| 2005年02月26日(土) |
秦 河 勝 連載11 |
「秦の酒の公が琴を弾きながら現れて次のような歌を歌ったのじゃ」
神風の 伊勢の 伊勢の野の 栄枝を 五百経る析(か)きて 其(し)が尽くるまでに 大君に 堅く 仕え奉らむと 我が命も 長くもがと 言ひし工匠(たくみ)はや あたら工匠はや
歌の意味は工匠は天皇のために一日もはやく御殿を造ろうと努力している。それなのにそれを殺そうとしている。惜しいことだということなのじゃ」
「それでどうなったの」
「天皇の前で許しもなく、かってに琴を弾いたり、歌を歌ったりすることは本来許されることではない。不敬な振る舞いとして処罰されるのが当たり前の行為なのだ。酒の公は余程の覚悟をきめて琴を弾かれたのであろう」
「酒の公は処罰されたのですか」
「処罰されなかったのじゃ。雄略天皇は、武勇に秀でた名君の誉れ高いお方であったが、人情の機微にも通じておられたのじゃな。秦の酒の公の琴の音と歌声が天皇の心をいたく動かしたのであろうか。天皇は闘鶏御田を殺すのをやめて罪を許したばかりか、処罰覚悟で、間違った天皇の行為を指摘した秦の酒の公に褒美を授けようということになったのじゃ」 「御褒美になにを貰われたのですか」
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