初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2004年10月13日(水)
山の手事情社『Yamanote7481 ―オイディプス@Tokyo』

山の手事情社『Yamanote7481 ―オイディプス@Tokyo』@青山円形劇場

ギリシャ悲劇を東京に暮らすひとりの女性の悪夢として表現する。どういうことだ?と思っていた。幕開き、化粧水をパッティングしながら部屋に入って来る女性がひとり。ふたり。増えて行く。とりとめのない会話が始まる。部屋は、舞台上の箱の中にある。

そのうち部屋の周りを黒装束の男性たちが囲みはじめる。以降彼らは『オイディプス王』における重要な役割・コロスと、女性たちの髪をつかんで部屋から引きずり出す、あるいは外部から女性を担いで来て部屋に投げ入れる役割を果たす。キャスト表には“運命”と言う役名がついている。運命たちは女性を部屋に投げ入れ、オイディプスの登場人物たちの台詞を小声で囁く。それに続くように女性たちが台詞を語る。ギリシャ悲劇の上演が始まる。

プロンプターの形式をとっていたような運命たちは、やがて登場人物たちを凌駕し始める。男性は部屋に入れないが、山本さん演じる盲目の予言者・テイレシアスと、浦さん演じる隣国の使者だけは部屋に迄入って来る。どちらもオイディプスの運命を握る人物だ。

予言者は部屋の外でオイディプス自身や、予言に従ってオイディプスの足に鋲を打ち込み捨てた先王を演じる。この再現されるシーンの、男優たちの動きの統制が素晴らしい!群唱もピタリと合う。言葉が明瞭。『jam』の後に観たので、ああこういうところに身訓の成果が出ているんだな、と思う。アクションのビジュアル、スピードも見事。こういうの観ると、今後観る殺陣が皆もたもたして見えそうだ…。山本さんの動きはホント切れる。武士と言われるのも判るわ(笑)

東京に暮らす女性の…と言う構造は、運命たちが女性を陵辱するような視覚的ショック(男優が女優の髪を掴み、よつんばいで退場させる所作等)により、力で争いを治めようとする矛盾と不快を表現するには非常に効果的だったと思うが、その東京での生活を見せるシーンにどのくらいの効果があったかと言うと…うむー。おしゃれしたり、食事したり、他人がもっているブランドものがほしくなったり。と言うところがね。あとビニール袋を被って誰彼ともなくキスするシーンは、避妊出来てれば誰とでも寝ちゃうよってなことだろうか。これは私の解釈が直接的過ぎるかなあ。

でもこれらの生活の描写がないと、最後のオイディプス=内藤さんのモノローグがあそこ迄重く響いてこないだろうし…(これはズシンと来たー。隣のひとは泣いちゃって終演後も立ち上がれないでいたよ)うーん、難しいな。おとなこどものシーンにしても、イオカステの自殺実況中継にしても、扱いが難しい。これは当事者以外の、無責任な群集や気の利いたこと言ってるようで実情を何も知らないひとたちのことを表しているとも思うんだけど。

怒りと暴力の連鎖は国を滅ぼす。やがて人類そのものも滅ぼすだろう。当事者たちは同時に犠牲者たりうる。そして当事者はそれに気付いていない。気付く余裕などある筈がない。自分を振り返る、見つめることが出来ない。ZAZOUS THEATERの『Thirst』は『ホロン革命』とリンクされたオイディプスの翻案で、「人類は確実に滅亡する」と言うテーマに基づいたものだった。それを喚起させるテーマが、2500年前の作品にあると言うことか。サスペンス的な構造や自分探しの要素もあるが(オイディプス、気付けよ!こんなに条件揃ってるじゃん!とツッコミながら観る面白みもあるし(笑))、悲劇には違いない。

うん、そうだな。最近は「それはいつかな」と言う興味も湧く。そろそろじゃないか?そんなに先のことではないだろう。

そうそう、安田さん今度『ハムレット』の演出するそうです。観たい!面白くなりそう!が、上演が香川県なのだ…。ううー。