| 2005年03月14日(月) |
秦 河 勝 連載27 |
国勝が亡くなって半年ほど経った頃玉依郎女に初潮があった。 玉依郎女の乳母からこの報告を受けた河勝は赤飯を炊かせて玉依郎女が大人になった祝いの宴を一族で営んだ。祝い膳が終わって食器を屋敷の前を流れる桂川で女達が洗っていた。玉依郎女も女達に混じって手伝いをしていた。族長の娘ではあるが大人になった証明として家事の手伝いをしてみせるという一種の通過儀礼であった。その時玉依郎女の目の前を丹塗りの矢が上流から流れてきた。
「あれ、姫様、丹塗りの矢ですよ」と乳母が言った。 「はやくお拾いください」と別の女が言うのも待たず玉依郎女はいち早く矢を右手で掴んでいた。 「この矢は御寝所の入口に突き刺して今宵はお休み下さい」と乳母が教えた。
この丹塗りの矢は夜這って来ていた鴨氏の嫡男に玉依郎女から渡されて鴨一族と秦一族の絆が発生したのである。丹塗りの矢は河勝が密かに手下に命じて河の上流から頃合いを見計らって流させたものであった。
|