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2002年06月15日(土)
『クロエ』

『クロエ』@シアターイメージフォーラム2

初日に行く程待ってましたよ、昨年のお正月にBOX東中野で塚本晋也監督作品オールナイトがあった時、塚本監督、石井聰亙監督、利重剛監督のトークショウもあり、その時利重さんは「今年(2001年)中には公開します」って言ったんだよー。劇場がなかなか空かなかったらしい。ああ待った待った待ちました、首を長くし過ぎて伸びきってしまいました。

原作の『うたかたの日々』は、鈴木勝秀氏が演出して舞台に乗せたと言うので10年程前に読んだ。今でも時々読み返す。『クロエ』は、(あくまでも『うたかたの日々』は原案ではあるが)原作とはまた違う優しさに溢れた作品だった。利重監督は優しいひとだね。甘いと言われる所以かも知れないけど、それを突き通す強さもあるのだろう。理想を持ち続けることは難しいだけに、強さが必要だ。

以下ネタバレしてます。









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賢者の贈り物のように、登場人物は他人の幸せを考えていて、好きなひとには幸せになって貰いたいと思っている。そのために、いろんな努力をする。でも、皆が不幸になっていく。高太郎とクロエの幸せな結婚生活は、クロエの病気をきっかけに少しずつ悲しいことになる。親友の英助と日出美のカップルにも、時間がなくなる。もう少し待てば、もう少し時間があれば。

結果的に生き残った高太郎と日出美は、幸せになれるだろうか。世の中の不幸は全てクロエがあちらに持って行ってくれたが、クロエのいない高太郎には、英助のいない日出美には、これからどんなことが起こるのだろう。ひたすら、幸せになってほしいと祈る。

高太郎とクロエに懐いていた男の子は、原作でのハツカネズミかなとぼんやり思った。クロエが死んだあと、ネズミは自分の首をネコの顎の上に乗せてと頼みこみ、自殺をする。男の子は葬式帰りの高太郎に付いていく。これにはちょっとホッとした。

だんだん小さくなっていくふたりの家の再現は素晴らしかった。こんなにもふたりの仲はちいさくちいさくなっていき、光が入らなくなってきているのだ。文章だったものが実際に視覚的に再現されると、こんなにも圧倒されるのか。

前述のトークショウで、塚本さんが酒場で暴れる長回しのシーンの話はされていたので、楽しみにしていた。パンフレットの塚本×利重対談でもこのことが話題に出ており、撮る方も演じる方も思い出深いものだったようだ。いいシーンだった。永瀬正敏さんは悲しい役が似合う。ともさかりえさんの声が素晴らしかった。彼女が言うと、理想論にもぐっと説得力が増した。松田美由紀さんは強い、弱い、熱い。悲しい、悲しい。

もう少し考えたい。また観に行くよ。