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2004年03月15日(月)
『ファウスト ―ワルプルギスの音楽劇』アフタートーク

『ファウスト ―ワルプルギスの音楽劇』アフタートーク@世田谷パブリックシアター

先日の感想読み直してみたら、マルガレーテのことばっかり書いててファウストの心の旅路に関して全然触れてませんねはっはっは。人生の満足って何?富?名声?知識?肉欲?そうじゃないだろ!ってとこを見せたかったのだと思いますが。思いますが〜う〜ん。ステージ間近の席で観れば、役者さんの細やかな表情の変化等で感じられる部分があったのかも知れませんが〜う〜ん。でも後ろの席は、あの舞台美術が堪能出来たのでよかったです。

さて、12日のアフタートークです。この日の出席者は演出の白井晃さん、脚本の能祖将夫さん、音楽監督の中西俊博さん、振付の近藤良平さん。以下抜粋。記憶で起こしているのでそのままではありません。

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■白井さん

(音楽劇とミュージカルの違い)自分の考えでは、歌で物語を進行させるかさせないか。進行させるのはミュージカル、その場の心情を歌で表すのもミュージカル。音楽劇はそのあり方でなくてもいいと言う解釈です

(衣裳について)今回は人間とそうでないもの…神も悪魔も出てきますし、現実と虚構…ファウストの夢の中に行ったりもしますので、その違いを考えて(衣裳の)太田(雅公)さんと意見を出し合いました。現実にいるひとたちの衣裳にはより原色を使いました

(照明について)よくぞ訊いてくださいました!(笑)今回の舞台は演劇の約束事を禁じてみようと言う狙いがあったんです。舞台に天井を作るなんて、掟やぶりと言うか、従来の照明プランを白紙にするようなものなんです。(照明の)高見(和義)さんには随分頑張ってもらいました。そうして(質問者が指摘したような)袖から明かりを当てるようにしたんですね。それと役者の顔に、ピンの明かりを当てないようにしました。どっから見ても顔全部に光が均等に当たってるなんて、普段の生活ではあり得ない。普段の生活と地続きの物語としてやりたかったんです。アンケートで「照明が暗い」って結構書かれてるんですけど、あれはわざとなんです!(笑・ここでアンケート用紙にそう書いたらしいお客さんから苦笑の声が)わざとなんですよ!はあ〜、興奮して喋りすぎてしまいました(笑)

(キャスティングについて)篠原さんはパブリックなイメージとは違うものを感じていたので、今回それを出してもらおうと。筒井くんはあの朴訥と言うか〜(笑)ストイックな感じから。実際はどうか知りませんけどね(笑)いやいや、芝居に関して彼は本当にストイックに取り組んでいるし、とても頑固なんですよ、芝居に関して。それと、ファウストをパッショーン!って感じに(笑)演じるってのは違うと思ったんですね。あまり感情の起伏が見えないようで、その静かな中からにじみ出るものを扱いたかった。石井さんは、顔が(笑)勿論それだけじゃありませんけど、顔を見た時に「ああっ、メフィスト!」とか思って(笑)この物語は、メフィストがファウストに惚れていくと言うのも軸なんです。メフィストにそれだけの魅力を感じさせるひと、そしてその惚れて行く過程を演じられるひと、と言うのがありました

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■中西さん

今回は難しく行こうってのがあったので、普段だったらNGになるような自分の引き出しをどんどん使わせてもらいました。大体白井さんたちとお仕事すると修羅場になるんですけど、今回も修羅場で(笑)でも一緒に作り上げた!って充実感がとても大きいんです

進行としては、どこのシーンで使うからと言う打ち合わせはせずに、「こんなイメージ」とリクエストされたものを作って行くと言う感じでした。40曲くらい。そうそう、白井さんとやるとすごい偶然があったりするんです。例えば、前半に使ったマルガレーテのフレーズをこっちに入れてみて…と作って白井さんに渡して、その後舞台にのったものを観たら、マルガレーテがそこに登場している!こんなことが何回もありました

(能祖さん「それは白井さんが意図したってことは?」白井さん「いや、それがなくて。ほら、曲を貰って能祖さんとふたりで聴いた時に僕言ったじゃないですか、『ほらあ、やっぱりここでマルガレーテなんだよ!』って!ホントに偶然だったんです」)

もう偶然の必然と言うか(能祖さん「何て言うんだっけそういうの。シンクロニシティー?」)そうそう、正にそんな感じだった。でもね、失敗と失敗と思わず、「これを何かに使えないかな」と常に考えてると、必然の偶然が出来やすいんだと思いますよ。ここで使えない、ダメだった、じゃあこれ他で使えないかな?って。いつでもそれを思っていると、そういうことが起こるんだと思います

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■近藤さん

音楽劇…と言うか、お芝居の振付をしたのは初めてです。ポンキッキ(ショー)とかはやりましたけど、安室奈美恵がいた頃の(笑)ちょっと格好いいことに、(コンドルズの)海外遠征なんてものに行っていたので、作成過程の曲や、芝居の進行、美術の様子等のビデオを現地に送ってもらって…見なかったんですけど(笑・白井さん「ええー!?スタッフが一生懸命送ったのが無駄に…!」)いや、いや!見られなかったんですよ、いろいろあって!(笑)原作も読んでません。手塚治虫さん(がマンガ化した『ファウスト』)を読めば!と思って(笑)ほら、視覚的な面でね!いろいろと参考になりました(笑)

装置が独特だったのが…ほら、ここ(舞台上に設置されている穴)とか、もうこっちとしてはすごく面白いわけですよ(席を立ってその穴から入ったり出たりする)ほら、ね?うわー、どう使おうかな!と思って。触発されたところは多々ありました

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■能祖さん
(原作との比較、テキストチョイスについて)詳しいですね(笑)突っ込まれたらどうしようとドキドキしました(笑)とても読み込んでいらっしゃるようですからご存知だと思うんですけど、見事に訳が違うんですよね!古くは森鴎外から、何種類も出てますけど…もうね、ほんと違うんです、同じシーンでも。解釈に苦労しました。いちばん参考にしたのは、今回プログラムにも寄稿されている小西悟さんのものですね
ストーリー進行としても組み立て直しています。なので原作をこれから読んでみようと思った方、今日のこれみたいには進みませんので(笑)

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トークが終了し、劇場を出たのは22:30過ぎ。濃かった!面白かった!