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2003年03月21日(金)
『オケピ!』

『オケピ!』@青山劇場


それでも音楽は、舞台はひとを元気にする。こういう時だからこそ、笑いたい。

初演も大好きな、大切な作品だったが、再演もやっぱりいいねー。舞台構造や(初演は三層=舞台上のオケピが設定上で演奏している作品『ボーイ・ミーツ・ガール』の舞台、舞台上のオケピ、本物のオケピ。再演は二層=いちばん上の『ボーイ〜』の舞台を撤去)ナンバーに変更があり、脚本も大分改稿されている。が、これがまた効いている。キャストの半数が入れ替わっていることもあるが、“当て書き”をする三谷さんならではの、替えの効かない役者との、他の面子では出来ない作品。

オケピ=オーケストラピットで演奏するひとたち。家に帰ればそれぞれの生活が待っている。盛装もしないでいい。楽器をかけもちのサックス、バイト感覚のトランペット、上の舞台の役者に翻弄されて板挟みのコンダクター、演奏がまるっきり下手なピアノ…そしてメンバー間の恋愛もぐちゃぐちゃ。どろどろやん!アンサンブルとしての協調性はまるでない、ように見える。

しかし、何故このメンバーが揃っているのかが、徐々に解ってくる。

全体を見渡せば、これは群像劇でありながら、パーカッションの男の子の成長物語でもある。期待に胸を膨らませて初めてオケピに参加した彼が、現状を目の当たりにし理想論をぶつけるが、現場で失態をやらかしてしまう。あしらわれたり怒られたりしながら、最後は明るい表情でピットを去る。

しかし今回再演を観て、ギター=川平慈英さんがなあ。すごい切なかったわー。「ポジティブ・シンキング・マン」のナンバーとか泣いてもうたよ。このひと実はすっごい寂しがりなんじゃないかねとか。川平さんの声って切ないねー。初演も彼だったけど、今回特になんかなあ。タップの見せ場も増えたし、よかった。初演観た時は「こいつうぜえ」だったけど(笑・いや、そのうざさがまた面白かったんだけどね)

あとオーボエ=布施明さんはもうズバぬけて凄いです、歌。初演の「リフレイン」、好きだったんだけど再演では新しいナンバーになっておりちょっと残念。でもその「It's My Life」もよかったな。

初演ではサックスだった白井晃さんは今回コンダクター。初演の真田広之さんがスケジュールの都合で降板せざるを得なかった(『ラストサムライ』め…)と言う背景が周知、と言う不利な条件を、不利には絶対させない三谷さんとのコンビネーションも素晴らしく、新しいタイプのコンダクターを観せてくれた。

女優陣も、初演から続投の戸田恵子さんは勿論、天海祐希さん(男前)、瀬戸カトリーヌさん(すっごい唄のパンチがすげー、声量もすげー)も格好よかった!

ああ、元気が出た。再演を見越したスタンダードさを備えつつ、いくらでも生まれ変われる面白さをも持っているこの作品、次の上演を楽しみにしてます。