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2001年12月16日(日)
年の瀬の打ち上げ花火、豪華絢爛真冬の怪談

『四谷怪談』@シアターコクーン

いやー面白かったわ。あの面子、上演時間、はなし言葉が原作のままと言う前情報で、観る迄不安半分だったのだけど。ああリピートしてえー。

不安要素の解消について。

まずキャスト。この面子なら大当たりか大外れかな、いやしかしアンサンブルを重視しなければ竹中直人さんと藤真利子さんで引っ張れるかもなんて思っていた。勿論このふたりは良かったよ!伊右衛門と言うと「色悪」と呼ばれる役どころ、お梅があれ程惚れ込んでしまう根拠がある美丈夫で、となると竹中さんは…いや、その…なんですが…いや私竹中さん大好きよ!竹中さん本人も「ミスキャストだって言われた」なんて言ってたよう!…いやそれがもう惚れる!惚れるね!だって色っぽいんですものー!男は顔じゃないよ!(ああ言えば言う程墓穴を)と言う程格好いい。藤さんはめっちゃ怖かったよー。冷や汗通り越して汗ダラダラ出そうでした、冬なのに。特に髪梳きのシーンがこえー!こえー!悶死っぷりもこえー!笑い声がこえー!そうなる迄のお岩が結構かわいらしく健気なキャラだったんで(おとうちゃんの死骸を見付けた時とか)怖さ倍増。提灯抜けは怖さを通り越して笑ってもうた。

予想外に(スマン)良かったのがムラジュン。直助って人物自体が結構愛すべきキャラ(お袖が好きで好きでしょうがないのよねえ)と言う事もあり憎めねえ!宅悦ん家の私娼窟でお袖をものに出来なくてギャンギャン言うとことかおっかしくてすっかりムラジュンな直助。本人もすごい楽しんでやってるみたい。高嶋政伸さんも、後ろの席でも表情の動きが判る派手な顔が活きていた。ダッシュの面々(堀さん、新川さん、清家さん)や月川くんもいい味だしてた。広末涼子さんの評判が某所でエラい事になっていたのでここがいちばんの不安だったんだけど、何とかなってました(ってのも失礼か?)。所作や姿勢は綺麗だったし、声もか細いながらもちゃんと通ってた。どんどん身を落としていくお袖のやるせなさは充分伝わってきた。

上演時間。『牡丹燈籠』が高座で10日間を費やして上演されるように、当時の演芸としては常識の、観客をひきつけ続ける大作構成。朝の連続テレビ小説の様に15分ごとに山がやってきてるんじゃないかってな展開なので(因縁とか横恋慕とか勘違いとか、えっ、あなたがお兄さん?えっ、あなたはご主人さま!みたいな)飽きないんだなーこれが。集中力は切れなかった。その代わりお尻が痛いです、流石に(笑)。

歌舞伎でもかなりはしょって上演されるそうなので、今回のフルバージョン上演は滅多にない機会。これを観ておくと今後観ると思われる様々な『四谷怪談』を混乱せず観れそう。お袖と直助ってなんで果てる事になっちゃったんだっけ?とか、終わってから疑問に思う事がなくなったしね。ただ、今回のがかなり面白かったので、はしょりバージョンがこれより面白くないなんてふざけんなー!て事になるかも知れない(笑)ひひひ、楽しみだわね。

伊右衛門の「首が飛んでも動いてみせるわ」の名台詞がない!と思ったが、帰宅後調べてみたらこれ、『いろは仮名四谷怪談』だそうで。と言う事は、私が以前観たのはこちらのバージョンだったのか。ああいろいろバージョンがあってわかんねえ!つうかこうなったら網羅したくなるね(笑)藤原竜也くんのやった『大正四谷怪談』を観逃したのは痛いわー。再演したら是非行きたいな。

当時の言葉遣いに関しては、流石に序盤ヒアリングがついていかず難儀する。伏線をいくつか聞き逃してしまったかもしれない(だから尚更リピートしたい)。いちばん聞きやすかったのが広末さんの台詞だったってのも意外…とは言うもののこれ、広末さんが台詞を今の言葉のアクセントのままで話しているからで(あのー、言うなれば…ぼ、棒読み…ううーんと、多分意味を咀嚼しきれてないと…)これは皮肉な効果だなあと思った。すんません私も精進しますわ。

蜷川演出に関しては明日以降。芝居が長いと感想も長いね…(笑)