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2004年06月05日(土)
『浪人街』

『浪人街』@青山劇場

い〜や〜もう、こんだけのもん見せてもらえれば!エンタテイメントに徹していて素晴らしい。爽快な気分で帰れます。サービス精神あふれる唐沢寿明キャプテンの心意気がチーム皆に浸透しているような、いいカンパニーです。以下ネタバレしてます。

マキノノゾミさんの脚本が面白い!おおもとの映画は未見ですが、ラストは変えてるんじゃないかな…実は手綱を握っているのはお新?女性の方が一枚上手?ってなこのラスト、M.O.P. の『黒いハンカチーフ』を思い出したよ〜。「男尊女卑甚だしい時代の作品なので、受け入れてもらえるか心配な部分もある。実際女性スタッフには、原作は評判悪かったんですよ」とインタビューで言っていたので、アレンジした箇所も多いのでは。赤牛言うところの「寂しい男」「嬉しい男」で分けられるシンプルな登場人物たち、ボロは着てても心は錦、裏切り裏切られ、でも仁義は通す、だからこそ命のやりとりになる、死んじゃったらそれ迄よ、残されたひとは前へ進め!ってな今の時代からすれば懐かしいようなテーマの原作を、現代だからこそ観たいもの、観られるものに描いていると思う。

それは他のスタッフワークもそう。堀尾幸男さんのペインティングを施した建物の屋根や床等の美術(2階からはこれがよく見えて面白かった!)、ワダエミさんの衣装や、鬘を極力使わずに地毛を活かす髪型等、時代考証に難癖つけるひとはいそうですが、今上演するからこそのものを観たい者としては大満足です。

ハイライトは終盤の、20分くらいある大殺陣。すっごっかった〜!派手!派手!激しい!アンサンブルが素晴らしい!約30人の斬られ役が、斬られてハケて戻ってきてまた斬られ、なんですが(笑)原作では120人斬りってことなんで、単純計算しても4人分をひとりでこなしている訳です。水と血のりを存分に使うので舞台上が滑りやすくなってるんでしょう、時々「うわ、あれ振付けじゃないやろ…」ってなくらい派手にすっころんで身体打ったりしてるひともいて、とにかく凄い迫力。

殺陣も演者によってきっちり変えてある(流儀の違いが判りやすい)ので長いシーンがダレない。唐沢さん演じる源内は本人曰くスターウォーズっぽい(笑・確かに)曲にのっての鮮やかな立ち回り。刀のスウィングも速くて美しく、跳躍も多い。ツバメのようです。伊原剛志さん演じる母衣はリズム主体の曲。大柄で腕が長いので、刀を横に構えて身体ごとスウィングさせるダイナミックな動きが映える。翼の大きな鷲みたい。刀を鞘に収める回数も多い。おふたりとも腰がしっかり座っているので、客席にお尻(背中)を向けた姿がキマるし、上半身がフラつかないのでひとつひとつの動きが綺麗。

とか言ってますが、最中は振付けが〜なんてのんびり観てられないのよ!すごい迫力だから。チャンバラは血が騒ぐ〜!

そして最大の見せ場は中村獅童さん演じる赤牛の大立ち回り。坂本龍一のテーマ曲にのって(そう、彼のシーンで教授の曲なのよ!)型がないように見えるがむしゃらな剣。友である母衣達を逃がすため、一度は友となった七郎右衛門への義を返すため、なりふり構わずしんがりを務める。何度刺されても斬られても立ち上がる姿は、最後の方は不気味ささえ漂って、小幡側の兵がビビッちゃうの。もう〜ここは泣く!泣く!泣いた!最期の「酒持ってこ〜い!!!」ではも〜滂沱ですよ!ちょっとズルいよ赤牛!あんたいちばんちゃらんぽらんだったくせに〜!(大泣)いや〜おいしい役だ、かなり持っていきました。パンフレット、赤牛カラー買っちゃったもんね…。

あ、そういや2回目の一幕目、源内と赤牛の立ち回りの時に、赤牛の刀が曲がっちゃってヒヤヒヤした(笑)そんだけ殺陣が激しいのよ…。

とまあ強烈な男優陣の中にあって、お新役の松たか子さんはやっぱすごかった。銃使いよ!刀なんてイチコロよ!でも一途にひとりの男を愛しちゃうのよ〜脚裂きの刑(文字通りですよ…両脚引っ張って裂いちゃう刑。怖!物騒な時代だよ!)にかけられそうになっても源内を信じてるけなげな女なのよ〜。こんなお新ですから、良く通る凛とした声を持つ松さんはドンピシャ。って言うか引き付けられるわ…。そして華やか!後半の、襦袢に刺繍が施してある着物がかわいかった〜。髪型も良かったな〜。

あと升毅さんと花王おさむさんのダメダメコンビも良かったなあ。闇討ち喰らう前のアドリブ部分、2回とも全く違ったよ。1回目は投扇興、2回目は池の鯉だった(観てないひとには判らない説明ですんません)。「オンパレードですよ〜」に「そんな言葉は初めて聞いたぞ!何だそれは!」「出島の方で教わった言葉で…」だって(大笑)余裕ある〜!

気になるところもない訳ではないのですが。場面転換=暗転が多いので流れが分断されやすい(特に一幕目)、ストレートプレイでのマイク使いにちょっと当惑。劇場が広いのでしょうがないとは思うのですが、やっぱり興醒めしてしまう、など。しかしマイクに関しては、1回目に観た時はやたら衣擦れの音が入るので気になって仕方がなかったんだけど、2回目ではそうでもなかった。改良されたのかな?

(追記:そういや場面転換が多くてセットがさっさか移動するのを見て「ど、ドリフ…」って思ったんだった(笑)あのちゃっちゃっちゃっちゃっちゃかちゃっちゃ〜♪って曲が頭の中で鳴ってねえ。深刻なシーンなのにトホホホホ)

5/29は2階D列、6/5は1階G列。視点の違いも楽しめました。1階席は花道が近い位置で!見栄を切る源内が近い!そうだ、ここで脚を見せるからだろうけど、一幕目では袴とのツーピース(笑・って言うのか?)だった源内の衣装が、二幕目ではワンピース(1枚物ね)になってて、腿がとっても綺麗に見えた。色っぽ〜い!臑毛剃ってる?ってくらい綺麗だったんですが、剃ってたんでしょうか、それとも元々ツルツルおみ脚な方なんでしょうか。こういう色香は和物ならでは!

既にケガで降板してしまった方もいるようですが(涙)楽日迄無事に終えられますように!事故などありませんように!あ〜また観たい〜せめて立ち回りのとこだけでも!歌舞伎みたいに一幕見の券があればいいのに。