ジュリエットの人形をあんなにデカくしたのも、この娘はまだ人形遊びをしているような子供だと言うのを強調しているようでハッとさせられました。

あ、あと照明がすごく良かったです。演者がとにかくよく動くので、ピンスポットは付いて行くのが大変そうでした。冒頭のヘリやサイレンの音も印象的。ここらへんは、演劇は現在と地続きだとする蜷川さん王道なやり方でした。

明るくのびのびとした役柄の藤原くんを観るのって珍しいので新鮮だったなあ。バルコニーのシーンであんなに笑うとは思わなかった。ここらへん、脚本に忠実にやっていながらも「若さ故のアホさ加減」が出ていて、実はこういうのこそがホントなんじゃないかなと思った。『ロミオとジュリエット』って、シェイクスピアの四大悲劇には入ってないもんね。シリアスさを受け止めるのもアリだけど(実際ふたりは死んでしまったし)、当事者以外からは「アホや…」と言われても仕方がない。愚かながらも涙を誘う若者の物語だったと思います。しかし、装置の遺影たちが「アホや…」では済まさない重さを投げかけて来る。ここらへん絶妙でした。

横田さんのティボルトは憎たらしかったなー(笑)格好よかったです。全てに毒づくマキューシオ役、高橋くんのモッズロングコート姿は『1998・待つ』で『罪と罰』のラスコーリニコフやった時を思い出した。ジョン・レノンのようなサングラス、そして裸サスペンダーにもトゥーマッチを感じたな。ここらへん演出意図をよくよく考えてのことなんだろうなと…興味深い演技プランでした。やっぱり一筋縄ではいかない役者さんだなあ。来年もいろいろ蜷川さんとこでやるようなので、楽しみです。

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■高橋くんと言えば
『卒塔婆小町』再演が決定。詩人が観られるよー!(泣)

■あ、そうそう
ニナガワカンパニー(劇団の方)なくなったって夏に聞いてがっかりしてたけど、蜷川スタジオが出来てますな。結局リニューアルと言うことかな?まあ蜷川スタジオ→ヤングニナガワカンパニー→ニナガワカンパニーとなって、またスタジオに戻ったってことか(笑)名称は戻っても心意気は新鮮なんでしょう!
スタジオが出来たのなら、また『待つ』シリーズやってほしいなあ。「面白いやつほど出番が多い」しのぎ削りまくりのあの公演、大好きなんで。ベニサンピットって場所も大好きです