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2003年09月20日(土)
サードステージ『ビューティフル・サンデイ』

サードステージ『ビューティフル・サンデイ』@俳優座劇場

う〜ん、やっぱここ、レベル高い…。何で今迄逃してたかなあ。そうだよ鴻上さんだけがサードステージじゃないんだよ。以下ネタバレしてます。

ゲイでHIVポジティヴの画家・ヒロと、不倫の恋人と別れた公務員・ちひろと、ヒロの恋人のファミレス店長・秋彦。この3人が集うある日曜日の始まりから終わり迄。

ヒロは秋彦に学費を出して貰っていること、売れなかった絵を秋彦がこっそりギャラリーから引き取り「売れたんだって」と嘘をついていることに負い目を感じている。そしてふたりはセックスレスのため、秋彦はストレートなのに自分を憐れんで一緒に暮らしているのだ、HIVポジティヴの自分を秋彦が見捨てられないのだと思い込んでもいる。

秋彦はゲイではない、が、ストレートでもない、とも言える。他人に触られると蕁麻疹が出る。だが、ヒロに触られる時だけはそれがない。母親の住む大分に家を建て、そこにヒロと母親と3人で暮らそうと思っている。近所にエイズ治療に長けている医者を見付けてもいる。準備万端だ。

お互いに相手のことを思いやり過ぎて誤解が生まれる。ちひろは不倫の恋人との別れを乗り越えようともがいているが、うまくいかない。が、彼女の出現はヒロと秋彦にある変化をもたらす。

ハッピーエンドとは言いがたいが、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ前向きに終わる。問題は解決していないが、それに対する彼等の心持ちが前向きになる。彼等には本当に幸せになってほしいと観客の誰もが思うだろうし、そううまくは行かないだろうとの不安も抱く。でも、物語は前向きになったそのシーンで終わる。優しい物語だ。

それにしても小須田さん、久々に観たけど老けないね〜。恐ろしいよ。なんか、あれは凄いわ…あの歳のとらなさ加減は。責任感に押し潰されそうでいて、実は芯は強い、でもひと一倍孤独感が重い役をやらせるとホント凄い。里美さんも、悲しみを抱え込んだ上での笑顔を持つ恐ろしい女優さんです。このひとの透明度も凄い。

初演では堺雅人くんが演じたヒロを演じたのは武田光兵くん。初見でしたが面白かったです。序盤でのものわかりのいい明るいゲイから、死への恐怖と才能が伸びない不安、恋人への罪悪感が一気に吹き出る終盤の化けっぷりが迫力ありました。

このサードステージのSHOW CASEシリーズ、脚本が本当にいい。中谷まゆみさんは「だってウソ(フィクション)だから」、と登場人物たちの七転八倒ぶりを切なさとともに描いている。泣き笑いになる。板垣さんの演出も地に足がついていて、安心して観ていられる。最後の銀紙吹雪は本当に美しく切なかった。